介護の力を信じて支えあう【グリーフカードに込めた想い・第3回】
医療では、患者さんご本人の身体、痛みのケアばかりが重視されがちです。しかし本当にケアが必要なのは患者さんだけでなく、大切な人を失った後のご家族の心も同じこと。喪失感が長く続くケースは決して少なくありません。
必要なのはご家族のグリーフケア。かわべクリニックでは、ご家族にグリーフカードをお送りしてきました。

私たちは、看取りのあとも“つながりの医療”を大切にしています。旅立ちから49日、そして1年――ご家族の心に少しずつ変化が訪れるその節目に、「グリーフカード」をお送りしています。
「悲しみの中にあっても、あなたはひとりではありません。」
そんな想いを込めて、医師や看護師が一枚一枚、手書きで綴ります。
すぐにお返事をくださる方もいれば、1年経過してから初めて言葉を返してくださる方もいます。それぞれの時間の流れがあり、「時が解決する」という単純なものではありません。だからこそ、早い段階から心に寄り添うグリーフケアが大切だと、私たちは考えています。
Nさんのご家族から届いたお返事をご紹介します。
「少しずつ落ち着いて」という言葉に安心するとともに、私たちも励まされる思いがしました。

Nさんは80代に入った頃の年齢で、奥様と二人暮らしをしていました。いわゆる「老老介護」と呼ばれる状況で、支える奥様の側にも大きな負担がかかっていたのは間違いありません。
その中で、Nさんご自身はさいごまで身の回りのことを自分でされ、比較的自立した生活を続けておられました。ただ、体位変換のように不快感をわずかでも感じる時は落ち着かない様子を見せることもありました。そのたびに奥様が懸命に寄り添っている姿は、今でも印象に残っています。
在宅療養において大切なのは“介護の力”です。それは支える人の思いとともに、医療・介護チームの連携が欠かせません。
医療だけが整っていても、介護のパワーが尽きてしまう場合、在宅生活を続けることは困難になります。
介護にかけられるだけのパワーのバランスを整えながら、奥様が少しでも無理なく過ごせるようなサポートを心がけました。
お手紙の中の「私も頑張って行きますので」という言葉には、深い悲しみと向き合って、受け止めて、そして再び歩き出すという決意がにじんでいたように思います。
時間が経っても、または時間が経過した後だからこそ、こうして想いを表現し、伝えてくれる方がいること自体が、私たちのグリーフケアを続ける理由となっています。
“看取り”は、一つの終わりと思われるかもしれません。しかし、同時に誰かの“これから”を支える始まりでもあるのです。
ご家族と私たちは、同じ空間、時間で介護という志を一つにした同志だと思っています。介護を通じて共に過ごした時間が、これからの生き方を照らす光となれば、私たちとしては報われる思いがします。

「介護の力」とは、医療職だけの力ではなく、家族だけの力でもありません。地域を含め、見守る仲間たちが連携することこそ、“家で生ききる”ことを支える原動力だと考えています。
今回ご紹介したNさんご夫妻のように、互いを想い合う時間の中に、人生のさいごを豊かにするたくさんのヒントが詰まっているのでしょう。
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