繋いだ手は決して離さない〜途切れない家族支援〜【看取りの報告書・BTさまのこと】
かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。
いつもお世話になっております。BTさまについてご報告させていただきます。BTさまは、もともと治療を受けていた病院での化学療法が不応(抗がん剤投与など治療が有効でない状態)との診断を受けた後、終診となったことから、別病院の緩和ケア科のご紹介を受けられました。その緩和ケア科を早々にご主人と娘さまとともに受診され、最期の時に向けて、家族で立ち向かう姿を、私たちは見ておりました。かわべクリニックの介入から2週間が経過した頃、倦怠感が増していったため、緩和ケア科の病院に10日間ほど入院。その後、再開された在宅療養では、より具体的に「最期の日々をどう過ごすか」に向き合われました。BTさまの「最期まで家に居たい」という強い意思に対し、ご家族も「できる限り頑張ってみます」と固い決意をなさっていました。
ご家族を支えるため、福祉のサポートを受け、人と物の両面から療養環境の充実を図りました。介護の主軸であったご主人の介護力は、困難な状況にも関わらず懸命で、BTさまを見守るその眼差しは非常に温かいものでした。状態悪化を見守ることはご主人にとって辛く、「可哀想だ」と涙することもありましたが「最期まで家で」という決意は揺るぎないものへと変わっていきました。
心配するご主人の横で、BTさまは「困ったことはない。しんどいこともない」とおっしゃっていました。そのお二人の姿は、これまで築いてこられたお互いを思いやるご夫婦の絆を感じさせました。
ご家族に見守られながら、安らかな永眠を迎えられたあと、ご主人の「僕には何もすることができない。見守るだけでは辛い」という苦しみを取り去ることはできませんでしたが、その思い・苦しみを聴き、心身の支えを続けることで、BTさまとご家族が希望された「最期まで家に居たい」という願いを叶えることができました。
ご紹介いただき、誠にありがとうございました。今後ともよろしくお願い申し上げます。
私たちは、大阪府看護協会と共催で「まちの保健室」を2023年7月に開設しました。
この「まちの保健室」には、2つの大きな目的があります。
1つは
「病院へ行くほどではないけれど、最近ちょっと気になることがある」
「学校や家庭のことでひとりで悩んでいる」
「家での療養生活についてアドバイスがほしい」など、
さまざまな不安や悩みを気軽に看護職に相談できる場所を提供することです。
学校の保健室が、生徒の相談や癒しの場であるように、「まちの保健室」も同様の役割を目指しています。
そして2つ目は、がん遺族の方々が安心して集まり、悲しみを共有できる「がん遺族サロン」を提供することです。泣いたり、笑ったり、話したりできる場所として、さまざまな目的を持った「居場所」を作りたいと考えて設立しました。
まちの保健室での「がん遺族サロン」を立ち上げてもうすぐ1年が経過します。私たちが心がけていることは以下の通りです。
その結果、多くの遺族の方が集まり、はじめは悲しみを吐露なさいます。そのうちに自分の体調についての相談や、近所の方の心配事を話してくださるなど、心境にも変化が見られます。
この変化は、悲しみを克服したわけでも、悲しみがなくなったわけでもありません。むしろ悲しみと共に前に進んで歩んでいる結果だと感じています。がん遺族サロンを通じて、私たちはその歩みをサポートし続けたいと願っています。
しかし、今も大きな懸念が存在しています。それは「がん遺族サロン」の参加者がほぼ女性であることです。
たしかに、日本では妻が夫を看取る比率が統計的に高いとされます。一般的に男性の方が女性よりも寿命が短いため、妻が夫よりも長く生きることが多いからです。
厚生労働省の統計によると、2022年の日本における平均寿命は、男性が81.64歳、女性が87.74歳です。
女性のほうが約6歳長生きする計算になります。介護に関する調査でも、配偶者を介護する場合、妻が夫を介護するケースが多いという結果が出ています。
さて、BTさまのご家族は、夫が妻を看取ったケースです。少なからずこのような妻を先に失った夫が残りますが、その後ご主人と連絡が取れないケースが多くあります。連絡は取れたとしても「がん遺族サロン」に顔を見せるなど、社会との交流を保ち続けることが困難な割合が多いのです。
長年連れ添った配偶者を失うことで、誰もが非常に深い悲しみと喪失感を感じます。また、高齢になると友人や知人も少なくなり、社会的な孤立感が強まります。配偶者を失うことで、この孤独感はさらに強まります。
家族や友人からのサポートが乏しいと、必要な支援を得られにくくなります。とくに長年、妻がほとんどの家事を担当していた場合、夫が突然これらの役割を引き受けることになりますが料理、掃除、洗濯などの日常の家事全般に不慣れだと、生活の質が低下する恐れがあります。
こうした課題に対応するには、家族、友人、地域社会、専門家からの総合的な支援が必要です。心理的、社会的、経済的なサポートを受けることで、生活の質を維持し、喪失からの回復を助けることが可能になると感じています。
そのきっかけとして「まちの保健室」を利用してほしいと願っています。来月もまた第2水曜日の14時〜16時、「まちの保健室」は開いています。
私たちはいつでも待っています。
悲しみに寄り添う【がん遺族サロン】立ち上げへの決意
看取りの報告書BMさま
また「まちの保健室」については、大阪府看護協会のホームページで詳しく解説されています。
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
\YouTubeで動画配信を開始しました/
介護保険制度改正の肝2024〜知っておくべき制度解釈〜
6月13日に地域包括支援センターくつろぎ・上小阪・サンホームの3団体と東大阪プロジェクトが共催した研修会をアーカイブ配信しています。
講師:三浦浩史先生(株式会社シャカリハ代表取締役)
人口減少・少子高齢化の社会情勢は『鳥の目』で捉える
・人生100年時代
・労働力の低下
・社会保障費の増加
・医療・介護負担の増加
実務上の「肝」となる点はミクロな『虫の目』で捉える
・事業運営の適正化(業務継続・適性運営)
・地域包括ケアシステムの深化
・自立支援・重度化防止に向けた対応
・働きやすい環境つくり
・制度の安定性・持続可能性の確保
介護保険制度改正の解釈について知っておくべきポイントを解説していただきました。
とてもわかりやすい内容になっていますので、ぜひご覧ください。
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