かわべクリニック

在宅療養支援診療所

かわべクリニック

内科・緩和ケア内科・呼吸器内科

〒577-0843 東大阪市荒川3丁目5番6号 MMビル203

TEL : 06-4309-8119FAX:06-4309-8118

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【看取りの報告書】Nさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

「最期は病院よ」「やっぱり、病院は嫌」入退院を繰り返す中で見えてきた、Nさまの希望。
「最期は自宅で。入院したら、先生達に会えなくなるから…」

Nさまのこと
~治療はしたくない。ありのままの自分を受け入れて~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

Nさまについて、ご報告させていただきます。

退院後、自宅に帰られた安堵感と、今後悪くなり家族に迷惑をかけたくないという不安が強くあったため、ご家族さまには医療センター緩和ケア科を受診していただきました。

Nさまご本人は、「こんなに寝ていたらダメだから、早く元気になりたい」とのご希望。
予後を鑑み、ステロイドを導入しました。

しばらくして食欲が増進し、百貨店からお取り寄せした美味しいものを毎日のように楽しまれていました。
また、ストマ管理や自室の掃除などもご自身で行い、友人とのお茶会も開催し、有意義な時間を過ごされていました。

ただ、自分の死期を感じておられたのか、最期どこでどのように過ごしたいかを言葉にされるようになり、
「入院したら先生達に会えなくなるから、出来るだけ自宅で過ごしたい」と嬉しいお言葉もいただき、症状緩和に努めてまいりました。

退院して約1ヶ月後、ご主人さまの月参りを自宅で済まされ、娘さまや息子家族、孫、ひ孫らが集まっての昼食の最中、急激な腹痛、嘔吐が出現し、娘さんより緊急往診のご依頼がありました。
前回同様、肝腫瘍からの出血と診断。
以前からのご希望と、現状から救急搬送は賢明ではないと判断し、看取りの方針としました。

セレネースや鎮痛剤等で症状緩和をはかり、苦しむ時間は短く、安らかに永眠されました。
突然の出来事で動揺もありましたが、息を引き取られるまでの間はご家族で思い出話ができ、十分なお別れの時を過ごせました。
退院調整等ありがとうございました。

[ケアを振り返って]
介入当初は、「年齢や体力的なことも考えて治療はしません。好きな所へ行って、好きな物を食べて、好きな人に会って、自由に過ごしたい。そのために、先生方に体調管理をお願いしたいです」とおっしゃっていたNさま。
庭の手入れや洗濯がお好きで、窓から見える庭がご自慢でした。
何よりも食べることが大好きで、お取り寄せグルメや美味しいお店を沢山ご存知。私たちにも勧めてくださいました。

そんなNさまの口癖は「何かあったら病院ですね。家族にも迷惑をかけるから。でも、病院は好きではないのでギリギリでお願いします」。

主病院との併診という形で在宅診療を行ってきましたが、ある日急な腹痛が出現。
急いでお宅にかけつけたものの、「先生、待てないから病院に行くー」と、すでに救急車を呼ばれておりそのまま病院へ。
病院で癌の進行による疼痛である説明をされ、2週間程で退院。
2か月後にも同様の事が起こり、自宅療養をする中で「何も治療はしたくない」と言うけれど、しんどくなったら「病院に行く!先生、もう逝かせて」と訴える。

そうして入退院を繰り返すうちに病状を理解し、自分を見つめ直したNさま。
最期は、どこで過ごしたいか。その希望探しを、私たちも一緒に考え、支えました。
人の気持ちは揺れ動く。
けれど、その時々で選ぶ自由があることは、患者さまの心を穏やかにします。

そして、Nさまの出した答えは「最期は自宅で。なぜなら、先生達に会えないから」でした。

最期の時は急でした。
Nさまとご家族の希望通り、自宅で、ご家族、そして私たちに見守られる中、旅立たれました。
最期をお見送りさせていただき、ありがとうございました。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

【看取りの報告書 バックナンバー】
・Mさまのこと
・Lさまのこと
・Kさまのこと
・Jさまのこと
・Iさまのこと
・Hさまのこと
・Gさまのこと
・Fさまのこと
・Eさまのこと
・Dさまのこと
・Cさまのこと
・Bさまのこと
・Aさまのこと

在宅医療の未来を創る訪問看護師~研修レポートより~

かわべクリニックでは、在宅医療に興味を持つ医療者の方々の見学・研修を行なっております。
先日は、「在宅訪問診療を中心とした看護に取り組みたい」と希望をお持ちの、東大阪市に拠点を構える訪問看護ステーションの看護師(看護歴1年)が2か月間、当クリニックにて研修を受けられました。

この研修では、以下の3点を中心にお伝えしました。
・看護師が主体となった医療ケア
・特に病状の変化が多いがんの終末期医療の場面では、看護師が主体的に判断して医師と意見を交換し、ケアをリードする大切さ
・看護師が受け身にならずにアセスメント、プランを行ない、患者さま一人ひとりにとってよりよい「最期」を迎えられるようなきめ細かいケア

2か月間の研修を終えて、振り返りを作成いただいたので、ご紹介させていただきます。

かわべクリニック研修を終えて

(1)研修前後の看護に対する思いの変化
研修前は、一人で訪問する事に「怖さ」がなかった。
しかし研修を終えて、「看護師の仕事は怖い」と実感した。
以前は、「その日できなかったことはまた次の日にできたらいい」という気持ちがあったが、かわべクリニックでがん患者さまと接したときに「この患者さまに次はないかもしれない」ということに気づき、「一期一会」の気持ちで訪問しないといけないと思った。

(2)得られたこと
毎日の研修で、その日見たこと、聞いたこと、感じたこと、学んだことを振り返る大切を知ることができた。
「何がわかっていて、何がわからないのか」という根本的な部分の振り分けができるようになった。
また、次に訪問する看護師のために私が知り得た患者の情報を正確に申し送る(記録方法)ことを学んだ。
訪問前に、患者の問題点の抽出を行い、根拠をもって観察することができた。

(3)現場で実践していきたいこと、していること(実践してみて相手からの反応はどうだったか、自分はどう感じたか)
誠実さをもって患者さまに接していくこと。
できなかったことをそのままにしておくのではなく、振り返り学習し習得していくこと。
前回の訪問時にできなかったことをしっかりと振り返ることで、次に生かすことができた。
その結果、患者さまの在宅に至るまでの経緯を知ることで距離が縮まり、症状の経過や前の記録から問題点を抽出することができた。
また抽出した問題点をしっかり持って訪問することで、患者さまとの会話(問題点に沿った内容)ができるようになったため、患者さまの表情、しぐさなどに変化が現れた。

(4)看護の難しさ
初回訪問の介入の難しさ。個別性に沿った看護。
信頼関係の構築を含め、患者さまの全体像をみること。

(5)今後の課題
新人の在宅看護師を増やすには、受け入れる職場と研修できる場所が必須だと思われる。
また、働きたいとおもっているが「怖い」と感じている新人看護師の、恐怖心を取り除くことできるような環境調整が必要ではないか。
  
(6)今後の取り組み
研修で、学習方法や振り返る習慣、正確に患者の状態を送る記録の書き方などを学べたので、ステーションに戻っても続けていきたい。
また、訪問看護師の良さを伝えていくためにはどうような行動が必要か考えていきたい。

(7)研修検討中の方へのメッセージ、おすすめポイント
訪問看護師を目指す新人が「在宅看護をしたい」と思う反面、知識や経験がないとやめてしまう人が多いと思います。実際、一人で訪問して何かあったときに、何もできないもどかしさと同時に怖さを感じたことが私にもあります。
この研修を終え、今まで以上に「看護は怖い」と実感もしました。
今回、かわべクリニックで研修をさせていただき、自分自身が「何がわかっていて、何がわかっていないのか」を知ることができました。
毎日、足りないところを指導していただけるので、復習や予習をすることができました。
また、PNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)で聞きたいことをタイムリーに質問でき、疑問に思っていることをすぐに解決できます。足りない情報は、資料の提供により具体的に指導していただけます。
何より、週単位で自分に合った研修プログラムを考えてくださるため、多くの学びを得ることもできます。
かわべクリニックではたくさんの症例があるため、訪問看護ステーションでは学べないことや、手技に限らないたくさんの経験をすることができました。
看護学生のときのように、予習やレポートは大変でした。どんな予習が実践で役に立つか分からず、夜更かしすることもありました。
しかし、勉強は無駄になりません。また、振り返りレポートを指導いただくことで自分の力になりました。
研修後、ステーションに戻っても振り返る習慣が残ります。研修を受け入れていただけるクリニックは少ないため、経験や知識を習得したい方にはおすすめです。

(8)問題点
はじめは慣れない環境下で、緊張で聞きたいことや質問等何をすればいいのか分からず、頭が真っ白になる日が多かったです。
もっと積極的に行動できれば良かったと思っていますが、研修のプログラムや行動手順があればスムーズにできるのではないかと感じました。
一例として、患者情報をとる時間が少ないと感じました。往診や訪問前に観察項目のおさらいがあれば、訪問中にみる視点や学びの幅が増えるのではないかと思いました。
カルテに観察項目の記載はありますが、何故その観察項目なのか、根拠を予習することができればよかったと思いました。
自分自身で考えることが学びですが、看護経験や知識がないため、訪問前に調べるには時間が少なかったです。(服用している薬に関しても調べていたため)。

(9)訪問看護ステーション・管理者から
お忙しい中、2か月の研修ありがとうございました。
在宅訪問看護における新人指導をどのように行えばよいか分からず、同行し注意点を指導するのみとなっておりました。
しかし、かわべクリニックで経験をさせていただき、ステーションでは学べないたくさんの事を学習できた研修だと思います。
一番学んでほしかった「怖い」という気持ちをはじめ、アセスメントやわからないことを聞く姿勢など、成長を感じました。
私自身も、質問されたときの根拠やアセスメントをしっかり考え指導していく大切さを学ぶことができました。
この研修を通して学習することの大切さ、スタッフ全体での学びを深めていくことの大切さを感じました。

まとめの言葉(看護師 川邉綾香)

在宅医療は特殊です。
なぜなら、患者さまのご自宅で個別性を重んじた医療・ケアを行うからです。

私たちが行う研修目的の第一は、相互理解です。
研修には、病院やMSW(医療ソーシャルワーカー)、訪問看護師など様々な視点を持つ方にご参加いただいております。
その中で、各自の看護観や考えを尊重しながら、『最期まで自宅で』という患者さまの思いを支えるために、かわべクリニックではどのような視点で、どのような看護・医療を行っているのかを学んでいただければ、と考えております。

もちろん、看護師経験の少ない方、在宅訪問の経験のない方にとっては、覚えることや考えること、学習することなど多いかと思いますが、基本的にはお互いの看護を高め合うことを目的としています。
また、見学・研修をしてもらうことで、かわべクリニックの医療が誇れるものであるのかを見直す機会でもあり、かわべクリニックにとってもよい刺激となります。
そして医療者だけでなく、患者さまに関わるすべての方に、かわべクリニックがどのような考え医療を行っているのかを、知っていただける場でもあります。
私たち医療者は、患者さまを中心としたオープンでフラットな関係、そして真の連携が築くことができると考えています。
ご興味のある方はいつでもご連絡ください。

~在宅医療の未来を創る 訪問看護師を募集します~
かわべクリニックでは、医師と看護師が常に同じ目線に立ち、患者さま一人ひとりにとって、よりよい「最期」を迎えられるようなきめ細かなケアを目指しています。
ぜひ、私たちと一緒に在宅医療の未来を創っていきませんか。
ご応募をお待ちしております。
http://www.kawabe.clinic/recruit.html

仲間を増やしたい~取材を通して伝えたい想い~

先日のブログで、朝日放送テレビ『キャスト』の密着取材についてお知らせさせていただきました。

今回は、かわべクリニックが今回の取材をお受けした理由について、少しお話させてください。

「人生の最期を自宅で迎えたい」と願う患者さまは、たくさんいらっしゃいます。
しかし現実には、自宅には帰れず、病院で最期を迎える方もいらっしゃいます。

私たちを含め、「緩和ケア」に特化し、本来の意味で24時間365日対応している「在宅支援診療所」であれば、患者さま本人の希望に沿った最期を迎えられるケースは、非常に多くなります。

かわべクリニックが考える理想像は、「看護師を主体としたフラットな在宅緩和ケアチーム(クリニック、訪問看護ステーション、薬剤師、ケアマネージャー、ヘルパーステーション)」を地域で作ること。
そして、超高齢少子化多死時代を迎える中、誠実に対応できる人を育成していくこと。
エンドオブライフ・ケアを広め、死を前にした人に、私たちにできることがあることを伝えること。

このことを常にお話していたところ、朝日放送テレビ『キャスト』から取材の依頼があったのが今年の1月末。
かわべクリニックの在宅訪問診療への取り組みをご理解いただくためには、一度の取材ではなく、月単位で追っていただけるのなら取材をお受けしたい。
生意気にもそうお返事したところ、この小さなクリニックを半年間も取材をしていただくことになりました。

患者さまにも許可を得て、診療の様子も収録していただきました。
定期的に開催している研修会、講演会、エンドオブライフ・ケアの活動の様子などもしっかりと見ていただきました。

最期まで自宅で過ごすためには、病気を診るのではなく、患者さん・ご家族を全人的に診ることが大切となります。
終末期において、どのように対応するのかといったことを常に考え、磨きをかけているクリニックがあるということを、知って欲しい。
その思いが伝わるようなレポートになったと思います。

放送は8月14日(水)(予定)朝日放送『キャスト』(夕方3時50分~7時)です。ぜひご覧ください。
アナウンサーの古川昌希さんは、うす顔の男前ですが、なかなかの熱い心の持ち主でした。
10回ほどの取材の中でいろいろとお話もでき、学ばせていただきました。どのように放送されるのか、とても楽しみです

この放送は、私たちの夢を前に進めるための、大きな一歩になると思います。

私たちの夢、それは「東大阪プロジェクト」

ターミナルケアのあるべき姿は、「最期は自宅で」の願いを叶え、患者様が最期まで穏やかで過ごせること。
そのためには、医師や看護師、薬剤師、ケアマネージャーやヘルパーなど、関わる人すべてがフラットな立場で医療チームを組み、不安や痛みを可能な限り軽減し、周囲が笑顔を絶やさず支えることが必要になります。

これまでにない新しい取り組み方を実践する医療チームで、ターミナルケアの理想像を追求し、実現したい。
私が師と仰ぐ小澤竹俊先生が開催した「令和元年の夏、横浜でエンドオブライフ・ケアの夢を語る会」のような会を、いずれは東大阪でも開催したい。

そのためには仲間を募り、ここ東大阪の地で夢を語り合い、理想像を追求し、実現したい!

この「東大阪プロジェクト」については、これからも引き続き検討を重ねたいと思っていますので、ご興味のある方はぜひご連絡ください。

【スタッフ募集】

かわべクリニックでは、在宅緩和ケアを中心に活動してきました。
この1年間、2018年7月1日から2019年6月30日までの在宅看取りは70人にのぼります。
常勤医師2名、非常勤医師2名体制で24時間365日の診療を行ってきました。

業務拡大に伴い医師を募集します。

■在宅診療医(常勤・非常勤)

かわべクリニックでは、医師と看護師が常に同じ目線に立ち、患者さま一人ひとりにとって、よりよい「最期」を迎えられるようなきめ細かなケアを目指しています。
私たちと一緒に在宅医療の未来を創っていきたいと思っていただける、熱意のある方を募集しています。
今後、独立開業を希望し、当クリニックで経験を積みたい方も受け付けております。
在宅医療に興味を持つ学生・医療者の方々の見学・研修も受け付けております。

もし、かわべクリニックで働いてみたい医師がいらっしゃいましたら、お問合わせフォームよりお気軽にお問い合わせください
お問合わせフォームはこちら

8月14日(水)朝日放送テレビ『キャスト』にて放送(予定)です!

こんにちは!事務の石井恵美です。

先日ブログでもお知らせしていましたが、朝日放送テレビ『キャスト』の密着取材が今年の2月から行われていました。
今回は、約半年間に渡る取材の様子を、写真と共にレポートさせていただきたいと思います。

取材は、朝礼の様子からスタートしました。
かわべクリニックでは毎朝、スタッフ全員で朝礼を行っています。
いつものように、前日の夜から今朝までの報告、本日、訪問予定の患者さまの申し送りを行ないます。

その後、アナウンサーの古川昌希さんから、院長と看護師への質問タイム。


院長と川邉看護師ペアと共に、3名の患者さまの訪問に撮影スタッフもご同行いただきました。
(事前に患者さまのご了承は得ております)


訪問先では、診察風景の撮影や、患者さまや家族さまへのインタビューもございました。
ご協力いただいた患者さま、ご家族さま、ありがとうございました。

今回の取材を通して、かわべクリニックが
看護師を主体としたフラットな在宅緩和ケアチームを地域で作っていること
病気を診るのではなく患者さまやご家族さまを全人的に診ること
終末期において、医療者はどのように対応するべきなのかを常に考え、技術に磨きをかけていること
などをお伝えさせていただきました。

取材スタッフの方にも、かわべクリニックの思いに共感していただけたと確信しております。

そして、長期の継続取材を終え、いよいよ放送日が決まりました!

8月14日(水)朝日放送『キャスト』(夕方3時50分~7時)内で特集として放送されます。
(※放送日は予定です。変更になることもございます)

私たち医療者の思いはもちろん、医療を受ける患者さまの声も合わせてお伝えすることで、在宅医療をより一層身近なものに感じていただける内容になっていることと思います。

視聴可能な方はぜひご覧いただき、ご感想を頂戴できると幸いです。
よろしくお願いいたします!

【看取りの報告書】Mさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

自営業で工場経営をしていたMさま。
少しでも工場に行けるような症状コントロールとは…ケアとは…

Mさまのこと
~工場を存続させたい、息子に技術を伝えるたい。だから、家で過ごす~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

Mさまについて、ご報告させていただきます。

退院から1ヶ月後には、自宅横の工場で軽作業ができるまで回復したMさま。
しばらくして在宅訪問診療を一旦終了し、外来での抗癌剤治療ができるまでになりました。

しかし、ガンが再発し再入院。その後、再度介入させていただき、二度目の在宅診療がスタートいたしました。

高カロリー輸液や腎瘻カテーテル、人工肛門と、身体的変化が大きく、戸惑いの言葉も出ていたMさまでしたが、「生きていられるだけ幸せ」と落ち込む姿は見せず、「点滴が外せるように食べる。抗癌剤治療が出来るようになる」と、奥様に支えられながら、ゆっくりと前向きな生活を送っていらっしゃいました。

退院後1ヶ月が経過し、体調も少し改善したためTS-1内服を試みましたが、嘔気および倦怠感が増強したため内服継続を断念。
本格的な緩和治療を開始いたしました。

ステロイドの効果もあり、短時間ではありますが自宅内の工場で息子さんと一緒に働くなど、元気な姿も見られました。

退院後2ヶ月が過ぎたころには、両下腿のリンパ浮腫で体動が困難となり、臥床傾向になりました。
それでもストマ交換や尿破棄など、自分で出来ることは自分でしたいというMさまのお気持ちがあり、私たちの見守りのもと実施しておられました。

やがてレベルが低下し、訪問時には発語がない事も多くありました。
それでも診察の最後には、力強く手を握り返してくださいました。
またときには奥様より「昨日は夜、お茶を飲みました」とご報告をいただき、驚くこともたびたびありました。

状況が悪化し、「お父さんの大切な日は全部雨だった。結婚式も、この家に引っ越しした時も、会社を立ち上げた日も。もしかしたら雨の日に逝ってしまうかも」という奥さまのお言葉通り、雨が降る日に、奥さまと息子さまに見守られる中、安らかに旅立たれました。

奥さまへのご負担が多く、不安を感じていらっしゃるご様子でしたが、「お父さんは絶対家にいたかったから頑張ってよかった」とおっしゃっていただきました。
私たちもMさまのご希望に最期まで寄り添えたことを、ありがたく思いました。

[ケアを振り返って]
Mさまは、当初の手術時には予後も数カ月と説明されていたものの、自宅に戻り、ゆっくりとしたペースで療養することで徐々に回復。
最終的には外来通院で抗癌剤治療が再開できるまでにいたりました。
その間はMさまの焦る気持ち、そして支える奥さまの体調不良もあり、Mさまだけでなく奥さまのケアにも努めました。

一旦終了した在宅診療でしたが、ある日奥さまから「先生、お父さんが大変なことになっているからまた往診に来てください。もう、あかんと思うから」と連絡を受け、再開。
久しぶりにお会いしたMさまは、こうおっしゃいました。

「これでもう安心です。先生、最期までお願いします。
僕としては、もちろん長生きしたい気持ちはあるし、前向きに生きたいと思っています。
でも、今は抗癌剤をする体力もないのにしてはいけないと思っているんです。
ある人が言ってました。
『その日が幸せだったと思う毎日を過ごすこと』と。
元気だった時は聞き流していましたが、今になるとその言葉の意味がわかります。
朝起きて、お腹空いたと思って、食べて、休憩して、動いて、当たり前の生活がしたい。
美味しいものを食べている夢をみて、目を開けると自宅の天井で安心します。
そう思うと今は、入院して治療したくないという気持ちなんです」

Mさまにとって、「当たり前の生活をする」という夢が、日々の支えとなっていると感じました。
私たちは、そのMさまの思いに沿ってケアを行いました。
だからこそMさまは、最期まで自宅で、自分らしく過ごすことができたのだと思っています。

[ご家族さまからの手紙]
お葉書ありがとうございました。
主人の事は息子と、いつも怒っていたなぁと思い出しています。
私は先日、人工股関節の手術をしてもらいました。
歩けるようになりましたが、足の浮腫みがなかなかとれません。自分のペースで歩けるようになって、体重が増えて困っています。
かわべ先生に紹介してもらったS先生、とてもやさしい方です。ありがとうございました。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

【看取りの報告書 バックナンバー】
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