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「看取りの報告書」について発表しました

こんにちは。看護師の川邉綾香です。

11月11日に開催された日本緩和医療学会 第1回関西支部学術集会において、発表を行わせていただきました。

演題は、このブログでもたびたびご紹介している「看取りの報告書」についてです。
今までブログに記載してきた内容と重複する点もありますが、当日の発表内容を記させていただきますので、ぜひお読みください。

「看取りの報告書」で伝える、生きた証 ~最期まで連携する意味~

がんと診断され、治療をしてきた日々。やがて、旅立つ。
看護師として、受け持ち患者様の事を思い続け、最期まで繋がっていたい。病院の看護師にも患者様の生きた証を忘れて欲しくない。
そのような思いを書き記したものが、「看取りの報告書」です。

「看取りの報告書」をお送りする意味
私が病院勤務時代、患者さまが退院、転院をされた後、どのように療養されているのか、外来通院できているのかなど、その後の様子について気になっていました。
主治医にうかがうと「いつ頃亡くなられたよ」と教えていただいたり、ご家族さまが病棟まで挨拶に来てくださり知ることもありました。患者さまのその後を知りたいという気持ちがなければ、日々の業務に追われ、知ることの出来ない環境でもありました。

患者さまが“最期は自宅で”という思いを支援し、病院と同じような医療・療養生活を送ることができるようにするために、退院時の診療情報提供書や看護サマリーがあります。
そして、在宅看護師が看取りの報告書を作成して、最期まで病院と連携を図ることで遺族のグリーフケアが可能となり、また、退院支援に対する看護師の意識改革のひとつに繋がります。

医師同士が報告書で連携しているように、看護師同士も連携し、顔の見える関係を築くために、当クリニックでは、病棟看護師やMSW、退院支援課に宛てて「看取りの報告書」をお送りしています。

「看取りの報告書」には、退院前カンファレンスから関わった患者さまや、かかりつけ窓口を通して紹介のあった外来通院中の患者さまがどのような在宅医療を受け、最期の時間をどのように過ごされたのか。
ご家族さまが看取りをする中での心情の変化や患者様の取り巻く環境など、在宅だからこそ見える視点や、工夫した点、大変だった点など、今後に繋がるような課題を記載しています。

「看取りの報告書~Aさまのこと~」
ここで一例をご紹介させていただきます。
80代男性のAさまは、奥様との二人暮らし。
診断名は浸潤性膀胱癌で、手術施行後種々の治療をするも病状の悪化を認めBSCとなり、症状コントロール目的での入院を勧められるも拒否。
在宅医が必要という事で、当クリニックに紹介となりました。
わずか3週間という短い期間の関わりでしたが、その間の思いをつづりました。

泌尿器外科 ○○ 先生御侍史 、 入退院支援課 ○○ 様 
 
いつもお世話になっております。
X月30日に貴科からご紹介いただいた、Aさまについてご報告させていただきます。
貴科受診された日の夕方に初回訪問を行い、Aさまの入院を拒んでいた理由をお聞きしてみました。
奥さまの体調や足が不自由な事で毎日の見舞いが大変である事を気にされていたこと、今まで痛みがあったが外来まで我慢していた事などをお聞きし、自宅でも病院と同じ医療が受けられ、私達が奥様の支えとなることをお伝えさせていただきました。
X+1月から2日に1回は訪問診療・看護を交互に行い、前胸部~頸部にかけた腫瘤に対しての疼痛および症状のコントロールに努めました。
介入後より、病状の進行と共に、早々に食事摂取量も低下し、臥床時間が延長。『看取りのパンフレット』をご家族さまにお渡し、安心して見守っていただけるようにお伝えしました。その後は比較的穏やかに過ごされ、X+1月19日午後○時○分、最期の時は奥さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
奥さまより、「お父さんはとにかく頑張り屋さんやった。辛かったと思うけど弱音吐かなかった。自宅で最期まで過ごせて本当に良かった。」とのお言葉をいただきました。短い時間でしたが、Aさまやご家族さまの気持ちの支えとなれた事を嬉しく思います。

「看取りの報告書」から得られるもの
「看取りの報告書」を作成することで、私たちは自らの看護の振り返りや死生観を見つめ直す、重要な機会を得ました。また患者様の死を、負の感情ではなく新たなる学びとして得ることができました。
病院看護師からは、、患者さまの退院後の生活イメージや、在宅での患者さまの表情の違いが実感できた、退院後の療養生活を見据えたアセスメントの視点を持てるようになった等の意見をいただきました。

質疑応答
発表後、座長である大阪大学大学院 医学系研究科保健学専攻 荒尾晴惠先生からは「在宅での新しい取り組みに非常に興味が持てた内容でした」とのお言葉をいただきました。

フロアからは、宝塚市民病院緩和ケア病棟師長の岡山さんから、「患者さまが在宅に戻られ自宅で亡くなった後に、病院でその患者さまに関わった方(在宅医、訪問看護師、ケアマネ、他)にデスカンファレンスの実施を検討している。在宅側としてはどのように思いますか?」との質問をいただきました。「看取りの報告書」だけでは伝えきれず、在宅における多職種が参加して個々の意見を交換し合える場があると嬉しい、とお答えさせていただきました。

また芦屋市民病院緩和ケア科部長の松田先生から、「最期を病院で亡くなられた場合、ご紹介いただいた地域の先生方に対して、簡単な報告書になってしまっていた。この発表を聞き、具体的な病院での様子を書いてみたいと思います。」とコメントをいただきました。そういった報告書をいただくことにより、真の顔の見える関係の構築に一歩近づくのではないか、と思います。

“最期は自宅で”を支援するために
在宅には、その患者さまの生きてきた歴史があり、思考があり、希望があります。その周りに私達医療関係者が取り巻いています。
在宅での具体的な支援内容や患者さまの思い、療養生活の様子や最期の姿を病院の医療関係者に報告することで、次への具体的な退院支援が可能となります。
また在宅医療関係者との連携によって、患者さま、ご家族さまの安心した療養生活の保障に繋がります。
そして、その患者さまと関わった医療関係者にとって、最後まで患者様との繋がりを実感できる報告書になっていると、私たちは考えています。

患者さまの“最期は自宅で”という思いを支援し、病院と同じような療養生活が送れるように、より良い方法をみんなで考えていきたい。
急性期病院から在宅での看取りが進む中で、病院が安心して在宅に送り出せる社会を作るため、その第一歩が「看取りの報告書」ではないかと思います。

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