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AQさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AQさまのこと
筆談~私は死ぬまで家に居ます!!~コロナ禍で強くなった家族の絆

いつもお世話になっております。AQさまについてご報告させていただきます。
2018年より乳がんおよび肺がん治療を貴院で行っていただき、併診という形で在宅訪問診療を継続しておりました。
翌年秋に呼吸状態が悪化した際には、スムーズに入院を受け入れて下さり本当にありがとうございます。
退院された後も、基本的には穏やかな時間を過ごされ、徐々にPSが低下する中でも、ベッドは入れたくない、布団で寝たい、酸素も出来るだけつけたくない、でもしんどいという想いを、手話や筆談で伝えて下さいました。

AQさまにとって、どのような生活であれば穏やかに過ごせるのか、そして、そばにいる旦那さまも穏やかに見ていられるのかを常々、筆談で話し合いをいたしました。
呼吸困難とうまく付き合いながら、ベッドやシャワーチェアーを導入し、最期まで自立した生活をされていました。

そして、亡くなる数日前に、はっきりとした字で「先生、私、家で逝きたい。」と書かれたAQさまに、在宅チーム一丸となって支えていくことをお伝えしました。

そのような中、息子さまがコロナウイルス感染の方との濃厚接触を疑われ、離れた距離でのお見舞いを余儀なくされるなど、色々ありました。
AQさまが息子さまに手話で『ありがとう』と伝えられ、それが最後の会話となりました。

ご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
このたびは、ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。 

ケアを振り返って
AQさまも旦那さまも聾唖であったため、私たち医療者との会話は筆談、もしくは口を読む、急ぎでない連絡はFAX、急ぎのとき『ワンコール』、もしくは息子さまに連絡して息子さんからの連絡を受けて対応するなどの様々な工夫を行い、1年半もの時間を共にしました。
やがて私たちも手話を少しずつ覚え、挨拶程度の手話を交わせるようになっていました。

そんな穏やかな日常が一変。
コロナウイルス感染症が拡大し、誰もが見えない敵と戦わないといけない状況になり、不安が高まっていきました。

AQさまの体調も病状の進行と共に寝ている時間が長くなり、食事摂取量の低下し、筋力の低下も認められました。
最期の時をどこで過ごすと穏やかなのか?耳が聞こえないAQさまにとって、医療スタッフはマスクをしているので口を読めない。
感染対策を講じながら筆談をするのには、手間も時間を要してしまう…。
入院すると夫や息子に会えない。
AQさまも旦那さまもメールが使えない。

AQさまにとって入院は、「穏やかになる条件」がほとんどありませんでした。

だからこそAQさまを支える私たちは、自宅で穏やかに過ごせるように、症状緩和だけでなく、本人・家族を含めたケアが必要でした。
コロナ禍のためマスクを外して話をするわけにはいかないので、マスクをしたままで出来るだけ身振り手振りで、表情も今まで以上に意識して話すように心がけました。

症状の有無の問いに関しては、訪問当日に質問表をFAXして、痛みや食事の有無など書き込んでもらいその紙も元に診察をするなど、滞在時間をやや短縮し、でも質を担保できるように工夫しました。

コロナ感染者で病院がひっ迫する中、AQさまより「私は死ぬまで家に居ます!!」と力強い筆圧で書かれた紙を渡され、AQさまの想いをみんなで共有。
ベクトルを合わせてケアを進めていた矢先、息子さまの職場でコロナ感染者が発生。息子さまが濃厚接触者となったため、AQさまとの接触を避けざるを得なくなりました。窓ガラスの襖越しに手話で会話をされるAQさまと息子さまが交わした、最期の言葉が「ありがとう」。
コロナウイルスがやるせないと思った瞬間でしたが、自宅だったからこそ、そばにいて最期の時を見守ることが出来ました。

家族の絆や、言葉のもつ力、想いを形にすること。
今まで当たり前だと思っていたことが当たり前ではなくなった瞬間に、私たちが本当にすべきことが、見えてきたような気がします。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
【多職種で関わる退院前カンファレンスでのポイント】
病院と診療所・訪問看護・薬剤師・介護職の連携での注意点(ポイント)、私たちが心がけていることをまとめてみました。

・前編

・後編

退院にむけての準備です。準備を進めていく中で、大切なこと…
私たち医療介護従事者がどのように考え、動いているのかをご覧いただけます。
医療介護職を問わず、参考になります。
是非、ご覧ください!

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