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      医療法人綾正会かわべクリニック

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【看取りの報告書】Rさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

中国人のRさま。
言葉の壁を越える愛。でも、愛だけでは救えない。
言葉の大切さを理解し、価値観の違いを受け入れることも重要…。

Rさまのこと
~言葉が全く通じない。アプリでの会話も通じているのかさえわからない…でも、言葉を超えた信頼関係を楽しいと感じる~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

いつもお世話になっております。Rさまについてご報告させていただきます。

中国人のRさまは、言葉の壁をどう乗り越えるのかといった課題がある中でスタートした在宅療養でした。

アカシジア症状*が持続しており、「落ち着かない、不安、どうしたらいいの?」と退院初日の夜にメールをいただき、夜間訪問いたしました。
以後、頓服の使用方法や連絡の仕方などを表に作成し、信頼関係を構築できるまで、訪問看護師と協力して1日に2、3回訪問。
精神科医師(非常勤)の協力を得て薬剤調整をしたところ、退院して1ヶ月後くらいから、まとまった睡眠確保が可能となりました。

ご主人さまは「妻を外に連れていってあげたい」という気持ちが強くていらっしゃいました。
私達は無茶だと思いましたが、ご主人さまは福祉道具担当の方と階段昇降機車椅子の練習を行い、退院10日後には毎日のように散歩ができるようになりました。
時には奈良、京都、神戸に行かれ、その写真を見せて私達を驚かせてくれる事もありました。

しかしそれから1ヶ月後には疼痛の増強、食欲の減退や嘔吐などの消化管症状が出現。
「何とか誕生日を迎えさせたい、その願いは叶うのか!」というご家族からの問いに、毎日のように状態・状況を説明いたしました。
ご主人さまや娘さまの愛情深い懸命な介護のおかげもあり、迎えた誕生日には中国のご友人や私達を招待していただきき、ご主人さまの美味しい手料理に舌鼓を打ちました。

その後は日を追うごとに状態が悪化。
予後数日と思われるときに、ご主人さまから「何もしてあげられない事が不安、ただ看ているだけなんて耐えられない!入院して点滴をしてもらった方がいいのではないか」といった訴えがありました。
娘さまのご友人に通訳を依頼し、ご主人さまが感じていることや今後の経過などをしっかり話し合い、最終的には自宅で看取る事を望まれました。

やがて、ご主人さまと娘さまが見守る中、安らかに永眠されました。
言葉の壁で悩むこともありましたが、それ以上に気持ちで繋がることが出来た関係であったように思います。

Rさまとの思い出は数多く、ここには書ききれないですが、これでご報告とさせていただきます。
ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

*アカシジア症状:静座不能症とも言い、「座ったままでいられない」「じっとしていられない」「下肢のむずむず感」「灼熱感」「下肢の絶え間ない動き、足踏み」「姿勢の頻繁な変更」などの症状

[ケアを振り返って]

英語も全く通じない、中国語しか話せないRさま。
病院では不穏(行動が活発になり、落ち着きがない状態)で、家族も付きっ切りで疲弊していました。
「このような状態だけれども、家に帰れないか?」とのご相談に、言葉が通じないという点でコールがあった時にどのように対応するのか、日々の診療をどうするのか、「苦しみを聴ける人」になれるのか…。
受け入れに迷いはありましたが、在宅チームで「何とかなるか!」と覚悟を決めました。

初回訪問では、みんなが翻訳アプリを駆使して会話をするものの、変換されている中国語が正解かもわからず、ご家族の言葉を日本語に変換してもなんだか変な日本語で困り果てていたところ、ケアマネージャーさんが中国語を話せる方を連れて来て下さり、通訳をしていただくことができました。

そんな状況で始まった在宅療養。
お互いに、言葉だけでなく全てが手探り状態であったけれど、「Rさまが穏やかに過ごせるように」という気持ちで足を運び続け、何とか徐々に症状が改善しました。

ときには訪問時刻に不在のためメールすると、「散歩中」との返信。「長い散歩だなー」と心配していたら、京都の写真が添付されており、たびたび驚かされました。
それでも、今の時間と「将来の夢」を支えに、一日一日を大切に過ごされていました。

状態が悪化してからは、いつも不安げなご主人さま、それに対して理解を示してくれる娘さまとの間でどのような会話がされているかも、こちらもわからず困っていました。
すると、娘さんのご友人で日本語が話せる方が通訳をしてくださり、中国での看取り、ケア、そしてRさまの死生観について理解することができました。
こうしてRさまとご家族さまの望まれる医療を提供することが可能となり、最期まで自宅での看取りに繋がりました。

いろいろな意味で大変だったけれど、これほどまでに在宅チームが団結して情報を共有して、一つのことに関わったことは、大きな成果であったと思います。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

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