看護師特定行為研修について
今回は、これから各地での在宅医療を支えるためには、看護師のこれまで以上の活躍が不可欠だと考えています。そのカギを握るひとつが「看護師特定行為」の浸透です。
厚生労働省が2015年に創設した制度で、看護師が医師の判断を待たずに、手順書に基づいて一定の医療行為(=特定行為)を実施できるようになるための研修です。
といった課題に対応するため、看護師の専門性を活かした質の高い医療の提供を目的としています。
気管カニューレや胃ろうカテーテルの交換、褥瘡の壊死組織除去、人工呼吸器の設定変更など特定行為は、21区分38行為が定められています。
特定行為研修修了者は全国で1万名を超え、増加はしているものの、もともと厚生労働省が「2025年までに10万人の特定看護師養成」と掲げていた目標には及びません。
私自身、2024年に大阪府医師会の「地域標準手順書普及等推進委員会」(在宅医療等の推進)の委員を務めさせていただいたことで、この制度について深く知る機会を得ました。
委員会では、特定行為研修修了者である大阪府訪問看護ステーション協会会長の長濱あかしさんをはじめ、病院や訪問看護ステーションの最前線で活躍されている特定看護師の皆さんの熱い想いと実践を目の当たりにしました。その姿に感銘を受けながら、「地域標準手順書」の作成に取り組み、2月には大阪府医師会館で開催された「手順書活用促進シンポジウム」での総合討論にも参加させていただきました。
そこで注目されているのが、多くの訪問看護師が特定行為研修を受講し、特定行為研修修了者が円滑に特定行為を実施できる体制の構築です。郡市区医師会などが地域標準手順書普及等推進委員会を設置し、地域の実情に応じた標準的な手順書例の調整や周知・広報を行うことで、この新しい医療体制の基盤を築いています。
私たちが作成した「特定行為に係る地域標準手順書」は、大阪府医師会のホームページからダウンロードできますので、ぜひご活用ください。
ここからが私の本当にお伝えしたい部分です。
「在宅医療の要は看護師」であるという考えは、クリニックを開業した当初から一貫して持ち続けているもので、年を重ねるごとにその確信は深まっています。
しかし、現実を見つめると課題も見えてきます。訪問看護の現場では、病院と比べて学習機会が限られているのが実態で、継続的に学び続けている看護師の数も、十分とは言えないかもしれません。
そんな中で、特定看護師がもっと広く普及し、在宅医療の現場で活躍するようになれば、きっとより良い社会を実現できるのではないか。そう考えるようになりました。
在宅領域で特に必要とされる特定行為を「在宅パッケージ」として、21区分・38行為の中から研修機関ごとに特定の行為を組み合わせた研修が提供されています。
大阪府看護協会の研修内容を例に挙げると、以下のような構成です。
共通科目(e-ラーニング/集合研修・250時間)
区分別科目(5項目・85時間)
これらの内容を1年間かけて学びます。
研修受講にあたっての費用は。大阪府看護協会を参考にすると、
などとなっています。詳細については、2025年度募集要項をご確認ください。
在宅領域において必要とされる特定行為を「在宅パッケージ」として、21区分・38行為の中から研修機関ごとに特定の行為を組み合わせた研修が提供されています。在宅パッケージに含まれる特定行為は次のようなものが中心です。大阪府看護協会がされているものを参考にあげておきます。
「病院ではなく、クリニックや訪問看護ステーションに勤務している看護師でも、この特定行為研修を受講し、資格を取得できるのだろうか?」
この疑問を解決すべく、川邉綾香さんが2025年度看護師特定行為研修に挑戦することになりました。
7月末までに、共通科目(250時間)と区分別科目(85時間)の座学をe-ラーニングと集合形式で修了予定です。全ての講義・演習・観察評価・実技試験(OSCE)に合格後、8月からは臨地実習が始まります。
臨地実習は、受講者の所属施設で実施することが原則となっています。この実習の様子や成果については、次回のブログで詳しくレポートさせていただく予定です。
在宅医療の質の向上と、地域医療の未来を支える特定看護師の育成。この取り組みが、多くの患者さんとそのご家族により良い医療を提供することにつながると確信しています。
綾香さんの研修の進捗とともに、特定行為研修の実際の様子をお伝えしていきますので、ぜひ次回もお楽しみに。
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