かわべクリニック

在宅療養支援診療所

かわべクリニック

内科・緩和ケア内科・呼吸器内科

〒577-0843 東大阪市荒川3丁目5番6号 MMビル203

TEL : 06-4309-8119FAX:06-4309-8118

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【看取りの報告書】Qさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

退院日にお話をいただき、退院後に直接ご家族とご相談し、慌てて往診をしたQさま。
退院前カンファレンスの必要性とは…

Qさまのこと
~初回訪問した日から得られる24時間365日の安心感~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

Q様についてご報告させていただきます。
退院2日後に初回訪問を設定していたのですが、退院翌日の夜に39℃の発熱を来し、往診依頼。それが初回訪問となりました。

胆管炎の再燃の可能性を説明した上で、自宅での療養を希望されたため、アセリオの点滴およびクラビットの内服治療を開始しました。
抗生剤が著効し発熱なく経過、またアセリオの点滴後にスッキリと腹部の痛みが緩和されたとの話もあり、アセトアミノフェンでの疼痛も図っていきました。

徐々に病状が進むにつれて、出来ていたことが出来なくなることへの苦しみを表出されたQさま。
医療用ベッドなどの導入を提案しましたが、「その環境こそが病人になった気持ちになる」と訴えられ、元々使用していた厚めのベッドマットの上に布団を敷いて、床から30㎝程段差をつけるなどの工夫をしました。

Qさまは最後まで『生への意欲』が強く、常に自分自身と闘っておられました。
それを支える奥さまも辛かったと思いますが、少しでもQさまが穏やかになれるようにと懸命に食事の工夫をされたり、家業であった自転車屋さんの状況をお伝えするなど、支えとなっておられました。

そして、退院から1ヶ月半後に、奥様、近所に住んでおられるご長男さまとそのご家族、そして次男さまに見守られ永眠されました。
亡くなられる前日にベッド上で洗髪をした際に、Qさまより「あぁ~気持ちいい~。どっち行ったらいい?生きる方?死ぬ方?」と言われて驚いていたところ、奥さまが優しい声で「まだこっちいてて。」と言われ、Qさまが穏やかな表情になったことを思い出されます。
ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]

患者さまの心理として、「在宅訪問診療って何?」「まだ、動けるのに急変時に備えて往診の先生を決めておくってどういうこと?」「ガンではあるけど、今は食事も食べられているし、そんなにすぐに悪くなるとは説明受けていないから大丈夫。」といった心境だと思います。
そんな中で病気と上手に付き合うために、かかりつけ医(在宅医)がいかに重要であるかを早期にご説明する必要があります。

ただ、どの患者さまも「今は治療中だ、そのような話はまだ先の事だ」と思うかもしれません。
しかし、「早いに越したことはない」と思っていただけるようなシステム作りが必要だと、強く思います。

では、どうするべきでしょうか?
かわべクリニックでは積極的に退院前カンファレンスに参加し、病院医と在宅医、患者さま・ご家族さまと、皆のが顔の見える関係を築くこと、その上で安心して在宅療養ができるように心がけております。

※退院前カンファレンスに参加する上で心がけていることについては、前回のブログでご紹介しております。ぜひご一読ください。

在宅でも安心して過ごせる、対応してくれる・支えくれる人が増えた、とご本人やご家族が思えたときに、患者さまの「最期まで自宅で過ごしたい」という希望が叶うのだと思います。

その支えの中で『選ぶことのできる自由』がある。
寝床や食べたい物、したいことが選べたときに、穏やかな気持ちになるのではないでしょうか。

医療資源や社会資源、公共資源など色々な情報を提供する必要は、もちろんあります。
ただ、それらが患者さま本人にとって「穏やか」と思えるものなのか、考えていく必要があると常々感じています。

[ご家族さまからの手紙]

Qさまの奥さまよりお手紙をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

日暮れが日々早くなって参りました。
先生はじめ皆様には不安な日々を支えて頂きまして本当に感謝しております。
主人も同じ気持ちでいたと思っております。
心に穴があくというか、もっと長生きして欲しかったという思いは尽きませんが、安らかに旅立てましたことを家族の慰めにしております。
職人気質で根は優しい、仕事が好きで、釣りが好きで、ドライブが好きな主人でした。
一緒に過ごしたかけがえのない日々の思い出を胸に生きてゆこうと思っております。
本当にありがとうございました。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

【看取りの報告書 バックナンバー】
・Pさまのこと
・Oさまのこと
・Nさまのこと
・Mさまのこと
・Lさまのこと
・Kさまのこと
・Jさまのこと
・Iさまのこと
・Hさまのこと
・Gさまのこと
・Fさまのこと
・Eさまのこと
・Dさまのこと
・Cさまのこと
・Bさまのこと
・Aさまのこと

「退院前カンファレンス」のポイントと大切にしていること

こんにちは。看護師の川邉綾香です。

病院を退院し、在宅医療に入る患者さまの「退院前カンファレンス」に、私たちは在宅医療チーム側として参加しています。
そこで、「退院前カンファレンス」の際に私が注意していること、心がけていることをまとめてみました。

【準備】
・患者、家族の心情
自宅に帰りたいのか?それとも病状が落ち着いたため、病院主導で退院を促されたのか?
中には、在宅療養について詳しく知っていて、それでも病院で1日でも長く過ごしたいと思う方もいらっしゃいます。
そのような場合、転院もひとつの方法でしょう。
転院するよりは在宅療養、といった消極的理由の場合は、在宅療養の良さを少しでも感じてもらえる工夫が必要です。
在宅療養は、病院よりすべてが上回っているわけではありません。しかし、良いところも非常に多くあります。
在宅医療の良いところをご説明することで、患者さまのお気持ちが少しは変わっていただけるのでは、と思います。

・本人の意思、夢
残された時間を、どのように生きようとしているのか?
積極的に帰りたい、自宅療養をしたいと思う方の多くが、何らかの意思を、「将来の夢」をお持ちです。
小澤竹俊先生がおっしゃるように、「死を超えた将来の夢を描くことができる人は、たとえ命が限られたとしても絶望に陥りません。確かな希望を持って、今を穏やかに過ごすことができます。」(『死を前にした人にあなたは何ができますか?』小澤竹俊 著 より)

・情報収集
事前に受け取った診療情報提供書の中身を把握し、熟考することが必要です。
病歴の確認をし、ある程度予測されること、在宅で困ることはないかなど、問題の抽出をしておきます。
内服薬の確認は必須で、可能であれば、減薬してもらう交渉を行います。

【ポイント】
(1)病院スタッフに対して安心感を与える
病院にとって、大切な患者をどのように在宅医療に橋渡しするのかは、とても重要です。
だからこそ、在宅医療側として、病院の主治医が行ってきた医療を尊重し、バトンを引き継ぐことを説明します。
それに加え、在宅医療ならではの24時間365日連絡がつき、対応出来るシステムであることもお話いたします。

(2)患者、家族に最初の安心を与える
患者さまや、家族さまは、退院することで「主治医から見放される」印象を持ってしまうこともあります。
そこで、私たちは主治医から現在の病状について、また今後起こりうることとその対応について、きちんと申し送りをしていただいていることをご説明します。
そして在宅医療がどのようなものであるのかをイメージしていただき、安心感をもっていただけるよう心がけています。

(3)看護だけでなく、介護の面にも目を配る
病院は交代制が確立しているため、昼間・夜間でも治療や介護が行われます。
しかし自宅で介護する場合は、ご家族さまが昼夜逆転生活になったり、睡眠不足になる懸念もあります。
在宅医療を行う上で、ご家族さまや介護スタッフとの連携も重要です。

(4)分かりやすい言葉で、和やかに話す
ご家族も参加される場なので、略語や専門用語を出来るだけ避けて、わかりやすい言葉を使っています。
職種や立場で意見が異なることも当然ありますが、和やかな、お互いを尊重する雰囲気づくりが大切です。

大切にしていること
退院前カンファレンスで関わった方の多くが、「それならば、早々に退院しようかな、いや、今日にでも帰ろうかな」と言ってくださいます。
これは、かわべクリニックがいち早く退院できるように環境を調整し、自宅に戻れて良かったと思ってもらえる提案が出来ているからだと自負しています。では、私たちはどのようなことを調整しているのでしょうか。

たとえば、退院に向けた薬剤の調整がその一つです。投与経路、回数、時間を見直します。
もし点滴が実施されているならば、内服に変更は可能かどうかを確認します。
病院ではしばしば、入眠前に点滴で睡眠導入などを行ないますが、在宅ではなかなか難しいので、内服で調整できれば問題が一つクリアされます。
また1日に3回の解熱剤の点滴投与なども難しいため、他の方法がないかなどの検討が必要です。
患者さまやご家族さまは、点滴を投与されている現在の状況が、在宅でも継続するイメージをお持ちになりますが、これは当然のことです。
しかし、調整を少し行なうだけで、点滴が全く不要となったり、回数が減ったりします。
そうなると、「点滴の調整が可能なら、自宅でも過ごせるのかも」と思えるのです。

そのほかに大切なのは、訪問診察、看護の予定を立てること。患者さまやご家族さまが望まれる回数と、訪問すべき必要な回数の調整です。

退院すると、今までは毎日のように部屋に巡回に来てくれていた医師、看護師が全く来なくなる。
もちろん、次の外来まで診察が不要な方であれば、在宅医療は不要かもしれません。
しかし、病状によっては毎日でも来て欲しいという方もいます。
訪問診療・看護は、医療上必要な回数だけ、お伺いできます。患者さまによっては、それが、毎日のこともあります。
在宅医療は、病院でナースコールを押していたように、医師や看護師といつでも電話がつながって連絡がとれ、必要に応じて往診する。24時間365日、患者さま支えるシステムであることをご説明することで不安が解消され、「家で過ごしてみようか」となります。

カンファレンスの中で、在宅療養のイメージができるような説明をすること。
初回の面談時に患者さまやご家族さまの心をつかみ、安心感を提供することが大切です。

患者さまの状況に合わせた対応を
急性期(がん、心不全などの終末期など)の場合、残された時間が短いからこそ、主治医からの診療情報と本人の状況が合致するのかを自分たちの目で確認することが必要だと、私たちは考えています。
百聞は一見に如かず。退院前カンファレンスでは、何をすべきかを抽出し、病院からの診療情報では書ききれないことを感じることができます。

慢性期(神経難病、認知症など)の場合はすでにケアマネージャーが介入されていることも多く、在宅での療養にあたり、医学的見地から注意すべきことを確認します。
看護より介護の比重が高くなるため、ケアマネージャーからの意見が非常に重要で、退院前カンファレンスは有用で貴重な時間となります。

そして関係者が揃っているこの場で、急変時を含めてどのように過ごしていきたいかなど、初めてのアドバンス・ケア・プランニングを行ないます。

本人・家族は何が知りたいのか
残された時間を委ねることとなる医師や看護師、スタッフとの相性も、在宅医療に踏み出すために重要なことの一つです。
「この人たちに委ねられるか?」と漠然とした疑問や不安が、説明することによってリアルなものになる。そして、「じゃぁ帰ろう」という勇気に変わります。

在宅医が何をしてくれるのか?パラメディカルが何をしてくれるのか?
自宅に戻り、どのように生活をすれば良いのか?

患者さま本人は在宅医療に積極的だけれど、一方で家族は消極的である場合は、患者さまには明るい話を、ご家族さまには今まで病院に委ねていた看護・介護をどのようにすればよいのか、在宅医療チームに委ねられる部分は何なのかをお話します。

またご本人、家族ともに消極的な場合は、「とりあえず、帰って、2週間くらいを過ごしてみませんか?」とご提案します。
そして2週間後に、どうしたいのか改めて意見を聞かせていただきます。
この2週間で、多職種で連携をはかり「このまま家で過ごせそう」と思っていただけるようにするのが在宅チームの腕の見せ所。必要なのは、病院とは違った形の安心をご提供することです。

いかがでしょうか、参考になりましたか?

最後に一つ。
退院前カンファレンスでは、要点を簡潔にするのも大切なことです。
私はついつい長く説明してしまうことがあるので(笑)、貴重な時間を有効に活かしていくことが今後の課題です!

講演会・研修会・勉強会で心がけていること

こんにちは。看護師の川邉綾香です。

最近、さまざまな場所で講演をさせていただくことが多くなりました。
そして、関係者のみなさまから「うまく講演する方法、工夫は?」と質問されることも増えました。

そこで今回は、私が講演会・研修会・勉強会などでお話させていただくにあたり、注意していること、心がけていることをまとめさせていただきました。

【例:50名の多職種相手での講演の場合】

<ポイント・伝えたいこと>
(1)真の主役は患者さま
どのような思いで医療・ケアを提供しているか。真の意味をわかってほしい。
根拠は何なのか。その中心は誰で、誰のためにやっているのか。

(2)勉強会の主役は受講者
受講者の反応、うなずき、疑問、無反応などの反応を見ながら話をする。

(3)分かりやすい言葉でゆっくりと
専門用語をさけ、わかりやすい言葉で。適度な速度で。
●一方的でなく、グループワークなど、音楽を入れ、集中力が途切れないような工夫。
●共感・支持を得られるような事例紹介を用いる。

(4)今日から使える「お土産」を
多くの人が分かるといってもらえるような、明日につながるような、「お土産」を持って帰ってもらえるような勉強会。

◎まずは雰囲気づくりから
はじめに、受講者の気持ちをこちらに向けていただきたい。
そのために、緊張からはじめ、最後は緩和されるような形で終わる形にします。

「日頃、出来ていますか?」といった難しい投げかけ、問題提起を行い、緊張感を持っていただきます。
そして、すぐに使えるような、実戦可能な方法を説明し、すぐさまペア・グループワークで体験し、「自分にもできるんだ」という実感を味わっていただきます。
今日からでもやってみようと思う、経験を積んでもらうことで、最終的に、緊張が緩和され、自信につながります。

◎講演の工夫
単調な、一方的な講演にならないように、明るく、元気な投げかけ、質問をします。
一つ目の質問は、(答えてくれる)顔見知りに質問するのも良いかもしれません(笑)。
大切なことは、質問してもらったら、その内容をゆっくり丁寧に反復することです。
それが質問者の安心感につながり、こちらも質問の内容をキャッチ、再確認できます。

「あなたは本当に聞けていますか?」のような、核心を突くスライドを入れることによって、受講者の緊張感を高めることができます。
そして心に残るスライド、ワード(言葉)、事例、音楽を提示します。
これが「お土産」になることが多いです。

◎グループワークで大切にしていること
知らない人とペアを組むことにより、かえって気兼ねなく話すことができます。
実演、実践練習などは、知らない人とペアで組むからこそ、真剣に恥ずかしくなく、夢中になって取り組めます。
盛り上がりに欠けるグループがある場合は、、少人数であれば、講師もその話に入り、グループワークを盛り上げます。
盛り上がっているグループには、最後に意見を求め、共有してもらいます。
困っていたグループにも、意見を求めるようにすることで、次の勉強会への参考となります。
受動的なグループには、当てられる緊張感を利用し、一緒に参加する姿勢をとってきただきます。

◎多職種・地域連携でのトピック
受講者は「クリニック(医師・看護師)がどのような思いで活動しているのか」を聞きたいし、知りたいと思っています。
私の場合は、「看取りの報告書」をベースに、患者さまがどのような想いで帰りたいと言うのか、そして最期まで生きたかを基本軸として伝えています。

その上で、病院ができること、病院からバトンタッチされて私たち在宅チームができること、それを互いに追求したいと思っていること。
批判することは簡単だけど、お互いにより良くするという方向、追求心で、その患者さまにとって、ベストな地域連携を計り続けたいと考えていることを、お伝えします。

◎医療に詳しくない、ケアマネージャーさんやヘルパーさんが参加している場合
まずは、在宅医療と在宅介護を受ける患者さまの違いを理解してもらうことからはじめるます。


①がん、②心・肺疾患末期、③認知症・老衰など、病気によって、病状の進行が変わります。

かわべクリニックでは、多くの方が「がん」の方です。
最後の2か月で急速に機能が低下し、今まで出来ていたことができなくなります。
だから、病院から帰りたいと思う時が帰る時であるし、「急ぐ!」ときはみんなで急がないといけません。
残された時間が短いからこそ、総力をあげてその人の一日一日を大切にしなければなりません。

このことを、ご家族さまへの説明に用いている「看取りのパンフレット」を用いて説明いたします。

旅立ちが近づいている時の状態の変化について、食べなくて良い、点滴しなくて良い、警察は呼ばなくて良い理由を。

逆に在宅医がいなければ、自宅で亡くなった場合は警察を呼ぶ必要があります。
今現在、関わっている患者さんでそのような困っている利用者さんはいませんか?
かかりつけ医が往診できるのか。不可なら、どうするのか。新しく見つけるのか?
これが、いわゆるアドバンス・ケア・プランニングです。
訪問看護師に介入してもらうのもひとつの方法で、それにより医療と介護の連携がはじまります。

◎参加者の発言を得るための工夫
とっかかりとして、「こんな簡単な質問でも良いですよ」と、簡単な例を挙げます。
そして全体を見渡し、肯定でも否定でも、前のめりの受講者を見つけ、その方に答えていただき、その話をできる限り膨らませます。何かを言いたい人は、必ずいます。じっくりと探し、どうですかとマイクを向ける。
良い反応でも悪い反応でも、意見を述べてもらうことが大切です。
長く感じるかもしれませんが、30秒くらいの「沈黙」に耐えると、自然に手が上がることが多くあります。
それでも手が上がらなければ、次のテーマに話を進めます。

いかがでしょうか。ご参考になりましたでしょうか?
このようなことを言っている私ですが、緊張と緩和を心がけているものの、なかなか場の雰囲気がつかめないこともあります。

そのようなときに適宜調整できるようになることが、今後の課題です。

【看取りの報告書】Pさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

「眉間にしわがよって苦しそうな夫を見て、私が逃げたくなった。辛いなら眠らせてあげるのがいいのではないかと思った。でも、それは私の逃げだった。」

Pさまのこと
~家族にとって見守ることしかできない辛さ、難しさ~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

昨年秋に貴院を退院されたPさまについて、ご報告させていただきます。

退院後、輸血の効果もあり貧血症状が改善され喜んでおられたのですが、自宅ではベッドを使用していなかったため、床からの立ち上がりが出来ず、落ち込んだ様子が見受けられました。
これからの療養生活において、生活の質を落とさない方法が重要であることを説明させていただき、介護用ベッドをすぐに導入。
それ以来、「シャワーをするのにシャワーチェアーがあればいいな」と自ら利用したい物をお伝えくださるようになりました。

しばらくの間は体調も安定していたため、行きは歩いて、帰りは車椅子での近所の散歩を日課とし、奥さまと有意義な時間を過ごされていました。

12月中旬より状態が悪化。
辛抱強いPさまは「辛い」「こうして欲しい」などと弱音を訴えることが少なく、奥さまは「何かしてあげたいけど、出来ない」辛さを抱えておられました。
ただ見守ってくださることがPさまの安らぎとなること、そして私たちが奥さまを支えることを、毎日のようにお伝えさせていただきました。

そして、クリスマスを過ぎたころ、息子さまに見守られ安らかに永眠されました。

奥さまより、「ガンと診断された時に、『最期はホスピスで』と決めましたが、やはり家に勝るものはないです」と言っていただけたことが私たちの喜びです。

今までPさまの治療を5年間にわたりを支えていただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

[ご家族さまからの手紙]
Pさまの奥さまからお手紙をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

拝啓 新春を迎えお健やかな日々をお過ごしのことと存じます。

さて、故人が大変お世話になりましてありがとうございました。
葬儀を無事済ませ、悲しさや淋しさとホッとした気持ちが入り混じった落ち着かない日々でございます。
主人が中心の生活をしていましたので、いないことに慣れるには時間が必要なようです。

ガンと診断された時に「最期はホスピスで」と決めて病院を選びましたが、やはり家に勝るものはないのですね。
あの時にかわべクリニック様に診療をお引き受け頂けなかったら、安心して退院することはできませんでした。
主人に「近くにいい先生がいらっしゃったよ」と話し、「よかったね!」と言ったことを思い出します。

この5年半、夫婦で病気に向き合う時間が持て、ある意味充実した時間を過ごせたと思っています。
そして、そのような時間が持てたことを幸せだったと思う反面、今思い出すのは、しんどそうな最後の一週間のことです。
あの時、もっと何かしてあげられなかったか、もっと何か言う言葉があったのではないか、と埒もないことを考えてしまいます。
亡くなる一週間程前、往診後に先生方と外でお話しをして部屋に戻った時、黙って天井を見つめ、悟ったような顔をしていました。
何も言わず、手を取り合ったことを思い出します。

私が辛い時に、辛いのが当たり前なのだと認め、気持ちに寄り添って下さったこと、励まして下さったこと、本当にありがとうございました。
「辛くて怖い」と声にすることができ、救われました。
主人だけでなく、私も心を込めてサポートし、支えて下さったことに心よりお礼申し上げます。

「もっと長くかわべクリニックの皆様にお世話になりたかった。もっとゆっくりと時間が流れてほしかった。」と思うことには切りがありません。
二カ月弱の短い期間でしたが、本当にありがとうございました。

まずは略儀ながら書中にてお礼申し上げます。

[ケアを振り返って]
倦怠感は「身体的・精神的・認知的にエネルギーが減少したと感じる主観的な感覚」と定義されており、終末期がん患者の60-100%が体験する症状です。
終末期になると、症状の進行に伴い倦怠感の改善は困難となりますが、少しでも患者さまが「心地よい」と感じられるようなケアを考えていく必要があります。

緩和ケアにおいては、身体的・精神的な症状の緩和を図ることが必要であり、またそれを私たちは得意としていますが、その中でも倦怠感を軽減することはとても難しいのです。

また、患者さまに寄り添うご家族にとっても、辛そうな顔を見守ることがどれほど辛いか…。

その中で、どのように過ごすと少しでも緩和されるのか、どのような顔でいれば穏やかだと思えるのかを、一緒に見つけ出すことが大切なケアです。

しんどさ(倦怠感)に勝る、「今が穏やかだ」と感じる支えとなること
最期まで家で過ごしたい、最期に過ごす場所を選べる自由を提供すること
それが、薬だけではない「ケアの力」になる。

そのことを信じて、私たちも逃げずに、患者さまと最期まで関わる強さが必要だと感じました。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

【看取りの報告書 バックナンバー】
・Oさまのこと
・Nさまのこと
・Mさまのこと
・Lさまのこと
・Kさまのこと
・Jさまのこと
・Iさまのこと
・Hさまのこと
・Gさまのこと
・Fさまのこと
・Eさまのこと
・Dさまのこと
・Cさまのこと
・Bさまのこと
・Aさまのこと

映画だけの世界ではありません!「地域で支える最期」とは?

こんにちは、看護師の川邉綾香です。

お見送りの最期にご家族さまからいただく、「もっと早く先生方に会いたかった」。
その言葉の意味の重さ、そして有難さ。

なぜ、もっと早く出会えなかったのでしょうか。
それは、「かわべクリニック」が知られていない、ということだけではありません。
在宅医療そのものが社会全体に周知されておらず、ご家族さまや患者さまが在宅医療クリニックにたどり着くまでに、たくさんのご苦労があるからです。

先日、東大阪市在宅医療介護連携推進事業として、映画『ピア ~まちをつなぐもの~』の上映会が行なわれました。
その上映に先立ち、かわべクリニック院長川邊正和が「ACP*ってなぁに?」をテーマに、講演を行いました。

*ACP:アドバンス・ケア・プランニング
今後の治療・療養について患者・家族と医療従事者があらかじめ話し合う自発的なプロセス

映画『ピア ~まちをつなぐもの~』は、「地域で支える最期って?」という問いの答えとなる内容でした。
しかし会場からは、「これは映画だからであって、実際にこんなに大勢の人が助けてくれるわけがないわ」という声もあったそうです。

ここにも、まだ在宅医療が周知されていない現実がありました。

独居の方が、最期まで自宅で過ごしたい。
その希望を叶えるために毎日、日に何度も訪問して活躍してくれる方(ケアニン)がたくさんいるにもかかわらず、それがまだ知られていません。
ごく当たり前のように訪問サービスが受けられる世の中にしたい。改めて、そう思いました。

「認知症が進行すると在宅は無理…」
「そもそも独居の方が最期まで在宅なんて無理…」

確かに、現状ではそう考えざるを得ないのかもしれません。
独居で認知症の方に関わることの多いケアマネージャーさんは、今まで多くの苦労をなさってきたことでしょう。

だからこそ、安心して、在宅医療を選べるということを知ってほしい。そう思うのです。

私たちは、患者さま一人ひとりが、どこで、どのような治療・ケアを選びたいのか、その希望を聴ける人でありたい。
がんの終末期を自宅で過ごせることを周知してもらうために、これからも根気よく多職種連携を図りつつ活動を続けてまいります。
これからも私たちは、スタッフや多職種の医療・介護者に対して、看取りを恐れずに寄り添う力に変える教育を行い続けます。

市民とのつながり、市民にとって安心できる連携を図り、子供の頃からいのちについて考えることの大切さを学ぶ機会を増やしていきたい。
「折れない心」を育てる小澤竹俊先生の「いのちの授業」を、一人でも多くの方に広めていきたいと思います。

最後に、めぐみ在宅クリニック 院長 小澤竹俊先生のFacebook記事より、メッセージを引用させていただきます。


※左から二人目が小澤先生です。

これから皆さんが歩む人生は決して平坦ではありません。どれほど努力をしても、うまくいかないこともあるでしょう。どれほど願っても希望がかなわないこともあるでしょう。なんで私だけこんなに苦しむの?という人もいることでしょう。

どれほど泣いても人生は過去に戻りません。どれほど願っても、失った何かは返ってきません。それでも、前を向いて進むことができるのでしょうか?

答えはイエスです。

たとえ絶望と思える暗闇の中でも希望の光を見つけることができるからです。それは一部の人が起こす奇跡ではなく、私たちすべての人が持つ可能性です。

9月28日記事
(https://www.facebook.com/taketoshi.ozawa/posts/2332870510152222)
より引用

【書籍紹介】
「折れない心を育てる いのちの授業」 小澤竹俊(著)
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