残された時間と向き合う【グリーフカードに込めた想い・第2回】
ケアが必要となるのは患者さんご本人の身体や痛みについてだけではありません。大切な人を失ったご家族の喪失感が長く続くことは決して少なくないのです。かわべクリニックでは、こうしたご家族に対するグリーフケアにも力を入れています。

かわべクリニックでは、看取りのあとも“つながりの医療”を大切にしています。旅立ちから49日、そして1年――ご家族の心に少しずつ変化が訪れるその節目に、私たちは「グリーフカード」をお送りしています。
すぐにお返事をくださる方もいれば、1年経ってから、初めて言葉を返してくださる方もいます。それぞれの時間の流れがあり「時が解決する」という単純なものではありません。だからこそ、早い段階から心に寄り添うグリーフケアが大切だと、私たちは考えています。

グリーフカードをお送りしたKさまのご家族から、1年目に届いたお返事をご紹介します。
文面からは、深い悲しみとともに、静かに前を向こうとする決意が伝わってきます。「ありがとう」という言葉の奥には、大切な時間を共に過ごした温かい記憶を感じました。
Kさまは55歳という若さで旅立たれました。小学生の子どもを2人残すことには、無念もあったことでしょう。それでも最後まで「生ききる力」に満ちていた方だったことを今でもはっきりと覚えています。
体調が優れない日も「子どもたちにテニスを教えたい」と、ご家族に支えられながらコートに立たれていました。その背中には、父親としての優しさと誇り、まだ伝えたい想いが宿っていることを感じずにはいられませんでした。
ご家族の心の中に、Kさまの懸命な姿は今も息づいています。Kさまが残した“生ききる力”が、
ご家族のこれからの人生を照らしてくれることを、心から願っています。
そして、ご家族が一歩でも前に進まれることを祈ってやみません。

グリーフカードは、悲しみを思い出させる手紙ではなく、“つながりをもう一度感じるための手紙”です。
ご家族にとっては、想いを言葉にするきっかけになり、私たち医療者には、あの日の時間をもう一度見つめる機会になるのです。
悲しみは時間の経過とともに和らぐのではなく、寄り添う人によって和らいでいくのでしょう。グリーフカードを送るたびに、悲しみとは「乗り越える」のではなく、少しずつ「受け容れていく」ものではないかと感じます。
旅立った方との時間も大切ながら、残った人はこれからの時間も前を向いて生きていくものです。だからこそ、かわべクリニックは、これからも早期からのグリーフケアを通して、“別れの先にも温もりが残る医療”を届けていきます。
かわべクリニックでは、私たちの理念に共鳴し、一緒に働く仲間を募集しています。ぜひ募集要項をご覧ください!
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