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「ここにてもいいなら…」多職種でかなえた最期の安心【看取りの報告書・BZさまのこと】

かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間をどのように過ごされたかを「看取りの報告書」としてまとめています。担当看護師の記録とともに人生の最終段階についてともに考える機会にしていただけたらと思います。

ご本人が静かに口にした「ここにいてもいいなら、ここにいたい」

病院への看取りの報告書

ご紹介いただきました、BZさまについてご報告させていただきます。

夏頃までは身体症状に変化はなく、ご自宅から行きつけの食堂まで自転車で出かけて食事をするなど、おひとりの時間を楽しむ余裕がある生活をお過ごしでした。私たちもご自身の時間を尊重し、月2回の診察で経過観察としていました。

緩やかながらも体調が下降傾向となり始めた頃、訪問を心待ちにしてくださっている様子を見て、訪問回数を増やすことを提案しましたが「そんなに心配してもらわなくても大丈夫や」と笑いながら遠慮される様子が印象に残っています。

当院とのお付き合いが3年を迎えようとする頃に、黄疸とるい痩(体重が著しく減少し痩せた状態)が増悪されます。そこで、改めて毎日の医療者の訪問を提案すると「よろしく頼むわ」と仰いました。

当初、病院を最終療養先とするご意向でしたが、体調の悪化を自覚された時、改めて確認すると「ここにいてもいいなら、ここにいたい」とお話しくださいました。

この言葉を受けて、妹さまに状況を説明したところ、妹さまの訪問回数が増えました。また、自宅などの資産整理についても私たちが相談を受けたため、司法書士への依頼もお手伝いしました。

そして介護体制と遺産整理も整い始めた最中、安らかに永眠されました。

介入当初から口数が決して多い方ではありませんでしたが、3年もの月日の間で、私たちを家族に近い存在として受け入れてくださったように感じております。

独居であり、最期の時を過ごすことに全くの不安がなかったとは言い難い中、入院を受け入れてくださる貴院の存在はBZさまにとっての安心となっていました。ありがとうございました。今後ともよろしくお願いいたします。

多職種連携と生活支援がもたらす安心

BZさまの療養生活は、医療的な支援に加えて、生活面の安心を整える多職種連携の力が大きな役割を果たしていました。

当初は病院での最期を考えておられたBZさまですが、体調の変化とともに語られた「ここにいたい」っという言葉は、私たちにとって大きな意味を持ちました。

在宅医療において関わりが3年に及ぶことは多くはありません。異例とも言える長いおつきあいの中で、単なる医療提供者ではなく、BZさまの生活の一部として私たちを受け入れてくださったのだと思います。だからこそ、最期の場所として「できれば、ここ」。つまりご自宅を選んでくださったのではないでしょうか。

生活の不安を取り除く支援

終末期には「身体の不安」と同じくらい「生活の不安」が重くのしかかります。BZさまの場合、残される自宅や資産の整理という現実的な課題がありました。

研究によると、在宅緩和ケアにおいて多職種が協働することで、患者・家族の心理的負担が軽減し、在宅看取りの実現率が高まることが示されています(Morita et al., J Clin Oncol. 2004)。 また厚生労働省のガイドライン(2018)でも、人生の最終段階における医療・ケアでは法的・社会的課題も含めた包括的な支援が求められています。

今回は、司法書士が加わることで、医療の枠を超えた安心感を得ることができました。妹さまの訪問も増え、ご自宅での生活を支える環境が整っていきました。これは家族とともに、医師・看護師・司法書士といった多職種が協力し合い、介護体制と生活支援の両輪でご本人を支えた結果です。

バックアップ体制という安心

そして、入院を受け入れてくれた病院の存在、これも本当に重要なポイントでした。

「いざ、困ったときには入院できる」という後ろ盾があることで、逆説的に「家にいたい」という希望を叶えることができたのです。この病院の存在がもたらす安心感が、BZさまと妹さまの決断を支えたと感じています。

医療の力は大きい、でも医療だけでは足りない

BZさまの看取りを通じて学んだのは、終末期ケアは医療だけで完結しないということです。生活や将来への不安を取り除き、家族と本人が安心して過ごせるよう、多職種が連携することの大切さを改めて実感しました。

「ここにいてもいいなら、ここにいたい」という言葉は、BZさまの心からの願いであり、同時に支援者全員にとっての大きな励ましでした。 これからも私たちは、医療・介護・法的支援を含めた地域のネットワークを活かし、一人ひとりの患者さまが自分らしい最期を迎えられるよう尽力してまいります。

「自宅で過ごしたい」と望まれる方は少なくありません。しかし、その願いを叶えるには、医療者だけでなく介護職、行政、法律・福祉の専門職など、地域全体の支えが欠かせません。

地域包括ケアは「誰かがひとりで背負う」のではなく、医療・介護・法律・福祉・地域住民が手を取り合って成り立つ仕組みです。 もし「将来が不安」「家で過ごしたいけれどどうしたらいいかわからない」と感じている方がいらっしゃれば、どうか一人で抱え込まず、身近な医療機関や地域包括支援センターにご相談ください。

私たちは、地域の皆さまと共に「安心して最期を迎えられるまち」をつくっていきたいと願っています。

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