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ACP(アドバンスケアプランニング)よりALP(アドバンスライフプランニング)【看取りの報告書・BOさまのこと】

2024年01月24日(水)
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かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。

講演のようす

突然の余命1か月宣告。そのとき家族は。

病院への看取りの報告書

いつもお世話になっております。

BOさまの経過についてご報告いたします。

従来より、難病であるご主人様の在宅医療を担当させていただいておりましたが、ある日娘さまより、お母さまが39℃の発熱を呈しているとのご連絡を受けました。

正式な診察依頼はなかったものの緊急事態でしたため、感染予防対策を講じ緊急往診にお伺いしました。インフルエンザとCOVIDが陰性であることを確認し、正式に介入を開始しました。

発熱に関しては抗生物質の投与により克服することとし、この時点で予後が厳しいと推測される中、できる限り自宅で過ごしたいというご希望を確認いたしました。

後に詳細をお伺いすると、2カ月前から微熱の経過があり、腰背部に痛みが生じていたこと、通っていたリハビリデイの先生に相談したところ、肋骨の骨折の可能性が示唆されたとのことでした。

しかし、精査を続けた結果、がん末期状態であり、かわべクリニックに依頼しようとしていた矢先であったことがわかりました。予後を考慮し、ステロイドを開始し、同時にフェンタニル製剤にて疼痛管理を行いました。

BOさまには脳梗塞の既往があったため、多少の移動に介助が必要でしたが、亡くなられる2日前までトイレ歩行が可能でした。がんの宣告は突然で、ご家族は動揺されましたが、動けない難病の旦那さまとベッドを並べ、最後まで自宅で過ごすことを選択されました。

娘さまは、父と母の「二人で最後まで一緒にいたい、治療は受けない」というその選択を悲しみながらも、両親が一緒に過ごせることを喜ばれ、旦那さまも涙を流されました。そして、他県に住んでおられた娘さまは覚悟を決められ、介護に専念していただき、BOさまは安らかに永眠されました。今後ともよろしくお願いいたします。

映画「わたし」の脚本を書くのは、もちろんわたし

先日、大阪市健康局主催の人生会議(ACP)普及啓発セミナーを行いました。
タイトルは『人生会議は映画「わたし」の脚本づくり』
脚本づくりとは、映画「わたし」のエンディングを設計すること。
でも、どんな結末を見たいかは、主演の本人しだい。

「ハッピーエンドだ!」と判断できるのは本人だけなのです。

この講演では「幸せで、おだやかな過ごし方」の脚本づくりのコツをレクチャーさせていただきました。
講演の様子は、以下の動画でぜひご確認ください。

人生会議(ACP)より大切なALP

厚生労働省は「人生会議(アドバンスケアプランニング)とは万一のときに備えて、あなたの大切にしていることや望み、どのような医療やケアを望んでいるかについて、自分自身で考えたり、あなたの信頼する人たちと話し合ったりすること」と説明しています。

さて万一のときとは、具体的にいつ、どんな状態を指すのでしょうか?

そのとき、ちゃんと話し合えるのでしょうか?

今回の講演でもお話ししたことは、人生会議(ACP)よりも、ALPが大切であるということです。

三浦靖彦先生が提唱されているALP(アドバンス・ライフ・プランニング)は、「自分は何を大切にしているのか」「どのような人生を歩みたいか」についてを考えることです。病気を発症した後で「どこでどのように医療・ケアを受けたいか」を考えるACPよりも、もっと手前の健康なときから人生観や死生観をもとにALPを考えることが重要だと指摘されています。

※画像をクリックすると拡大して表示されます

「どう生きたいか」に正解なんてない

BOさまのケースのように、突如として起こる様々な出来事が家族の在り方を変えることがあります。家族構成やバランスが変われば、関わる人々の生活も変わります。このときぜひ行ってほしいことは、「大切な人に自分の思いを伝えること」です。

難病である夫の世話をBOさまがしておられました。娘さまは他県に住み、BOさまを支える存在でした。しかし、BOさまががん末期と診断され、1ヶ月程度の予後も説明されました。娘さまは、その期間が短いことに驚きつつも、実家に戻り、訪問看護師やヘルパーの協力を得て、父と母の世話をすることを決意しました。そして、最期を自宅で過ごすという母の願いを叶えることができました。

母を看取った後には、「父の介護をこれからは誰がどうするのか?」という新たな状況に直面します。娘さまにも自分たちの生活がある。
父は難病のため、これからもっと介護度が高まり、期間も長引くことが予想される。父の介護と子供の世話との両立は難しい状況でした。

父は考えました。
今までは「家で最期まで…」と思っていたけれど、妻が亡くなった今、娘のことを思えば自分はどこで過ごすのが最適か。

ACP視点である「どこまでの治療を望むか、ケアを望むか」を考えることは非常に重要ですが、同じくらい大切なのは、「どこでどのように生きたいか」というALPの視点です。

娘さまの出した答えは、父と母が慣れ親しんだデイサービスでした。そこにはサービス付き高齢者住宅も併設されており、ケアスタッフも同じ職員でした。またその施設は、私たち在宅スタッフも継続して伺い医療・ケアを行うことが可能でした。その施設に父を入所させ、週末ごとに会いに行くことを娘さまは選択されたのです。

人生の中で気持ちや家族の在り方が変わることを考えれば、アドバンスライフプランニングを考えることこそが重要です。

【今週の東大阪プロジェクト】

東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>ぜひご参加ください<<

病いの語りを聴く方法〜ナラティヴ・アプローチのすすめ〜
\令和5年度・中河内緩和ケア多職種連携研修会/

主催:中河内医療圏がん診療ネットワーク協議会緩和ケア部会
日時:2024年(令和6年)2月17日(土) 17時~19時(開場・16時30分)
会場:市立東大阪医療センター本館3階ABC会議室( 大阪府東大阪市西岩田3-4-5)
定員:地域の医療・福祉・介護関係者、医療センター職員 100名(会場参加のみ)
参加費:無料

【申込フォーム】
https://www.higashiosaka-mc.jp/contact-edu/

【プログラム】

特別講演:中川 晶先生
(なかがわ中之島クリニック院長・京都看護大学大学院特任教授)

「病いの語りを聴く方法 〜ナラティヴ・アプローチのすすめ〜」

ディスカッション:

中川 晶氏
市立東大阪医療センター緩和ケア内科 岩城 隆二 氏
かわべクリニック 医師 川邉 正和 氏
市立 柏原病院 がん性疼痛看護認定看護師 橋本 淳子 氏
若草第一 病院 緩和ケア認定看護師 山本 直美 氏

病いの語りを聴く方法・告知
※クリックするとPDFが表示されます

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