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患者さんや家族、地域みんなのために安心な「居場所」を作りたい

3月4日(土)に「第30回布施緩和ケア研修会」が開催されました。

今回は、プログラムの第1部で基調講演をしていただいた建築家の山﨑健太郎先生による『想像力を持って建築をつくる』を拝聴し、私が感じた問題点、そしてこれから医療者が取り組むべきと感じた内容をお伝えします。

 

クリニックでの雑感

 

なぜ「緩和ケア研修会」に建築家が講演?

参加された方の多く、またこの記事を読んでいただいてる方も疑問を持たれたのではないでしょうか。

「あれ?緩和ケア研修会、しかも受講者は在宅医療にかかわる医療従事者が大半なのに、建築家の方がいったい何を話すのだろう」

今回の講師である山﨑健太郎先生は一級建築士で、医療・介護施設の設計を多く手掛けている方という説明があっても、現場にいる医療職とは少し縁遠いのも事実です。

私自身も、建築家が何を語るのか。緩和ケアとの接点は何なのだろうか、強い興味と関心を持って参加しました。

 

緩和ケア病棟の設計秘話をお聞きして

山﨑先生は、権威ある建築賞を多数受賞している一級建築士です(山﨑健太郎デザインワークショップ)。オフィスビルや保育園、住まいなどに加えて、医療機関の設計も多く手掛けていて「緩和ケア病棟 いまここ」(静岡県)でグッドデザイン賞を受賞されています。

山﨑先生が設計したのは緩和ケアを行うためだけの場所ではありません。末期がんの患者さんとご家族のために、大切な人と最期をゆっくり過ごせる住まいとしての場所と定義されていました。

特に樹木の茂った庭と回廊のような空間を配して「病室と廊下しかない普通の病棟」とは一線を画した「居場所」づくりに工夫を凝らしています。

せっかく訪ねてくれた家族や友人が、ゆったりと過ごせるような開放的な回廊空間も特徴的です。

美しく洗練された建築であること以上に、そこで最期を過ごす患者さんが「ここなら安心できる」と思える場所を実現されたそうです。

「いまここ」様の写真を見ていただくと、山﨑先生の意図が少しでも感じられるのでは、と思います。

 

医療・介護従事者の「常識」は本当に常識か

常日頃から感じているのは、私たち医療・介護従事者は、どうしても門戸を閉ざしがちで、同じ景色を観るもの同士で語り合って完結してしまう傾向にあります。狭い環境にいることにすら気づかず、俯瞰的に物事を見られないため、結果的に自分たちが世間一般の感覚から取り残されているようにも感じます。

これはあえて一歩踏み出して、医療・介護に直接従事されていない方たちと会話をすると顕著に感じられることです。

自分たちの常識は、世間の非常識になっていないでしょうか。今回の山﨑先生の講演は、そんな問いを改めて自分に問いかけるよいきっかけともなりました。

そして何よりも建築家の手によって生み出される空間や建物の持つ意味や力を感じ、こころの状態も変化するという発見が得られました。

私たちは「場所」に支えられて生きている

この現代社会において「黄昏られる場所」「ぼんやりと自分と向き合える場所」「こころが落ち着く場所」を思い浮かべられるでしょうか。

昭和の頃までは、地域みんなで社会を作り、互いに支えていたなどと言われます。しかし今はどうでしょうか。

山﨑先生は、自身の生み出す建築を通して、本来あったはずの「場所」の大切さを伝えているのだと、私は感じました。

山﨑先生は問いかけます。
「自分を支えてくれる場所がなくなってはいませんか?」
「人と人との交わり、コミュニケーションが希薄になっていませんか?」

人が安心して生きていくには「ここにいるだけでいいよ」と言ってもらえる「居場所」の重要性を提案されます。

安心感は、人生の最終段階を迎えた方だけでなく、誰にでも必要なはずです。しかし、安心感ある居場所の多くを失ったまま生きる私たちに必要な「空間のあり方」について問われた気がします。

「古き良き時代に戻る」と言うのは簡単ですがなかなか実現は難しいもの。それでも、現在の場所をみんなが求める「居場所」に変えていく方法を探したい、考えたいと思いました。

 

みんなで「強み」を持ち寄れば「居場所」は作れる

各々の「強み」を活かすことで、安心できる「居場所(空間)」は取り戻せるのではないかと、私は考えています。

ゼロから新しい空間を創り出す必要はありません。公民館や公園など、昔からある古き良き建物を活用する発想です。

建物そのものが大切なのではなく、「居場所」として誰が誰と、どのように使うかが重要です。

・その「居場所」に行けば、いつも誰かがいる。
・会話は必須ではないけれど、話しかければ会話が返ってくる。
・ひとりは嫌だから、一緒にいるけど干渉しない

こんな空間を求める人はきっと多いはずです。

ただ、これを医療・介護や福祉の職種だけで取り組んでも、あくまで医療や介護分野の配慮しかなされず、それ以外の生活の大部分は他人事となってしまうでしょう。

だから、全ての職種が力を合わせるのです。世間話、医療や介護の話、財産の話、ときには葬儀など「縁起でもない話」が繰り広げられても構わない場所。

人生会議を通じて、家族など大切な人に自分の希望を伝える機会を地域全体で進められれば、孤立防止にもつながります。

地域共生社会の第一歩は、ちょっとしたお節介ができる居場所・空間に変えていくこと。

医療・介護も重要ですが、財産や相続、住宅や娯楽、買い物などの日常生活……これらを仕事とする様々な専門家の力を結集すれば、きっと実現は近づくはずです。

居場所づくりの試み、早速はじめています!

居場所をつくるために必要なこと、それはきっかけづくりです。

山﨑先生のお話を聞いた方は、誰もが「居場所」の重要性に強く共感したはずですが、自ら率先して動き出すことには躊躇するでしょう。

そこで「きっかけ作り」を強みとする「東大阪プロジェクト」が立ち上がりました。
『まちカフェ@東大阪プロジェクト』と題して、高井田地区(東大阪市)でシンボリックな建築物である藤田珈琲さんで職種を問わず参加できるまちカフェを開催しました。

藤田珈琲さんの理念もコーヒーを通じて「笑顔の循環」「コミュニティー」を創り、広げることです。

ふらっと『まちカフェ』に立ち寄ることで、自然といろいろな職種の方と顔の見える関係を築く。訪れる目的は何でもよく、コーヒーを飲んでのんびりしたいだけでも構いません。

こころの安らぎや支えを感じる場所・空間を作ることから始めています。

たくさんの方がまちカフェに参加してくださいました

第1回のまちカフェにも、写真のように多くの方が参加してくださったおかげで、改めて「居場所が大事」だと実感できました。

今後も、各々の「強み」を活かすことで安心できる「居場所(空間)」を実現すべく、「まちカフェ@東大阪プロジェクト」を継続・展開していきます!

次回以降も、多数のご参加をお待ちしております。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます


【地域連携・緩和ケア講演会・第27回 東大阪プロジェクト】

日時:令和4年5月20日(土)18時から20時(17時45分開場)
定員:オンライン 500名
全国から医療や介護にかかわる職種の方はどなたさまでも参加いただけます

今回のテーマは「医療・介護者が作るバリア」
第1部:18時10分~19時
「その人らしさを支える緩和ケアと地域連携」
八尾市立病院 緩和ケアセンター部長 蔵昌宏 先生
八尾市立病院 地域連携室MSW 西麻弥 さん

第2部:19時~19時50分
「こころのバリアフリーを実現する緩和ケアと地域医療」
〜気づいていますか 医療・介護者が作るバリア〜
医療法人綾正会かわべクリニック 看護師 川邉綾香

【申し込み】
https://88auto.biz/higashiosaka/registp/entryform30.htm

\\こんな方の参加をお待ちしています//

・穏やかな緩和ケアを行いたいけれど、なかなか実現できない
・多職種間での情報連携が難しくもどかしい思いをしている
・私たちが取り組んでいる緩和ケアは、正しいのだろうか?

初めての方もお気軽にご参加ください。明日からのお仕事に何か役立つはずです。

緩和ケア講習会のご案内

クリックすると拡大表示されます

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