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悲しみに寄り添う【がん遺族サロン】立ち上げへの決意

がん遺族サロンを立ち上げたい

かわべクリニックでは、これまで患者さんが亡くなられたあと、四十九日と1年が経過したころに「グリーフカード」をご家族にお送りしてきました。
グリーフケア(悲嘆ケア・遺族ケア)といって、患者さんご自身と同じく支えてこられたご家族や友人のケアにも注力したいという思いからです。

「東大阪プロジェクト」でも、悲しみを吐露して、共有できる居場所づくりのために、今秋にがん遺族サロンを立ち上げたいと準備を進めています。

『グリーフと遺族支援のいろは2023』に参加しています

がん遺族サロンを開催するには、私たちの知識を整理し、深める必要があると考えて『グリーフと遺族支援のいろは2023』に参加しています。

講義ももちろんですが、受講生のためのオンラインサロン(受講生限定の交流会)も学びの場として重宝させていただいています。

グリーフと遺族支援のいろは2023
主催:関西学院大学 悲嘆と死別の研究センター
全7回シリーズ、2023年7月~2024年1月に月1回開催
講義…1日につき90分×2コマ オンラインサロン…1日90分

また、グリーフケア セラピスト森田藍子さんが主催する「Gift of Love」の研修にも参加予定です。
こうした学びや交流を土台として、方向性を定め、がん遺族サロンを運営していきたいと考えています。

看護師は「深い悲しみ」に直面する職業

大切な人を失うという経験は、看護師として私たちが直面する現実です。

2021年の厚生労働省の「人口動態統計」によれば、日本での年間死者数は約127万人。この数字には、疾病や老衰、事故、自然災害などによる死者が含まれています。がんによる死者は38万1497人であり、全死因の26.5%を占めています。

言い換えれば、4人に1人ががんで亡くなっています。どのような死因であれ、悲しみは一般的に共通の性質を持つと考えられています。死別は深い喪失感や悲嘆を引き起こし、個人の感情や経験に大きな影響を与えることがあります。

厚生労働省は、喪失や悲しみに直面している方々が適切な支援を受けられるよう、心理的なカウンセリングやサポートグループの重要性を認識し、喪失を経験した方々への支援に関するガイドラインや情報を提供しています。

私たち看護師も、そのサポート体制を通じて患者様とその家族が喪失の痛みを乗り越える手助けをする使命を担っています。

悲しみを学ぼうと決意したきっかけ

私は在宅訪問診療の看護師として、これまで8年間で約600人の患者さんの看取りに携わってきました。グリーフケアに関連するニーズはおよそ4倍に上るとされています。亡くなる方は1人でも、死を悲しむ方はもっと大勢いるということです。

がん遺族のニーズは多岐にわたり、潜在的なニーズも考慮すべきと考えています。そのため、遺族のニーズに適したケアを提供するには、グリーフケアの幅広いアプローチが必要です。

しかし遺族支援に関する取り組みは、ケアの重要性は認識されながらも、まだまだ充分ではないとも感じます。これが、私にとって最も大きな課題でした。

東大阪にもがん遺族サロンを立ち上げるにあたり、『I for you Japan』のサロンに参加し、視察や聴講を通じて学んだこと。そして、今回改めてグリーフケアの基本を学び直すことで、知識と実践の両面で遺族ケアを提供したいと考えました。

穏やかになれる「いばしょ」そんな場所を作りたい~I for You Japanがん遺族の集いin箕面に参加して~

現時点で学んだこと・伝えたいこと

がん遺族サロンの立ち上げに向けて、死別後も個別のニーズを考慮した家族ケアを続けるアプローチについて、現時点での学びを含めた今の思いを述べてみます。

  • 悲嘆は個人によって異なるもの
  • 悲嘆は時間が経つにつれて状態が変化する
  • 悲しみの「波の大きさ」も人それぞれ
  • 遺族へのケアは患者の死後に始まるのではない
  • 何よりも、支えが大切

遺族ケアは本人が存命のうちから始まる

このなかでも特にお伝えしたいのは、「本人が存命なときから、遺族ケア・グリーフケアは始まっている」ということです。
患者さんへのケアについて、患者さんと肯定的に評価し、家族とも、提供したケアや患者さんの反応を肯定することが大切なのです。

本人にとって最善の方法、最善と思える方法を選択して、ケアしたとします。
ケアする側も受ける側も、つらさ、しんどさはあったかもしれません。それでもよかった点についてていねいに評価することが大切です。

家族と一緒に、本人が見せてくれた穏やかな表情や聞かせてくれた言葉を、肯定的に評価するのです。
亡くなったあと「あのとき、あれをしてあげればよかった」と思いがちですが、「あのとき、〇〇さん気持ち良さそうだったよね。してあげられてよかった」などと肯定的な言葉で包むことで、亡くなった事実の悲しさは消えなくても、一定の満足感・充実感が得られ、家族の今後の「生」を支てくれると私は考えています。

看護師だからできるグリーフケア

ほかにも、患者さんが家族には直接言えずに、看護師である私に言葉を伝えれくれる場面があります。

患者さんが死を悟ったときにあるもので、訪問先からの帰り際、患者さんの代わりに家族へ言葉を伝えたり、亡くなったあとに代弁して差し上げることがあります。
これも、大切なグリーフケアの形だと思います。そのためにも、看護師には患者さんの言葉を聴き漏らさず、大切な人へとつなぐ役割も担っています。

悲しみを支える場所を存続させたい

身近に気にかけてくれる人がいるだけで、それは大きな支えになります。
「悲しみは消えることはない」と言われる通り、だからこそ、『悲しみ』を含む『生』を支えるグリーフケアが重要なのです。

医療・介護関係者には「何が正しいか」を示す倫理綱領がありますが、遺族会には存在しません。だから「答え」が見当たらずに悲しみに暮れたまま悩んでしまうことがあります。だからこそ、基本的なルールを設けることで看護師たちが責任を果たすことが重要です。

また医療者のグリーフケアの視点も欠かせません。ご家族の悲しみを受け入れつつ、自分自身の感情との境界線を守る方法もまた重要なのです。
境界線は感情、財政、責任、性的なこと、そして時間に関しても確立されているべきだと考えます。

さまざまな遺族会同士の連携も大切です。場を提供する責任、その場を守る責任を共有するとともに、遺族会での後継者の育成も課題となりえます。これにより遺族会同士のつながりが継続し、「悲しみを共有しながら支えを受ける」大切な場を守り続けることにもつながるためです。

いつまでサロンが必要か、どのタイミングでサロンを頼りたくなるかはさまざまです。将来を見越せば、誰もが遺族となる可能性もあります。必要になったときにいつでもサロンでつながりや安らぎを得られるように、5年後、10年後といった長いスパンで存在し続けなくてはなりません。常に「その場」があり続けること、提供し続けられることが求められていると強く感じます。

私たちも東大阪で、持続可能かつ支えになる居場所を提供するため、理想的ながん遺族サロンの形を定めて模索していきたいと思います。

【今週の東大阪プロジェクト】

東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>ぜひご参加ください<<

【縁起でもない話をしよう会・第29回(参加費無料)】
アドバンスケアプランニング研修会のご案内です
ご興味をお持ちの方は、是非ご登録ください!
(先着90名となっています、お早めに!)

話題提供:
ビリーブメントカンファレンスの取り組み
講師:鉾立優作さん

後半は、話題提供を受けての語り合いの時間です。
5名程度のグループとなり、自由に縁起でもない話をしていただけます。

日時:令和5年8月24日(木)
18時30分から20時
場所:オンライン(Zoom)
定員:90名程度
参加費:無料


こちらから拡大表示できます(PDFファイルが開きます)

 

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