• かわべクリニック
    • 在宅療養支援診療所

      医療法人綾正会かわべクリニック

      内科・緩和ケア内科・呼吸器内科

  • 〒577-0843 東大阪市荒川3丁目5番6号 MMビル203

    TEL : 06-4309-8119FAX:06-4309-8118

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【看取りの報告書】AYさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AYさまのこと
~帰りたいと思った時が退院する時!~
希望は早めにキャッチして、安全に自宅へ

いつもお世話になっております。AY様についてご報告させていただきます。
受け手である私たちも驚く、急な娘さまからの退院希望にも関わらず、詳細な診療情報提供書及び看護サマリーを作成していただき、ありがとうございました。

夕方17時に自宅に戻られたAYさまは、自宅に戻った認識はあるものの、せん妄状態は変わらず。
トイレに行きたい衝動を抑えられず、日に何度も何度も、娘さまとお婿さまの力を借りてトイレ移動をされました。
退院した日の夜は比較的穏やかでしたが、翌日は昼夜問わず、熱せん妄および終末期せん妄状態でした。
その姿をみて、娘さまは、「穏やかな父の姿であれば孫に会わせたいけど、今の状態だと怖がると思う。本当に連れて帰って来てよかったのか」という思いに苦しんでおられました。

少しずつ鎮静レベルを上げ始め、仙骨部の処置も娘さまと行い、AYさまの苦痛の原因について、一緒に向き合っていただきました。
そして、徐々に意識レベルが低下していく中で、穏やかに眠っているAYさまのベッド周囲には、お孫さまが作った鶴や似顔絵が飾られるなど、変化が見られました。

そして退院して5日目、お孫さまを含めご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
当クリニックは「帰りたいと思った時が帰るとき」、この気持ちを大切に、医療を行っています。
この度は、ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。                                  

[ケアを振り返って]
新型コロナウイルス感染症は未だ終息する気配はありません。
未だに、医療体制に多大な影響を及ぼしています。

このコロナ禍において改めて感じたことは、選べる自由、つまり選択肢が狭くなったということ。
「最期を病院で過ごす」ことを選ぶことにより、大切な家族、友人と会えない日々が続いてしまう…。
家だと医療面で不安だけど家の方が良いのか…といった、苦渋の選択となることもあります。

私たちは、コロナ禍となる前から、在宅療養を選ばざるを得ない、消極的な選択肢として在宅医療を選ばれた患者さま、家族さまに、後悔の念を抱かせず、最期までご自宅で穏やかに過ごせるように配慮をしてきました。
コロナ禍となってもその気持ちは変わりません。

だから、コロナ禍となり、「一時的にご自宅で、最期は病院で」と考えていた患者さまでも、「最期までこのまま自宅で過ごしたい」と思っていただけるケースが多くあるのだと感じています。

何より、苦しみがありながらも、家で最期まで穏やかに過ごせる満足感、安心感があるのは、多職種連携がきちんとなされているからでしょう。

このケースは、
『土曜日の昼下がり。定期訪問を終え、残務整理をしていたところ、クリニックに一本の電話がかかってきた』ところから始まります。

娘さまより、
「初めまして、今よろしいですか?
父が、A病院で白血病の治療中なのですが、コロナの影響で面会制限があり、ほとんど会いに行けていません。
大きな変化があると主治医から電話で病状説明があり、先週の時点では抗癌剤をしたいと説明を受けていました。
それが、さっき病院から電話があって、病状が変化した。痛みとせん妄がひどくなり、麻薬の量を増やしたら、もう二度と意識が戻らない可能性がある。
命があと数日かもしれないとも言われました。
面会制限があるので、孫を病院に連れて行くこともできないないし…。
父と電話で話をしたら『今までありがとうな』と言われた(号泣)。
私は孫に会わせたい。生きている間に連れて帰りたい。
無理でしょうか?」
と悲痛な叫びでした。

さぁ、いかがでしょうか?

娘さまのお気持ちはわかる。しかし、紹介状もなく、急な依頼。
さすがに難しいかもと思うところですが、「無理でしょうか?」と言われると、無理とも言いにくい…。
状況として、明らかに準備が整っておらず、安全に帰宅することすら難しい。

コロナの影響はここまで来ているのか。
終末期の患者さまでさえ、面会が制限されているのか…と感じました。

幸いなことに、この日は病院主治医が出勤されており、家族の電話対応にも応じてもらえました。
何よりありがたいことに、主治医が家族の想いに応えるべく「紹介状(診療情報提供書)」を作成してくださることに。
感謝でしかありません。

娘さまの依頼電話から1時間が経った頃、紹介状がFAXで届き、同時に病院主治医よりクリニック医師に対して電話での情報提供もありました。

私たちは、家族さまに病状を含め、電話で説明。
改めて、患者さまを自宅に連れて帰る気持ちの強さを知りました。

そこで、クリニックの理念でもある、患者さま、ご家族さまの気持ち「最期は自宅で」「自宅に帰りたいと思った時が退院するとき」という希望をかなえるため、少しでも役立てればと動き出すこととなりました。

ここで、日頃からの連携の力、在宅医療・介護の連携の力を発揮!
1)在宅酸素機器メーカーに在宅酸素の手配を行う(自宅と病院に酸素ボンベの配置)
2)訪問薬剤管理が可能な薬局に休日調剤が可能であるか、麻薬の在庫があるかを確認
3)クリニックにある持続皮下注射の器械(テルヒュージョンポンプ)が出払っていたため、医療機器会社に依頼し、特別に病院から週末だけ借りて帰ることに。
4)ケアマネージャーに介護タクシーの手配を依頼

どのような状況であったとしても、私たちは人生の最終段階にある方の支えとなることが求められています。
私たちに出来ることは、その人の苦しみをキャッチして、支えとなり、「選ぶことの出来る自由」を叶えることです。

今回の場合は、突如として、最期の時をどのように過ごすのか選択を迫られた家族。
人は迷うもの。正しい答えもない。
共に話し合い、ACP(人生会議)を何度も行い支え続けることが必要です。

日頃から顔の見える関係を築き、お互いの得意分野を知り活かし、どんなネットワークがあるのか、情報共有することが大切です。
そして、何よりもご家族さまが
『家の力を信じる!』
『自宅に連れて帰りたい』
と選んだことを後悔されないように、全力で、在宅医療・介護がチーム一丸となって支えることが必要であると考えます。
チーム一丸となってはじめて、苦しむ人の支えになることができます。

これからもひとつの施設で抱え込むことなく、顔の見える関係を築き、各々の強みを活かせる多職種連携を行なっていきたいと思います。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【地域連携】 豊かに生ききる 看取りの報告書
私たちは今、「なんのために生きていますか?誰のために生きていますか?」そんなことを問いながら、人生の最終段階の方が穏やかなエンディングになるように心を込めたケアをしていきたいと思います。

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【看取りの報告書 バックナンバー】
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東大阪プロジェクトの動き~上半期の振り返りと今後の予定~

こんにちは。医師の川邉正和です。
平素より、ブログをご覧いただきありがとうございます。

こちらのブログも気がつけば、201回目の記事になります。
毎週水曜日、概ね欠かすことなく書き続けられたのも、皆さんからの熱いメッセージのおかげです。
本当にありがとうございます。

記念すべき?201回目の今回は、私のライフワークでもある『東大阪プロジェクト』の進捗状況についてお話しさせていただきます。

先日、東大阪プロジェクトメンバーで上半期の振り返りを行いました。
コロナ禍のため集まることは叶わず、オンラインでの開催。
北は北海道から参画してくださるメンバーがいるので、実際のところはオンラインが便利なのですが…。

今回の振り返りの議題は下記の通り。

■地域連携×がくちょ(6月11日開催) 振り返り

座長 田中宏幸さん:事後アンケートを紐解くと、がくちょ(仲山進也さん)の講演が参加者の心に響いていることがわかった。
焚き火、湿った薪など、今後の方向性を示す具体的な話もあり、心に着いた火・火種を第2回に活かしていきたい。
司会 松家まゆみさん:グループワークが少人数で話しやすく、時間的にゆっくりと話せ、各グループがうまくまとめられていた。
その他:とても楽しい時間で、次の日から役に立つ、幅広い知識の習得になった。グループワークでは、職種を問わず、フラットに話ができており、この関係性を維持していければと思う。
などなど

[次回に向けて]
今回、集えた方々に空気(酸素)を送り続けていくためにも何らかのコミュニティを作っていく必要がある。
東大阪市在住、在勤の方の参加を促していく。
地域包括支援センターが鍵となって、うまく運営されている地域(東京都府中市)から学んでみる。

第2回地域連携×東大阪プロジェクトは、10月15日(土)18時からを予定しています。
詳細が決まりましたらすぐに告知させていただきますので、少々お待ちください。

■東大阪プロジェクト(上半期)活動の振り返り

こちらは、以前のブログを参照ください
https://www.kawabe.clinic/wp/2022/06/23/01-195/

■福島区の在宅医療を考える会(福島区医師会主催)・東大阪プロジェクト共催について

本当に多くの方が、東大阪プロジェクトの取り組みを温かく見守ってくださっています。
そんな支援者のおひとりである塚本雅子先生(サギス中クリニック院長・大阪市福島区)より、東大阪プロジェクトの取り組みの紹介を兼ねて、アドバンス・ケア・プランニング研修会のご依頼を受けました。
*福島区医師会では、2007年より福島区医師会・松下正幸理事を世話人代表として「福島区の在宅医療を考える会」として多職種連携の会を開催されています。

10月に開催予定の「地域連携×東大阪プロジェクト」を福島区バージョンとして、共催させていただく方針となりました。
医療職、介護職、福祉職といった職種の垣根をなくし、まずはお互いが聴く耳を持てるような研修会となるように計画を進めています。
こちらも詳細が決まりましたら、ブログでご報告させていただきます。

■東大阪プロジェクト YouTubeについて

現在、毎週木曜日18時に配信。
登録者は600名ほど(毎月50名ずつ増加)。
2021年11月から毎週投稿を開始し、2022年7月28日に68本目を投稿。
テーマは大きく4つ
・できる看護師を目指すあなたに
・東大阪プロジェクト
・エンドオブライフ・ケア
・縁起でもない話をしよう会

先日、福村雄一代表が語った『東大阪プロジェクトとは?!』を改めて共有し、YouTubeに登録いただいている方の知りたい情報にプロジェクトメンバーの想いを乗せて配信していくことを確認。


https://www.youtube.com/watch?v=c9_CFMgTEbE

参考までに、YouTube動画は…
・スライド
・グリーンバックで台本を読み上げて撮影
この二つを合成し、出来上がり!
動画編集にかなり慣れてきたこともあり、非常に簡単です!

■東大阪プロジェクト メルマガについて

現在、毎週月曜日12時(時々17時)に配信。
登録者は1850名ほど。
2021年7月6日から開始し、2022年8月1日にvol.54を配信。
開始当初は、福村代表、北村大治さん、川邉正和の3名が担当していましたが、現在は6名の仲間が加わり、9名体制で担当しています。
内容は、東大阪プロジェクトの活動、各々のメンバーの活動、東大阪に関する情報などがメインの記事。最後に、講演会・研修会の案内、アーカイブ配信としてのYouTube動画などを付けています。

こちらも記事作成メンバーを増員することで方針が一致。
現在は開封率が60%程度もあり、喜んでいただけていると自負しています。
今後メルマガがさらに充実しますので、楽しみにお待ちください。

■東大阪プロジェクト オンラインサロン(案)について

こちらは、原則、東大阪プロジェクトメンバーのみの会になります。
(ただし、東大阪プロジェクトに興味があり、推薦者が同席であればゲスト参加可?!)

[オンラインサロンとは?]
「毎月1回、この時間でバーを貸し切っているので、時間ある人はお気軽に顔出ししてね〜」というイメージです。
振り返りの会だけでは話しきれないことを共有し、雑談から面白い企画や支援を生み出していこう!という意図があります。

メンバー同士が、心についた火(焚き火)を燃やし続けるために必要なものは、きちんと風(酸素)を送り続けること。
どのような会でも盛り上がり続けるために必要な風(酸素)はコミュニケーション。
コミュニケーションをいかに多く取るかが大切。

東大阪プロジェクトに興味・関心がある方。
プロジェクトメンバーからの推薦があれば、ゲスト参加可としています。
10月に開催します「第2回地域連携×東大阪プロジェクト」にご参加いただければ、プロジェクトメンバーと接点を持つことができます。
まずは、研修会・講演会からご参加ください!

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

【地域連携緩和ケア(東大阪PJ)(参加費無料)】
下記の通り講演会を開催します。
医療・介護に関わる職種の方でご興味をお持ちの方は、是非ご登録ください!

【お申し込み】
https://bit.ly/3S1F3Ux

地域連携緩和ケア講演会(第20回東大阪PJ)
今回は「栄養」をテーマに『地域連携』と『緩和ケア』。
地域制限はありません。
お気軽に申し込みください!

基調講演:18:00から
『がん緩和ケアに必要な栄養療法〜急性期病院から地域へ〜』
松山 仁 先生(市立東大阪医療センター消化器外科)
ディスカッション:19:00から
『緩和ケアに必要な地域連携〜それぞれの専門性を活かして〜』
川邉 綾香 先生(かわべクリニック)
北野 英子 先生(東光第一薬局)
西田 寛子 先生(ほっとステーション東大阪)


※クリックすると拡大表示されます。

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取材・雑誌掲載(「TKC医業経営情報」)されました

先日、「多職種連携で患者さんに穏やかさをもたらす 在宅医療における栄養ケアの重要性」をテーマに、病院・診療所の経営改善と新規開業の支援活動の一環として、月刊誌「TKC医業経営情報」さまより取材を受けました。

<注>
TKC全国会、TKC医業・会計システム研究会は、病医院の会計・税務に精通した約1,700名の会員により構成され、現在、全国約2万件の病院・診療所の健全経営を積極的に支援しておられます。
(詳細についてはホームページをご参照ください。https://www.tkc.jp/igyou)
なお、当クリニックの顧問会計事務所はTKC会員会計事務所ではありません。

せっかくなので、ブログでも共有させていただきます。

患者と家族の心に寄り添う在宅医療 「栄養ケア」が持つ本当の意味

在宅医療を専門に手がける、かわべクリニック(東大阪市)。医師ではなく看護師が主体となることで、多職種連携の促進を図っている。在宅訪問栄養管理士による「栄養ケア」では、単に患者の栄養を管理するだけでなく、多面的に患者の療養生活と家族をサポートする。川邉正和院長と看護師の川邉綾香氏に話をうかがった。

病院勤務時代に在宅医療の必要性を強く認識 看護師と医師が組んで開業

──貴院は2015年に開業されたそうですが、どのような想い、経緯があったのでしょうか。

院長 開業を決意したのは、私の想いと、パートナーである綾香さんの想いが重なった結果です。
開業前に勤務していた大阪赤十字病院の呼吸器外科では、がんの手術後に再発した患者さんの抗がん剤治療や疼痛緩和などを行っていました。そのなかで、ある出会いがありました。私が手術を行った患者さんが、再発で抗がん剤治療を行い、数年は効果があったのですが、抗がん剤の効果がなくなり、骨に転移。痛みを注射で抑えながら病院で過ごしていました。
ある日、いつもどおり彼の病室にうかがったときに、彼が痛みも落ち着いているし、最期は家で過ごしたいと話されたのです。私の見立てでは彼の残り時間は2週間ほどだったので、急いで病院の地域連携室に在宅支援診療所を探してもらいました。しかし、病院で使っていた痛み止めの注射を扱える開業医が見つからないなどの理由で、結局、退院できたのはそれから10日ほど過ぎた頃。その間にがんはさらに進行し、自分で動くことが難しい状態になっていた。そして、在宅に戻られて3日後に永眠されたのです。
そのときに思ったのが、もっと早く希望どおりに自宅に帰ることはできなかったのかということです。同時に、私が地域の在宅医になればよいのではないかと思い浮かびました。そのいきさつをパートナーの綾香さんに話したところ、彼女も同じ頃、在宅について考えることがあったそうです。

綾香氏 私も大阪赤十字病院に10年間勤め、最初の6年間は内科と外科の混合病棟に勤務していました。そこではがんの診断から、手術や抗がん剤治療、放射線治療などの繰り返し、最期はお看取りまでといった、一連の流れを行っていました。そうしたなかで緩和ケアに興味を持ち始めた頃に、救急外来に異動になりました。そこでは心のケアと言うよりも、1分1秒を争い、命を救うことが第一でした。
一方で、なかには終末期の患者さんも運ばれて来る。カルテにはがん末期と書かれ、看取りが近いけれども少し過度とも思える救命に近い形の処置をせざるを得ない。これはとても心苦しいことです。実際、ご家族に話を聞くと、本当は家に居たかったけれど、容体が急変した際にかかりつけの医師に電話がつながらず、怖くて救急車を呼んだというのです。
そういう救急車を呼ばざるを得なかった背景などを知ったときに、在宅でできることは何かないのかなと、モヤモヤとした気持ちになりました。そういうことが続いたことから、川邉先生に相談したところ、私たちが地域に出れば何かできることがあるはずだということで想いが一致し、開業することになりました。

──現在の患者さんの層、患者数を教えてください。

院長 開業当初はがん患者さんがほとんどでしたが、神経難病の方や、認知症で最期を自宅で過ごしたい方などが増え、今はがんの方は半数ほどです。ケアマネジャーの方からさまざまな患者さんを紹介していただくようになった結果です。ほぼすべてが居宅の患者さんです。施設の患者さんも、自宅療養から施設に移られた患者さんです。
患者数は、今は80人程度を診ています。年間120〜130人が亡くなられ、そのうち在宅での看取りは90〜100人です。在宅での看取りの数は多くなっていますが、私は必ずしも自宅での看取りが一番とは思っていません。病院の緩和ケア病棟で過ごしたいと希望される方も一定数いらっしゃる。本人とご家族が望む場所でよいと思っています。私たちの医療では、「主語」は必ず患者さん、かつご家族であるという考えです。
なお、スタッフは、医師は私以外に非常勤が3人います。看護師は常勤が2人、非常勤が3人の計5人。地域の訪問看護ステーションとも連携しています。

看護師中心のほうがメリットは大きい 栄養ケアで食に対する苦しみを穏やかに

──貴院は医師ではなく看護師が主体となって在宅医療を提供されているそうですが、どのような狙いがあるのですか。

院長 患者さんと家族が「主語」であるという観点から見ると、患者さんと家族が中心にいて、その周りに多職種がそれぞれの役割で関わるのが理想的です。そのときに、医療と介護をバランスよく担当できるのは誰かというと、間違いなく看護師です。ケアマネやヘルパーとの距離も近い。訪問看護ステーションとのやりとりもスムーズにできます。
経営的視点で見ても、看護師は医療保険と介護保険の両方がとれる唯一の職種です。また、看護師が主体となることで、医師は医療に専念でき、診られる患者さんの数が増える。感覚としては、少なくとも1.5倍くらいの患者数は診られるようになると思います。
そうして多職種連携がうまく機能すると、患者さんもご家族も喜ばれ、ご家族が別の患者さんを紹介してくれることにもつながります。実際、当院では病院からの紹介よりも患者さん家族からの紹介のほうが多いです。そういう好循環が生まれています。看護師中心の体制にすることにはメリットしかないでのす。

綾香氏 患者さんご家族がご近所さんを紹介してくださり、そのご近所さんがまた別の方を紹介してくださることや、お母さんをお看取りして今度はお父さんの在宅もお願いしますというケースが増えています。

院長 そうしたことは、すごく励みになります。看取りに関して直接的な評価をいただかなくても、ポジティブなフィードバックとして受け取ることができ、がんばろうという気持ちになれます。

──貴院では「栄養ケア」にも力を入れておられます。注力するきっかけは何かあったのでしょうか。

院長 私が食べることが好きだというのがあり、人生の最期まで食べられる方法はないかと考えたのがきっかけです。食・栄養のプロである管理栄養士が私たちのチームに参加してくれれば、在宅医療の質がより向上するのではないかと思ったのです。

綾香氏 人生の最終段階の患者さんは、トイレに行けなくなる、お風呂に入れなくなるなど、日々いろいろなことができなくなっていきます。食べたいのに食べられなくなるというのもその1つです。食べたいという気持ちが強い人ほど、食に対する苦しみは大きくなる。少しでもその苦しみを穏やかなものにできないかという視点を持つだけでも、その方の残された人生が変わってくるのではないかと思っています。
私たちの「栄養ケア」は、単に栄養を管理し、食べられるものを増やすというものではありません。患者さんは本来どういうものが好きだったのか、なぜ食に対してこだわるのか、といった物語を聞くことが支えにつながるという考えです。たとえば、「食べることが好きになったのは、奥さんの手料理があったから」という話を聞くだけで、夫を介護する奥さんも穏やかな気持ちになります。また、「今の状況でも、食べたいときに食べたいものを食べて構いませんよ」とお伝えするだけで、家族の疲れがとれることもある。家族としては、どうにかして食べさせなければとか、栄養を考えなければとか、がんじがらめになっているので、そこを「そんなにがんばらなくても大丈夫」と伝えてあげる役割を管理栄養士は担います。栄養に関して何かをするのではなく、栄養をテーマに患者さんの苦しみ、物語を聞ける人材を育てることが、私たちの栄養における穏やかなケアの大きなテーマになっています。

──具体的な事例があれば教えていただけますか。

綾香氏 83歳の肺がんの末期の方の例ですが、予後は3~4か月くらいでした。私たちが介入したとき、その半年前に奥さんを亡くされ1人暮らしでした。魚の卸売市場で働いていた方で、かつては余った魚で鍋を作ったり、仲間にふるまったりしていたほど、料理好きだったとのことでした。奥さんが病気になったときも、手料理を作って食べさせたていたそうです。
しかし、奥さんが亡くなり1人になって、自分もがんになってしまい、「台所に立ってもむなしいだけだ」と思うようになってしまった。そんなことをぽつりぽつりと話されていました。実際、そのとき食べていたものは、朝はおにぎり、昼は奥さんの仏壇に供える物の余り、夜は栄養補助食品といった感じで、毎日が同じような食事でした。そこで、管理栄養士に入ってもらい、どんな料理が好きだったのか、奥さんの得意料理は何だったのかなど、いろいろ話を聞いていくと、「もう一度台所に立ってみようかな」と思うようになり、管理栄養士と一緒にごはんを作るようになったのです。
その後しばらくしてから、私たちが訪問すると、冷蔵庫からタッパーを出して、「こんなの作ったから食べてみて」と。「先生たちの分も作ったから、持って帰って食べてみてよ」とおっしゃったのです。そのときには予後1か月くらいだったので、だいぶ痩せられていましたが、彼は自分が食べるためではなく、私たちに食べる喜びを味わってほしいとの思いで料理を作られた。食に対する彼の喜びは、誰かのために作って食べてもらうこと、喜んでもらうことだったわけです。それが彼にとって最期まで生きる支えとなりました。後日、「おいしかったですよ」と伝えると、満面の笑み。そして、その1週間後くらいに旅立たれました。
私たちにとって、そういうことが食に関しての生きる支え、穏やかな支えではないかと思っています。単にヘルパーを入れて料理を作ってもらうといったことではなく、患者さんの残された力で何ができるのかという視点で見る。そのためには患者さんが何をしたいのかを聞き取ることが大事になってくると思います。

院長 私たちが診療でうかがうのは、1日24時間のうち30分程度です。そこで何かを変えようとするのではなく、残りの23時間30分の行動を変える、行動変容を促すことが大事なのです。看護師や管理栄養士には、そこを意識してもらうようお願いしています。


ミーティングの様子。関わるスタッフ全員で理念や考え方を共有する

管理栄養士にもクリニックの理念を共有 ケアマネから高評価、付加価値に

──そうすると管理栄養士にも貴院の理念、考え方を共有してもらうことが大切になりますね。

院長 そこは大事な点であり、難しいところでもあります。まず、彼らは医療者ではないので、そこに大きなギャップがあると感じています。たとえば、管理栄養士のよい点であり、欠点でもありますが、患者さんと接する際、豊富な知識を伝えようと一方通行の説明をしがちです。この栄養素はこうで、こういう役割があるといった説明に終始してしまうのです。その点については、まずは全人的に患者さんの話を聞くことから一緒にやりませんかという話をしています。自分が話すのではなく、一歩引き、30分あれば、15分は患者さんの話を聞いてみませんかと。そういう話をすると、管理栄養士の想いと私たちの想いとのギャップに気づいてもらえることが多いように感じます。

綾香氏管理栄養士さんも患者さんのことを知りたいという気持ちはありますが、医療的なことは知らないということもあるので難しいところです。ですから、まずは看護師が管理栄養士のそういう苦しみを聞く。そして看護師から患者さんの状態について説明した上で、適切な対応としてどんな工夫ができるのか、あくまでも主語は患者さんで、患者さんに合う工夫を考えてほしいと伝え、一緒に検討するようにしています。私たち看護師が後ろにいるから、安心して患者さんに声をかけてみてというスタンスです。

──管理栄養士が介入する患者さんはどのように決めるのですか。

院長 コロナ禍においては、訪問する人数を制限する必要があるなど、状況が変わっていましたが、基本的にはすべての患者さんについて検討しています。ただ、実際に入っているのは全体の1割程度です。入れられない理由の多くは金銭的な問題です。管理栄養士が入れば患者さんの状態が目に見えて変化するというわけではないので、ご家族も費用面で迷われます。
綾香氏 がん末期の方の場合、在宅療養の期間が短く、医療の展開が早いので、管理栄養士が介入するのは難しいケースも少なくありません。逆に慢性期で血圧が高いとか、中長期的に行動変容が必要だと思われる患者さんには管理栄養士が関わりやすい。入退院を繰り返さないように、食事や行動変容を促します。

──管理栄養士を入れることで経営的なメリットはありますか。
院長 収益的にはトントンです。地域の管理栄養士の団体に外部委託しており、必要に応じて入ってもらうので、特にプラスにもマイナスにもなりません。
管理栄養士を介入させることで患者数が増えるかというと、特段の影響はないですが、私たちのチームのメンバーに管理栄養士がいることで、ケアマネなどからは喜ばれています。かわべクリニックに頼めば、どの職種ともつながれるという評価は得られています。歯科医師や歯科衛生士、薬剤師と連携するのと同じ意味で、付加価値になるのは間違いないと思います。

「東大阪プロジェクト」で多職種連携推進 今後は市民への啓発活動にも取り組む

──貴院は「東大阪プロジェクト」という活動をされていますが、これはどういうものですか。

院長 私たちは東大阪市を中心とした地域の在宅医療の普及、促進を目指しています。そのためには、地域の多職種の方々と本当の意味で顔の見える関係性を築かなければなりません。そのために立ち上げたのが「東大阪プロジェクト」です。
活動の中心の1つが勉強会です。在宅医療に関わる人たちの知識の格差是正とレベルアップが目的です。医師、看護師、ケアマネ、薬剤師など、それぞれの職種の勉強会に、職種に関係なく誰でも参加できる仕組みにしています。それにより職種間の知識の差を小さくし、それぞれが本当にフラットな立場で関係性を構築できるのではないかと思っています。コロナ禍で勉強会をオンラインで開くようになり、当初は東大阪だけで50~100人くらいの参加だったのが、今は全国から400~500人くらいが参加しています。
プロジェクトのコアメンバーも増えていて、最初は6人で始めたのが、今は30人くらいになっています。代表は司法書士の先生で、看護師、司法書士、社会福祉士、ケアマネ、ヘルパー、看取り士、MR、葬儀会社、市議会議員、コンサル、病院院長など、地域包括ケアシステムに関わるさまざまな職種の方々です。人数が増えると意思統一も課題になりますが、コアメンバーだけの勉強会を今年2月から毎月開き、30人のベクトルを合わせています。いろいろと苦労もありますが、力を入れて取り組んでいます。

──今後の展望をお聞かせいただけますか。

院長 これまでは主に医療・介護職を対象に啓発活動をしてきました。しかし、これでは閉ざされた社会になるので、今後は市民を対象に、自宅で穏やかに過ごすことができる、地域包括ケアシステムというものがあることを知ってもらう啓発活動をしていきたいと思っています。身近なところに在宅医、訪問看護・介護の専門家がいることを知ってもらい、気軽に相談してもらえるようにしたい。医師会や行政の方々とも一緒に取り組んでいければと考えています。

在宅医療、地域包括ケアシステムに関して、このように興味・関心を持ち、そして取材、雑誌掲載していただけたことに、感謝しかありません。

今年度は、医療介護福祉職だけでなく、職種をさらに広げ、リアルに顔の見える関係を築く一年としていきます。

東大阪プロジェクトの想いが多くの方に届くことを願っています。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【地域連携】東大阪プロジェクト 真の地域包括ケアシステムを目指して

https://www.youtube.com/watch?v=c9_CFMgTEbE
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「藍野大学医療保健学部看護学科」にて講義を行いました

こんにちは。看護師の川邉綾香、院長の川邉正和です。

昨年にご縁をいただいた、藍野大学医療保健学部看護学科での講義。
今年は、堀智子先生からバトンを引き継がれた楢原理恵先生からのご依頼を受け、「リアルな在宅医療の現場や死について」をテーマに、オンラインでの授業を担当させていただきました。

在宅看取りの支援だけでなく、日常生活において、友人関係、職場関係、夫婦関係、親子関係の中でも共通する大切なテーマが、
「苦しんでいる人は自分の苦しみをわかってくれる人がいるとうれしい」
です。
そのために問います。

本当に、苦しみを聴けていますか?

これから実習が始まる看護学生の皆さんにとって、
患者さまとのコミュニケーションで困ることのひとつに、
「人の話を聴くことが難しい」
ことがあります。

そこで、今すぐできる“聴き上手”になるための方法を伝授。

私自身も学生時代に感じた自分の無力さ。
人生の最終段階を迎えた方に「関わる自信」を少しでも持っていただける授業となるよう、工夫しました。

内容は3部構成。
1)在宅医療の実際。看取りの現場(VTR)。

2)エンドオブライフ・ケア〜人生の最終段階に関わるには


3)ひとは穏やかにエンディングを迎えられる。そのケアについて。

昨年は学生さんの全員が自宅でのオンライン参加でした。
今年は、講師である私たちはクリニックからの配信となりましたが、学生さんたちは通常通り学校での授業。
援助的コミュニケーションの基本中の基本である「反復」と「沈黙」に焦点を当て、マスク着用のうえ、学生同士でのロールプレイも交えて学んでいただくことができました。

ご興味のある方は、是非、ELC東大阪研修会にご参加ください(無料)。
(次回は10月、11月に開催予定です)
YouTube動画もご覧ください。

https://www.youtube.com/watch?v=6gx8Mvjoeds


※クリックするとPDFをご覧いただけます。 

オンラインでの講義終了後、楢原先生の研究室に足を運んで
「今日の講義、めっちゃよかったです!」
といってくれた学生さんが数名いた、との連絡をいただいていたので、
学生さんたちにの満足度は高かったと、こちらも好感触を得ていました。

その上でアンケート結果・感想を拝読いたしました。
どの感想を読ませていいただいても、こちらの思いが十二分に伝わったと感じられ、喜びもひとしおです。
そのうちのいくつかを、こちらでもご紹介させていただきます。


【感想】(一部抜粋)

・期待以上でした。
もともと在宅看護について興味があったのですが、さらに興味が湧きました。
もちろん簡単なものではありませんが、その人とご家族の方、生活に寄り添い看護ができるのはとてもやりがいのあるものだと思いました。

・元々在宅看護や緩和ケアには興味がありましたが、今回の講義を聞き、在宅看護ならではの利用者や家族との関わりにおける工夫などをもっと知りたいと思いました。

・ターミナル期である患者さんだからこそより患者さんのニーズに合わせた看護を提供したり、お話を聴かせて頂くことでご本人にとっても家族にとってもより良い最後を迎えることが出来るのだと学び、ターミナル期の看護について更に興味が湧きました。

・在宅看護は学んでいましたが、このように詳しくわかりやすい講義はあまりなく凄く興味が持てました。

・ターミナルケアの実際のコミュニケーションの取り方など看護師として学ぶべきことがたくさんありました。

・ビデオなどから直感的にわかりやすい内容であったので1限目からでもすごく学習出来ました。

・ターミナル期の患者とのコミュニケーションは内容が重たくどのように返したら良いのだろうかと自分のことばかり考えていたが、患者がどのように理解して欲しいかな を考える機会となった。

・在宅看護では、対象者の生活の場に踏み入ると言う自覚を持って、礼儀・作法を身につけておくことも重要であると考えた。

・就職の際に視野に在宅看護を視野に入れて考えたいと思いました。

【疑問など】(一部抜粋)

・家族間で看取りの方向性が違った時はどのように支援しますか?

・家族が病院にいて欲しいと思っているが利用者は家にいたいと思っている時の支援の仕方を知りたい。

・利用者さんからの信頼を得るまでの過程を聞いてみたいです。

・在宅看護を行うために取っておくべき資格などありますか?

・反復でも怒られたりすることはありますか?

・沈黙時の看護師の視線や動作を聞いてみたいです。

・在宅看護に携わる医師や看護師にとって、死とは何か。

みなさまの熱い思いを感じ、私たちの言葉を理解していただけた講義になったと思います。
そして、オンラインではなく、対面で授業できる日を楽しみにしています。

「看護教育は、大学と連携し、臨床の場の実践家とともに教育することが学生にとって有意義な教示になる、と改めて実感した」と、担当教官からもお言葉をいただきました。

今年度は、医療介護福祉職だけでなく、職種をさらに広げ、リアルに顔の見える関係を築く一年としていきます。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【緩和ケア】援助的コミュニケーション・ちょこっとホットな緩和ケア
2021年12月18日皮膚ケア緩和ケア講演会vol.2 にて
第2部 講師 川邉綾香 先生

ひとつの事例を通して、 援助的コミュニケーションの大切さを学べる形式になっています。
直接的に皮膚ケア(褥瘡)と関わりはありませんが、一見、交わりがないように見えるものにも、患者さんを主語に考えたときに重なることが多くあります。
新たな出会い・学びとなれば幸いです。

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【看取りの報告書】AXさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AXさまのこと
~独居の方は自宅で亡くなれない!?~
在宅医がいれば、あなたの願いが叶います。

いつもお世話になっております。AXさまについてご報告させていただきます。

ご紹介電話をいただき、翌日訪問をした際に、AXさまは「病院は絶対に嫌や。入院はしないよ。我慢強いから大丈夫」。
横で聞いていらした娘さまは、「家は怖いと思っていたけど、在宅訪問診療という制度があるなら、私は出来る限り父の家に来るのでお願いします」と、すぐにAXさまの願いを了承されました。
ただ、AXさまが「ベッドが嫌、あれが嫌」などと言われるたびに、娘さまが「わがまま言うなら入院よ!」と駆け引きをされていたのが印象的でした。

初回訪問時より、呼吸困難、癌性疼痛、低酸素血症、体動困難を認めていましたので、在宅酸素、医療用麻薬、ベッドなど、あらゆるものを導入し、療養環境を整えました。
時を同じくして、AXさまの状態も日増しに悪化。
AXさまの病状を理解されていた娘さまでしたが、気持ちが追い付かないと不安になり、一度は入院を考えていらっしゃいました。
そこで私たちは説明を行い、不安な娘さまを支えることをお約束。
娘さまは改めて、「AXさまらしさ」を尊重されることを決意なさいました。

亡くなられる日を悟られたかのうように、娘さまがAXさま宅に泊まった日の深夜、娘さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
1週間と短い期間でしたが、良き出会いとなりました。
ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
私たちがケア行っている人生の最終段階の方に、「死」はどのように見えるのでしょうか?
そして患者さまを支えているご家族さまに、「死」はどのように見えるでしょうか?

多くの人は、「怖い、嫌だ、不安に見える」と言います。

ところが、同じ死であったとしても、「穏やかである、幸せである」と見える人がいます。

一般には恐れられる死も、違うように見えることがあり得るのです。
その理由は、“支え”があるからです。
その支えには、大きく分けて3つあります。
①将来の夢
②支えとなる関係
③選ぶことのできる自由
です。

「選ぶことの自由」が奪われたとき、人は苦しさを覚えます。
選ぶことができないとき、しばしば死にたいと希望する人がいます。
それほどまでに大切な「選ぶことのできる自由」です。

私たち医療者(援助者)が「良い」と思ったことは、必ずしも患者さま自身が良いと思うとは限りません。
大切なことは、患者さまを主語とすること。
患者さまがどのように思っているのかを考えなければなりません。

私たち医療者(援助者)は、患者さまが穏やかに過ごせるよう、解決できることは解決することも重要です。
患者さまが理解できるように、丁寧に説明することも大切です。

人は大きな苦しみを抱えていたとしても、穏やかになれる可能性があります。

今回のケースでは、一番の困りごとであった呼吸困難の症状緩和目的に、在宅酸素の導入、医療用麻薬などでの薬剤調整、環境調整として介護用ベッドを導入しました。
これらは、私たち医療者からの押し付けではなく、患者さま自らが説明に納得し、選ばれたものです。
「選ぶことのできる自由」があるかないかで、穏やかさは大きく変わってきます。

自宅療養をしたい、入院したくないと明確な意志表示をされる人は、何からの強い意志、将来の夢、そして「支え」をお持ちの方が多いのではないでしょうか。

私たちは、その「支え」を強めるために、病院とはシステムは違った形にはなりますが、安心してもらえるような医療・ケアを「在宅チーム」として発揮しなければなりません。
病院のように、すぐに対応できるナースコールがあるわけではありません。
しかし、24時間365日いつでも電話連絡、対応し、駆けつけることも可能です。
こういった安心感が、患者さま、ご家族さまを支えるひとつの要素となることは間違いありません。

何よりも心穏やかになる場所であるご自宅で過ごせること、ご家族さまと変わりなく会えることは、患者さまにとって生ききることの支えとなります。
私たちは患者さまだけでなく、その家族さんを支えることが役割だと考えます。

私たちはこれからも、暑い夏とともに、無理なく走り続けます!

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【客観的評価が苦手・ポイントが知りたい!~できる看護師を目指すあなたへ~】
先日、新人看護師から質問を受けました
「患者さまの呼吸が苦しそうなので、『苦しそうですね、苦しいですか?』と聞いたら、『苦しいわけじゃない』って言われました。
苦しそうなのに、どうしてですか?」

[今日のポイント]
「苦しい」と「苦しそう」は違うのです。
・・・詳細は動画を参照ください・・・

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