生ききるということ【看取りの報告書・CDさま】第1回:異なるふたつの願いの狭間で
かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間をどのように過ごされたかを「看取りの報告書」としてまとめています。
これまで毎回「報告書」と担当看護師の思い出を、一度に読みきれる記事としてお届けしてきました。今回は趣向を変えて、ある患者さんと、そばで支え続けたご家族の変遷を4回に分けて考察していきます。シリーズを通して一緒にさいごの時間について考えるきっかけにしていただけたらと思います。

いつも大変お世話になっております。
このたびは、貴院よりご紹介いただきましたCD様につきまして、在宅療養から看取りに至るまでの経過をご報告申し上げます。
CD様は、肺がん終末期の診断のもと、抗がん剤治療を継続されながらも「できる限り自宅で過ごしたい」という強い思いをお持ちで、在宅療養を開始されました。療養開始当初は、倦怠感や体重減少はあるものの、「治療が効いてほしい」「まだ頑張りたい」と前向きな発言も多く聞かれていました。一方で、娘様への負担を強く気にかけておられ、ご自身のつらい気持ちを表現せずに、抑制する傾向が見られました。
その後、抗がん剤治療の継続に伴い、倦怠感、食欲低下、疼痛、呼吸困難などが徐々に増したことから、日常生活動作は低下していきました。それでもCD様は「できるだけ治療を続けたい」「家で過ごしたい」というお気持ちを繰り返し口にされ、娘様もその意思を尊重しながら在宅療養を支えておられました。
年が明け、春以降になると傾眠傾向、食事摂取量の低下、転倒などがみられ、全身状態の悪化が明らかとなりました。娘様は、在宅で療養を継続することに不安を抱えていらっしゃいましたが、介護休暇を取得し、できる限りの介護を行われていました。私たちも、疼痛や呼吸困難に対して薬剤調整を行い、苦痛緩和を最優先とした対応を行いました。
徐々に入眠時間が長くなり、それから半月ほどでご自宅にて娘様に見守られながら永眠されました。
生前、CD様が「自分の人生は万々歳だった」と語られていたことは、娘様にとって大きな支えとなり、最期の時間を穏やかに過ごす一助となったと感じております。
このたびは大切な患者様をご紹介いただき、誠にありがとうございました。
今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
がんの治療を続けるなかで、患者さんやご家族のあいだには、表には出しにくい、表現されにくい時間があります。
「まだ頑張りたい」と願いながらも、体がついてこない日々。
本当はしんどいのに、そばにいる人を気づかって言葉を飲み込む朝。
「この選択でよかったのだろうか」と、ひとりで問いかける夜。
CDさまは、肺がんの治療を受けながら「できるだけ家で過ごしたい」と望まれていました。
倦怠感や体重の減少はあっても、「治療が効いてほしい」「まだ頑張りたい」と前向きな言葉を口にしてもいました。
一方で、娘さんへの負担を強く気にかけておられました。つらい気持ちを表に出さないことで、家族にこれ以上の負担をかけまいとされていたのでしょう。なんとか自分の中で消化しよう、抱え込もうとする考えは、特に親が子に対して感じる傾向が強いように感じます。

「治したい」という気持ちと、「穏やかに過ごしたい」という気持ち。CDさまは、そのふたつの願いを抱えたまま、在宅での日々を過ごしていかれました。
少しずつ体力が低下し、息が苦しくなる機会が増えれば、気持ちにも変化が起こるのは当然のことです。現実を受け入れるしかない。これ以上の苦しみや痛みから逃れたい。自分が苦しむ姿を見る娘の気持ちを思うと、さらにつらさが増す。そんなさまざまな葛藤と不安、そして変わらない願い。
次回は、その揺れのなかで何が起きていたのか。
「治したい気持ち」と「しんどい気持ち」のあいだで、CDさまが口にされた言葉をたどります。
患者さん自身だけでなく、支える家族、そして医療者自身も揺れ続ける時間、どのような心の動きがあったのでしょうか。
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