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さいごまで連携するための「看取りの報告書」は“生ききる”姿を伝えてくれる

「退院した〇〇さんはその後どのように過ごされていますか?」
「在宅ではどんな療養生活を送られているのでしょうか?」

在宅医療を専門に行う私たちは、病院で勤務している医師や看護師の方々からこのような質問を受けることが少なくありません。

私自身も病院に勤務していた頃は、退院や転院した患者さんのその後の様子が気になり、主治医や外来看護師に尋ねていました。

そんな会話を通じて、患者さんが直前に亡くなられた事実を知ったり、ご家族が病棟を訪ねてきてくださった話をお聞きしたりすることもありました。正直に言えば日々の業務に追われる中です。「その方のその後を知りたい」という気持ちがなければ、こうした関心は生まれず、つながりが残ることもないでしょう。

病院では、患者さんが希望する「自宅でのさいご」を支えるために、診療情報提供書や看護サマリーを作成します。

医師同士が報告書を介在して連携を続けるように、看護師も同じく顔の見える関係を育むために連携を意識することが大切だと感じています。

そのような思いから、かわべクリニックでは、病棟看護師・外来看護師・退院支援課・MSW(医療ソーシャルワーカー)の皆さんにその後の様子をお伝えするために「看取りの報告書」をお送りしてきました。

 

≫「看取りの報告書」のバックナンバーはこちらから

 

看取りの報告書とは

お送りする看取りの報告書の対象となるのは、退院前カンファレンスに関わった患者さんや、退院支援課を通じて紹介された方、外来から在宅へ移行された方などです。

そして、報告書の内容は、次の通りです。

加えて、ご家族の心情の変化や、在宅ならではの課題・工夫・困難など、現場で感じたリアルを丁寧に記すよう、心がけています。

「看取りの報告書」を残すことは、私たち自身が行った看護を振り返ることにつながるのはもちろん、死生観を見つめ直す機会にもなります。

患者さんの死を“終わり”ではなく、“気づき”として受け止め、悲しみの中にも確かな意味や私たち医療者が受け取るべきメッセージを見出すことこそ、この看取りの報告書が持つパワーなのではないかと感じています。

繋がりのなかで生まれる循環

この報告書を読んだ病棟看護師や外来看護師、退院支援課、MSWの方々は、患者さんが自宅に戻ったあとの表情の変化や退院した後の生活の喜怒哀楽、実際の様子をうかがい知ることができます。

「患者さんがどのようにさいごまで生ききることができたのか、ぜひ教えていただきたいです。だから報告書を読ませてほしい」と待ってくださる声も増え、在宅医療と病院の間に信頼の橋渡し役にもなってくれています。

着実に在宅での看取りが増える今、病院が安心して患者さんを送り出すための第一歩として、バトンを受け取った側が看取りの報告書を記すことが不可欠なのではないかとさえ、思うようになりました。

だからこそ、私たちはこれからも、この報告書を書き続けていきたいと思っています。

報告書は悲しみや悔いだけでなく喜びも伝えてくれる

最初は「報告書」として書き始めたこの取り組み。今も名称は報告書のままですが、少し見方が変わってきたように感じています。

看取りの報告書は、亡くなられた方の“生ききった姿”を伝えるものであり、それは次の誰かが“豊かに生ききる”ための大きなヒントにもなる。

つまり豊かさそのものがバトンのように受け継がれると思うのです。

誰かが生ききる様子は、普通なら家族や友人をはじめとする大切な人たちにだけ、見届けられ、伝わるものかもしれません。

しかし、看取りの報告書は、直接知り合いではなくても、私たちより少し先にさいごを迎えた先輩たちが残してくれた贈り物のように思えるのです。

「私も、あの方のように生ききりたい」

「さいごまで、そんなふうに過ごせるんだ」

「そのような無念な気持ち、どうすれば避けられるだろうか」

誰もが生まれて初めて、人生一度きりのさいごに向き合う姿。それは、悲しみだけに包まれたものではなく、優しさや豊かさにも満ちているのではないでしょうか。

その誰かが“生ききった等身大の姿”を誰が描き、誰が伝えるのでしょうか。

さいごの時を共に過ごさせていただいた私たちの大切な役割だという想いはいつも消えません、だから私たちはこれからも書き続けます。

こちらから、これまでに公開した「看取りの報告書」バックナンバーがお読みいただけます。関心を持っていただいた方は、1本ずつお読みください。

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