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「退院前カンファレンス」のポイントと大切にしていること

こんにちは。看護師の川邉綾香です。

病院を退院し、在宅医療に入る患者さまの「退院前カンファレンス」に、私たちは在宅医療チーム側として参加しています。
そこで、「退院前カンファレンス」の際に私が注意していること、心がけていることをまとめてみました。

【準備】
・患者、家族の心情
自宅に帰りたいのか?それとも病状が落ち着いたため、病院主導で退院を促されたのか?
中には、在宅療養について詳しく知っていて、それでも病院で1日でも長く過ごしたいと思う方もいらっしゃいます。
そのような場合、転院もひとつの方法でしょう。
転院するよりは在宅療養、といった消極的理由の場合は、在宅療養の良さを少しでも感じてもらえる工夫が必要です。
在宅療養は、病院よりすべてが上回っているわけではありません。しかし、良いところも非常に多くあります。
在宅医療の良いところをご説明することで、患者さまのお気持ちが少しは変わっていただけるのでは、と思います。

・本人の意思、夢
残された時間を、どのように生きようとしているのか?
積極的に帰りたい、自宅療養をしたいと思う方の多くが、何らかの意思を、「将来の夢」をお持ちです。
小澤竹俊先生がおっしゃるように、「死を超えた将来の夢を描くことができる人は、たとえ命が限られたとしても絶望に陥りません。確かな希望を持って、今を穏やかに過ごすことができます。」(『死を前にした人にあなたは何ができますか?』小澤竹俊 著 より)

・情報収集
事前に受け取った診療情報提供書の中身を把握し、熟考することが必要です。
病歴の確認をし、ある程度予測されること、在宅で困ることはないかなど、問題の抽出をしておきます。
内服薬の確認は必須で、可能であれば、減薬してもらう交渉を行います。

【ポイント】
(1)病院スタッフに対して安心感を与える
病院にとって、大切な患者をどのように在宅医療に橋渡しするのかは、とても重要です。
だからこそ、在宅医療側として、病院の主治医が行ってきた医療を尊重し、バトンを引き継ぐことを説明します。
それに加え、在宅医療ならではの24時間365日連絡がつき、対応出来るシステムであることもお話いたします。

(2)患者、家族に最初の安心を与える
患者さまや、家族さまは、退院することで「主治医から見放される」印象を持ってしまうこともあります。
そこで、私たちは主治医から現在の病状について、また今後起こりうることとその対応について、きちんと申し送りをしていただいていることをご説明します。
そして在宅医療がどのようなものであるのかをイメージしていただき、安心感をもっていただけるよう心がけています。

(3)看護だけでなく、介護の面にも目を配る
病院は交代制が確立しているため、昼間・夜間でも治療や介護が行われます。
しかし自宅で介護する場合は、ご家族さまが昼夜逆転生活になったり、睡眠不足になる懸念もあります。
在宅医療を行う上で、ご家族さまや介護スタッフとの連携も重要です。

(4)分かりやすい言葉で、和やかに話す
ご家族も参加される場なので、略語や専門用語を出来るだけ避けて、わかりやすい言葉を使っています。
職種や立場で意見が異なることも当然ありますが、和やかな、お互いを尊重する雰囲気づくりが大切です。

大切にしていること
退院前カンファレンスで関わった方の多くが、「それならば、早々に退院しようかな、いや、今日にでも帰ろうかな」と言ってくださいます。
これは、かわべクリニックがいち早く退院できるように環境を調整し、自宅に戻れて良かったと思ってもらえる提案が出来ているからだと自負しています。では、私たちはどのようなことを調整しているのでしょうか。

たとえば、退院に向けた薬剤の調整がその一つです。投与経路、回数、時間を見直します。
もし点滴が実施されているならば、内服に変更は可能かどうかを確認します。
病院ではしばしば、入眠前に点滴で睡眠導入などを行ないますが、在宅ではなかなか難しいので、内服で調整できれば問題が一つクリアされます。
また1日に3回の解熱剤の点滴投与なども難しいため、他の方法がないかなどの検討が必要です。
患者さまやご家族さまは、点滴を投与されている現在の状況が、在宅でも継続するイメージをお持ちになりますが、これは当然のことです。
しかし、調整を少し行なうだけで、点滴が全く不要となったり、回数が減ったりします。
そうなると、「点滴の調整が可能なら、自宅でも過ごせるのかも」と思えるのです。

そのほかに大切なのは、訪問診察、看護の予定を立てること。患者さまやご家族さまが望まれる回数と、訪問すべき必要な回数の調整です。

退院すると、今までは毎日のように部屋に巡回に来てくれていた医師、看護師が全く来なくなる。
もちろん、次の外来まで診察が不要な方であれば、在宅医療は不要かもしれません。
しかし、病状によっては毎日でも来て欲しいという方もいます。
訪問診療・看護は、医療上必要な回数だけ、お伺いできます。患者さまによっては、それが、毎日のこともあります。
在宅医療は、病院でナースコールを押していたように、医師や看護師といつでも電話がつながって連絡がとれ、必要に応じて往診する。24時間365日、患者さま支えるシステムであることをご説明することで不安が解消され、「家で過ごしてみようか」となります。

カンファレンスの中で、在宅療養のイメージができるような説明をすること。
初回の面談時に患者さまやご家族さまの心をつかみ、安心感を提供することが大切です。

患者さまの状況に合わせた対応を
急性期(がん、心不全などの終末期など)の場合、残された時間が短いからこそ、主治医からの診療情報と本人の状況が合致するのかを自分たちの目で確認することが必要だと、私たちは考えています。
百聞は一見に如かず。退院前カンファレンスでは、何をすべきかを抽出し、病院からの診療情報では書ききれないことを感じることができます。

慢性期(神経難病、認知症など)の場合はすでにケアマネージャーが介入されていることも多く、在宅での療養にあたり、医学的見地から注意すべきことを確認します。
看護より介護の比重が高くなるため、ケアマネージャーからの意見が非常に重要で、退院前カンファレンスは有用で貴重な時間となります。

そして関係者が揃っているこの場で、急変時を含めてどのように過ごしていきたいかなど、初めてのアドバンス・ケア・プランニングを行ないます。

本人・家族は何が知りたいのか
残された時間を委ねることとなる医師や看護師、スタッフとの相性も、在宅医療に踏み出すために重要なことの一つです。
「この人たちに委ねられるか?」と漠然とした疑問や不安が、説明することによってリアルなものになる。そして、「じゃぁ帰ろう」という勇気に変わります。

在宅医が何をしてくれるのか?パラメディカルが何をしてくれるのか?
自宅に戻り、どのように生活をすれば良いのか?

患者さま本人は在宅医療に積極的だけれど、一方で家族は消極的である場合は、患者さまには明るい話を、ご家族さまには今まで病院に委ねていた看護・介護をどのようにすればよいのか、在宅医療チームに委ねられる部分は何なのかをお話します。

またご本人、家族ともに消極的な場合は、「とりあえず、帰って、2週間くらいを過ごしてみませんか?」とご提案します。
そして2週間後に、どうしたいのか改めて意見を聞かせていただきます。
この2週間で、多職種で連携をはかり「このまま家で過ごせそう」と思っていただけるようにするのが在宅チームの腕の見せ所。必要なのは、病院とは違った形の安心をご提供することです。

いかがでしょうか、参考になりましたか?

最後に一つ。
退院前カンファレンスでは、要点を簡潔にするのも大切なことです。
私はついつい長く説明してしまうことがあるので(笑)、貴重な時間を有効に活かしていくことが今後の課題です!

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