かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。
いつもお世話になっております。
貴院を退院されたBJさまのご報告をさせていただきます。最初はオブジーボ投薬日に通院することを目標にされていましたが、日々低下する体力のなかで、通院できないことを静かに受容された様子でした。
今回の療養を機に同居された娘さまは、集中治療室の専門看護師教育課程を修了されたばかりでした。娘さまはお母さまのケアを通じて、尊厳と価値観に対する深い理解を得る中で、様々な感情と葛藤を抱えていらっしゃいました。
日々の訪問の中で、娘さまの思いや悩みをお聞きしながら、BJさまが心地よく過ごせるように症状のコントロールに努めました。大切な高校生のお孫さまも、いつもそばにいて、最後の瞬間まで優しく寄り添いました。そして、意識が薄れる直前に、娘さまに遺産に関わる手続きを伝え、退院からわずか12日後の13時7分、家族に見守られながら、穏やかな眠りにつかれました。
BJさまの在宅療養は、始めは治療の希望を胸に抱えながら始まりましたが、最終的にはご家族皆さまが納得できる形で看取りが行われたこと考えております。これからも、BJさまの思いを胸に、皆様のご支援とご協力のもと、大切な患者様に温かなケアを提供してまいります。
この度はご紹介いただきありがとうございました。今後ともどうぞよろしくお願い申し上げます。
前回の看取りの報告書(後悔しないように生ききった【BIさまのこと】)では、残された時間について触れました。「なぜ時間の重要性」とケアが関係しているのか、今回はもう一段階、考察を深めてみたいと思います。
以前から、在宅訪問診療の開始時期や治療の継続期間といった課題に時間の要因が関与してきました。
最後まで治療を続けることが、残された時間にどのような影響を与えるのかを考えることは、時間の適切な活用を考えることと同じくらい重要です。
人生にはやり直しの機会(時間)は与えられません。在宅訪問診療においては、治療期間や方針、患者さんと家族の願い、医療的な判断、過ごし方など、多くの要素が時間と密接に結びついています。
BJさまと、私たちかわべクリニックの関わりは、結果的にわずか12日間でした。もっと早くケアを開始できていたらと思わずにはいられません。
そもそも早期の緩和ケアによって生存期間を延ばす可能性がある1)ことはすでに指摘されています。さらに早い段階からのグリーフケアは立ち直りを助ける役割を果たすことがあります。ただし、そのためには時間が必要であり、患者さんと家族によるケアが生前からの悲嘆のプロセスを大きく変化させることもあるのです。
退院当初、ご本人はその後も外来治療を希望していましたが、現実的にそれだけの体力は残されていませんでした。お母さまの希望をかなえることが難しいと、看護師である娘さんはすでに理解されていましたが、母が気を落とさないようにと「外来通院ができたら治療しましょう」と医師に依頼しました。実際には適切なサポート方法は見つからず、安易な励ましをすることで逆にお母さまの気持ちを沈めてしまうだけになりかねませんでした。
娘さんには仕事上、病院での看取りの経験は多くありました。しかし自宅で看取るという未知の経験に対しては不安が募ります。集中治療室では、人々を救命している自分が、母に対して何もできない無力さから、自己嫌悪に陥ってしまったのです。
このようにご家族の行動や態度から予期される悲嘆に対して適切な支援をできれば、大切なご家族を亡くした後の悲嘆の軽減に繋がります。そこで私は看護師としてではなく、BJさんの娘として、在宅ケアの事実と心構えについて丁寧にご説明しました。
その結果、娘さんからは次のような言葉が返ってきました。
「母とこんなに一緒に過ごすことは、高校生以来かもしれません。母の顔を見るだけで安心します。積極的な治療も大切ですが、いつかは終わりが訪れます。終わりのそのとき、私はどこで誰と過ごしたいか、母を通じて教えられた気がします。病院で過ごしていたなら、遺産整理の時間も持つ余裕はなかったです。今でも何かできることはないか、辛くないかと不安はありますが、日々の変化を通じて時間の尊さを感じられるようになりました」
このように、見方を変えれば普段感じることのない価値を日常の中で見つけ、共に過ごす喜びを実感できるのです。とはいえ当事者だけで気づくことは困難で、私たちのような第三者だからこそ、気付きのきっかけになれることもあるのだと思います。
ご本人と、大切なご家族が自宅で過ごすからこそ、限られた時間を特別な思い出として大切に共有できます。そして家族、大切な人によるケアが、お互いにとって不可欠なものであると感じることで絆を再確認し、安心感や達成感を得られるのだと思います。
これらの経験は、やがて悲嘆(グリーフ)の過程を辿る中で、残された家族にとって尊い助けや拠りどころとなるのだと信じています。
本来、医療者と患者さんやご家族との間の信頼関係を構築するのに時間の長短は関係ありません。付き合いが長ければ、信頼を得られるなどというものではないからです。
ただし、お別れを意識する時間はしっかりと確保される方がよいと思いませんか。あまりに短時間だと、絆を感じるゆとりさえありません。
私たちは、家族の苦しみをキャッチする一方で、患者さんと家族との交流によって、お互いに穏やかさが生まれるような機会を積極的につくり出すことを大切にしたいと考えています。そのためには時間も必要です。
もちろん最期の時間を過ごすご本人のために。そして、心に空いた穴と向き合いつつ、前へと歩み始めるご家族たちのために。
1)「転移性非小細胞肺癌患者に対する早期緩和ケア」より(2010年、医学雑誌「New England Journal of Medicine」)
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>ぜひご参加ください<<
【縁起でもない話をしよう会・第29回(参加費無料)】
アドバンスケアプランニング研修会のご案内です
ご興味をお持ちの方は、是非ご登録ください!
(先着90名となっています、お早めに!)
話題提供:
ビリーブメントカンファレンスの取り組み
講師:鉾立優作さん
後半は、話題提供を受けての語り合いの時間です。
5名程度のグループとなり、自由に縁起でもない話をしていただけます。
日時:令和5年8月24日(木)
18時30分から20時
場所:オンライン(Zoom)
定員:90名程度
参加費:無料
★チャンネル登録お願いします★
東大阪プロジェクトでは、医療介護従事者だけでなく地域包括ケアシステムに関わる皆様に役に立つ情報提供を行っています。
「チャンネル登録」していただければ幸いです。
かわべクリニックでは、これまで患者さんが亡くなられたあと、四十九日と1年が経過したころに「グリーフカード」をご家族にお送りしてきました。
グリーフケア(悲嘆ケア・遺族ケア)といって、患者さんご自身と同じく支えてこられたご家族や友人のケアにも注力したいという思いからです。
「東大阪プロジェクト」でも、悲しみを吐露して、共有できる居場所づくりのために、今秋にがん遺族サロンを立ち上げたいと準備を進めています。
がん遺族サロンを開催するには、私たちの知識を整理し、深める必要があると考えて『グリーフと遺族支援のいろは2023』に参加しています。
講義ももちろんですが、受講生のためのオンラインサロン(受講生限定の交流会)も学びの場として重宝させていただいています。
また、グリーフケア セラピスト森田藍子さんが主催する「Gift of Love」の研修にも参加予定です。
こうした学びや交流を土台として、方向性を定め、がん遺族サロンを運営していきたいと考えています。
大切な人を失うという経験は、看護師として私たちが直面する現実です。
2021年の厚生労働省の「人口動態統計」によれば、日本での年間死者数は約127万人。この数字には、疾病や老衰、事故、自然災害などによる死者が含まれています。がんによる死者は38万1497人であり、全死因の26.5%を占めています。
言い換えれば、4人に1人ががんで亡くなっています。どのような死因であれ、悲しみは一般的に共通の性質を持つと考えられています。死別は深い喪失感や悲嘆を引き起こし、個人の感情や経験に大きな影響を与えることがあります。
厚生労働省は、喪失や悲しみに直面している方々が適切な支援を受けられるよう、心理的なカウンセリングやサポートグループの重要性を認識し、喪失を経験した方々への支援に関するガイドラインや情報を提供しています。
私たち看護師も、そのサポート体制を通じて患者様とその家族が喪失の痛みを乗り越える手助けをする使命を担っています。
私は在宅訪問診療の看護師として、これまで8年間で約600人の患者さんの看取りに携わってきました。グリーフケアに関連するニーズはおよそ4倍に上るとされています。亡くなる方は1人でも、死を悲しむ方はもっと大勢いるということです。
がん遺族のニーズは多岐にわたり、潜在的なニーズも考慮すべきと考えています。そのため、遺族のニーズに適したケアを提供するには、グリーフケアの幅広いアプローチが必要です。
しかし遺族支援に関する取り組みは、ケアの重要性は認識されながらも、まだまだ充分ではないとも感じます。これが、私にとって最も大きな課題でした。
東大阪にもがん遺族サロンを立ち上げるにあたり、『I for you Japan』のサロンに参加し、視察や聴講を通じて学んだこと。そして、今回改めてグリーフケアの基本を学び直すことで、知識と実践の両面で遺族ケアを提供したいと考えました。
がん遺族サロンの立ち上げに向けて、死別後も個別のニーズを考慮した家族ケアを続けるアプローチについて、現時点での学びを含めた今の思いを述べてみます。
このなかでも特にお伝えしたいのは、「本人が存命なときから、遺族ケア・グリーフケアは始まっている」ということです。
患者さんへのケアについて、患者さんと肯定的に評価し、家族とも、提供したケアや患者さんの反応を肯定することが大切なのです。
本人にとって最善の方法、最善と思える方法を選択して、ケアしたとします。
ケアする側も受ける側も、つらさ、しんどさはあったかもしれません。それでもよかった点についてていねいに評価することが大切です。
家族と一緒に、本人が見せてくれた穏やかな表情や聞かせてくれた言葉を、肯定的に評価するのです。
亡くなったあと「あのとき、あれをしてあげればよかった」と思いがちですが、「あのとき、〇〇さん気持ち良さそうだったよね。してあげられてよかった」などと肯定的な言葉で包むことで、亡くなった事実の悲しさは消えなくても、一定の満足感・充実感が得られ、家族の今後の「生」を支てくれると私は考えています。
ほかにも、患者さんが家族には直接言えずに、看護師である私に言葉を伝えれくれる場面があります。
患者さんが死を悟ったときにあるもので、訪問先からの帰り際、患者さんの代わりに家族へ言葉を伝えたり、亡くなったあとに代弁して差し上げることがあります。
これも、大切なグリーフケアの形だと思います。そのためにも、看護師には患者さんの言葉を聴き漏らさず、大切な人へとつなぐ役割も担っています。
身近に気にかけてくれる人がいるだけで、それは大きな支えになります。
「悲しみは消えることはない」と言われる通り、だからこそ、『悲しみ』を含む『生』を支えるグリーフケアが重要なのです。
医療・介護関係者には「何が正しいか」を示す倫理綱領がありますが、遺族会には存在しません。だから「答え」が見当たらずに悲しみに暮れたまま悩んでしまうことがあります。だからこそ、基本的なルールを設けることで看護師たちが責任を果たすことが重要です。
また医療者のグリーフケアの視点も欠かせません。ご家族の悲しみを受け入れつつ、自分自身の感情との境界線を守る方法もまた重要なのです。
境界線は感情、財政、責任、性的なこと、そして時間に関しても確立されているべきだと考えます。
さまざまな遺族会同士の連携も大切です。場を提供する責任、その場を守る責任を共有するとともに、遺族会での後継者の育成も課題となりえます。これにより遺族会同士のつながりが継続し、「悲しみを共有しながら支えを受ける」大切な場を守り続けることにもつながるためです。
いつまでサロンが必要か、どのタイミングでサロンを頼りたくなるかはさまざまです。将来を見越せば、誰もが遺族となる可能性もあります。必要になったときにいつでもサロンでつながりや安らぎを得られるように、5年後、10年後といった長いスパンで存在し続けなくてはなりません。常に「その場」があり続けること、提供し続けられることが求められていると強く感じます。
私たちも東大阪で、持続可能かつ支えになる居場所を提供するため、理想的ながん遺族サロンの形を定めて模索していきたいと思います。
【今週の東大阪プロジェクト】
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後半は、話題提供を受けての語り合いの時間です。
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日時:令和5年8月24日(木)
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「縁起でもない話をしよう会」とは、医療や福祉に関わる方々と地元の人々が参加する、鹿児島にある妙行寺さんが発案された地域交流イベントです。
普段はあえて口には出さない「縁起でもない話」をみんなで語り合い、これからの人生をいかに生ききるかを考えるきっかけ作りの一つとして、東大阪プロジェクトでも継続的に開催しています。
今回はいつもと少し趣向を変え、テーマは「癒す側の人がまず自分を癒すこと」。
自らの癒しに着眼し、エサレンマッサージの資格を取得されている看護師・社会福祉士の藤原知美さんにお話しをうかがうとともに、実際にセルフタッチングを実演していただき、体験させていただきました。
藤原さんは、2005年にアロマインストラクターの資格を取得し、アロママッサージのボランティア活動を行っておられました。
看護師として勤務していた中で、触れることの質に興味を持ち、米国の心理学研究所でエサレン®️マッサージの資格を取得されました。
普通のマッサージとの違いはロングストローク、つまり頭の先から足の先までをつなげるワークです。「寄せては返す波のリズムのようにゆったりと全身を流す」と藤原さんはいいます。
「足裏のマッサージは痛気持ちいい」「肩をもむと肩こりが緩和される」など、私たちは部分的に考えがちです。
しかし藤原さんは
という考え方で取り組んでおられます。このエサレン®️マッサージに出会うまで「自分自身の心の傷や向き合い方に悩んでいた」という藤原さんですが、「気づき」と「今ここに存在すること」に意識をあてるマッサージで、エサレンの考え方を元にしたセルフタッチングを知りました。
触れることで、「幸せホルモン」として知られるオキシトシンが分泌されます。「触れること」のすばらしさを多くの人に知ってもらい、癒す人がまず自分を癒すことが大切だと願い、活動されています。
藤原さんのご説明では、セルフタッチング、自分自身に触れることで
などの効果が得られると説明してくださいました。
今回も全国各地から46名もの皆さまにオンラインでご参加いただきました。
いつもながら積極的なご参加、本当にありがとうございます。
講演の詳しい様子は、配布資料と上記の動画をご覧ください。
講演に使用した使用はこちらからPDFをご覧いただけます。
「こんな時には癒されたい(こういう時、こういう時間)」について感想も含めて自由に語っていただきました。
会の終了後、参加者のみなさまから感想をいただきましたので、いくつかご紹介させていただきます。
次のような応援のメッセージも届いています。
さらに悲嘆(グリーフ)のケア におけるお困りごとをたくさんお聞かせいただきました。
など貴重なご意見をもとに、今後の「縁起でもない話をしよう会」を、これらのご質問にお答えできるような会にしたいと考えています。
「つなぐ」というよりもっと自然に顔が見えるような関係を築き、
お互いに気軽に相談できる 『誰もが主役の街』を目指して、
東大阪プロジェクトはこれからも講演会・研修会を定期的に開催していきます。
まだご参加いただいたことのない方も大歓迎です、ぜひご参加ください。
【今週の東大阪プロジェクト】
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【縁起でもない話をしよう会・第29回(参加費無料)】
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講師:鉾立優作さん
後半は、話題提供を受けての語り合いの時間です。
5名程度のグループとなり、自由に縁起でもない話をしていただけます。
日時:令和5年8月24日(木)
18時30分から20時
場所:オンライン(Zoom)
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参加費:無料
かわべクリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。
これまでお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出とともにご紹介したいと思います。
いつもお世話になっております。
先日ご紹介をいただいたBIさまについてご報告させていただきます。
退院後の初めての訪問時、BIさまは入院中の出来事や先生方の心優しい気遣いに感謝の意を述べられました。また呼吸が促迫しながら、途中で娘さまから休憩を促されも、1時間以上お話をお聴きする機会をいただきました。
痛みに関しては、できる限り自由な動きができるようにするべきと判断し、オキファスト持続皮下注射からフェンタニルテープに変更しました。(がんによる激しい痛みを緩和する効果)
幸いなことに、痛みをうまくコントロールできました。在宅酸素は使用しつつも、自由に動けるようになったことで、BIさまからは「10年来文通している彼と最後に会いたい」という希望があり、そのために髪を整え、幸運にもその願いを叶えることができました。
その後も日中はパッチワークや筆絵などに取り組まれ、穏やかな時間を過ごしていらっしゃいました。
しかし、同じ月の下旬には終末期せん妄症状が現れたため、BIさまが強い口調で話す様子を娘さまは受け入れられず、涙を流しながら鎮静を希望されました。看取りの過程に起こる一時的な現象であることを説明し、薬剤を調整するとすぐに改善され、娘さまも穏やかな表情で安心された様子でした。
そして翌月4日未明に、ご家族に見守られる中で安らかに永眠されました。娘さまからは「母は30年前に乳がんになりましたが、それでも明るく元気に闘病している姿は、同じ治療を受けている他の患者さんたちにとって希望となる存在でした。途中、苦しいこともありましたが、最後に先生方との出会いがあったことで、穏やかな最期となり、本当に良かったです」と誇らしげにおっしゃられていました。
この度はご紹介いただき、誠にありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。
今、私はこのようなお看取りをする仕事をしていて、たくさんの方々と出逢います。
そこでふと、考えることがあります。
「自分はどのように生ききりたいか?」
自分の希望を叶えるには、何が必要なのでしょうか?
・ひと
・もの
・お金
・時間
おそらく、どれもある程度は必要だと思います。
このなかで今回は、時間について考えてみます。
終末期がん患者さんのケアを行っていると、家族からは「急に亡くなった」という声が聞こえ、医療従事者は「急変」という表現を頻繁に使うことに気づきます。
「急変」とは文字通り、患者さんの状態が急に悪化することです。定義はさまざまですが、意識障害や呼吸停止、心停止など何らかの原因によって突然に患者さんの生命が危機的な状態に陥ることを指します。
では、がん終末期における急変について考えてみましょう。
本当に突然なのでしょうか?
事前に予測することはできないのでしょうか?
核家族化が進んだ現代、看取りの経験がない家族が増えており、病院で死を迎えることが一般的になっています。
死に向かうプロセスを身近に体験する機会がないため、家族の最期をそばで見守ることに不安を感じることも理解できます。
そのため、私たちは日々の丁寧な説明やケアを通じて、不安を和らげる努力をしなければなりません。
私たちはどのような説明を行うことが適切でしょうか? まず「病の進行」の理解が前提ではないかと考えます。
つまり、死へと至るまでのプロセスを知ることです。死へと至る進行は個人によって異なることを理解することで、患者さんの状況に合わせた最善のケアを考えることができます。
厚生労働省が2021年に調べた「人口動態統計(確定数)」によると、死因のトップは「悪性新生物」で、26.5%を占めています。次に多いのは「心疾患」で14.9%、以下「老衰」10.6%、「脳血管疾患」7.3%、「肺炎」5.1%と続いています。
人はいずれ終わりを迎えます。病によって亡くなることが多い中、どのような疾患を抱えるのか?
この病の軌跡を知っておくことで、残された時間を豊かにいききる可能性は広がります。
<病の軌跡 (3種類)とがんの病の軌跡>
出典:Lynn J, Adamson D. M:Living well at the end of life Adapting health care to serious chronic illness in old age, RAND Health, P.1〜19, 2003.
私が日頃関わっているのはがんを患う方が特に多いです。
がんは当初の数ヶ月から数年間、全般的に機能は保たれますが、最期の1~2カ月の急速な機能低下が特徴です。
つまり亡くなる2ヶ月くらい前から変化が出始め、1ヶ月前くらいになると週単位で状態が悪くなり、1週間を切ると昨日と今日で状態が変わってきます。
したがって、がんの終末期であらゆる面での介護が必要となるのは、最期の1~2カ月です。
だからこそ、在宅医療によってしっかりと症状緩和がなされれば、ご家族の介護の負担も長期にはならず自宅での看取りは十分可能であると言われています。
このような病の軌跡を知っておくだけで、残された時間に「自分は何がしたいのか」「何ができるのか」そのために何に困っていて「何を解決すれば自分の希望が叶えられるのか」を考える時間が与えられます。
酷な話と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分が豊かに生ききるための大切な時間と自由を私たちが奪ってはいけません。
丁寧にきちんと誠実に説明することで、患者さん自身で考え私たちに気持ちを伝えることで希望を実現できます。
私たちは現実から目を背けてはいけません。
死と向き合う患者さんから私たちが逃げず、誠実に接することで、患者さんが豊かに生ききる可能性は残るのです。
【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます
>ぜひご参加ください<<
【第2回まちの保健室(参加費無料)】
より豊かな人生を楽しめるように。
「まちの保健室」はいつでもあなたをお待ちしています。
【申し込み】
不要です。当日会場にお越しください。
☆受付定員には限りがあり、相談をお待ちいただく場合もあります
開催日:2023年8月9日(水)(毎月第2水曜日)
時間:14:00~16:00(入退室は自由です)
内容:健康チェック・健康相談・がん遺族サロン
会場:カトリック布施教会 教室4
東大阪市永和1-10-10
河内永和駅より徒歩5分
参加費:無料
病院へ行くほどではないけれど、最近ちょっと気になることがある。
さまざまな不安や悩みを看護職に 気軽に相談できる場所。
生徒の相談や癒しの場でもある学校の保健室のように、さまざまな不安や悩みを看護職に気軽に相談できる場所。
さびしさ、悲しさ、会いたい気持ち、いろいろなこと、話しにきませんか?
こころの中の大切な人と一緒にふたたび歩き始める。そのきっかけにしてください。
こどもからお年寄りまで、誰もがより健やかに生きるために、人と人がふれあい、より豊かな人生を楽しめるように。
「まちの保健室」はいつでもあなたをお待ちしています。
※クリックするとPDFが拡大表示されます
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東大阪プロジェクトでは、医療介護従事者だけでなく地域包括ケアシステムに関わる皆様に役に立つ情報提供を行っています。
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2月の中旬に東大阪プロジェクトを通して交流のある東大阪大学介護福祉学科の馬込武志教授がふらりとクリニックをのぞいてくださいました。
そのとき日頃から『縁起でもない話をしよう会』を開催している私たちに「人はなぜ、終わりを考えないんでしょうかね?」と問われたのです。
このときのエピソードをきっかけに、今日のテーマでもある「なぜ、私たちは縁起でもない話を避けるのか」というテーマで学会で講演することとなりました。
馬込先生からお題をいただいた私たちは、どのようなお話が良いのかを考えました。
今回の対象は「保険医療行動に関心があり、家族や知人が幸せに生きること」に対する勉強熱心な市民の皆さんです。
・馬込先生が私たちの活動を「新しいトータルケア」と名付けてくださったこと
・保健医療行動の定義が「人々がウェルビーイングで自分の人生を全うするために行う行動全般」であること
私たちが行う「東大阪プロジェクト」の目的は、真の地域包括ケアシステムを実現することです。
地域包括ケアは、医療や介護が日常的に必要な方でも住み慣れた地域で生活し続けられるように支援されることであり、予防や生活支援、また亡くなった後の心配も可能な限り減らして差し上げるサポートが欠かせません。
このように頭を整理していると、私たちが皆様に呼びかけている活動そのものがまさに保健医療行動と合致するのだと感じました。
ただし私たち医療者の専門は治療や緩和ケアなど範囲が限られるため、従来の多職種連携の概念を拡大しなければ、真の地域包括ケアシステムは到底実現できないと考えるようになりました。
その結果として医療・介護分野以外で、人々が安心して生活する、または安心して最期を迎えるために必要な司法書士、葬祭業、教会、寺院、ファイナンシャルプランナーのような方々との連携の輪が広がり始めています。
このブログを読んでくださっている方は、人生会議(ACP)の意味はおわかりかもしれませんが、残念ながら一般的な知名度はかなり低いのが実情です。つまり、家族や大切な人同士で「自分がどのように生き、どんな最期を迎えたいか」を話す機会さえないことになります。
真の地域包括ケアシステム実現の道のりはまだまだと言わざるを得ません。
私たちの講演を聞いていただき、自然と行動が変容され、「大切な人に言葉にして伝える」一歩目を踏み出せるような内容に仕上げました。
講演テーマでもある「なぜ私たちは縁起でもない話を避けるのか」について、私たちがお話しした仮説は次のとおりです。
1. 死が想像できないから?
2. 話さなくてもわかってくれるから?
3. 考えたくないから?
4. お互いに切り出せないから?
「死」という誰にでも訪れる未来の話をするのは「縁起でもない」と避けられがちですが、ご本人が意志を示せなくなった後では、家族は推し量ることしかできません。しかし、ご本人やそのご家族が準備を行っておくことで、不安を感じることなく幸せとともに最期を迎えられます。
どのような最期を望むのか、自身が亡くなった後のことでどのような不安があるか、「人生会議」として話し合っておくことが大切だということをこの講演でも繰り返しお伝えしました。
東大阪プロジェクトの活動の一環として定期的に行っている「縁起でもない話をしよう会」は、まさに避けられがちな話題をあえてカジュアルに話し始めることで、心のハードルを下げてみようという取り組みです。
・予後半年で、手元に1000万円あればどのように使いますか?
・どんなお葬式をあげてほしいですか?それはなぜですか?
・最後の晩餐で、あなたは誰と何を食べたいですか?それはなぜですか?
このような普段だったらしない(自然と「避けたい」)話をあえて取り上げることで、大切な人だからこそ話ができることの重要性に気づいていただきたいと思います。
少しでもACP(人生会議)に対する理解が進み、これまで取り組んだことのない方の行動が変容されたら幸いです。
そして貴重な機会をいただいた東大阪大学の馬込武志教授、大会関係者の皆さまに心からお礼を申し上げます。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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内容:健康チェック・健康相談・がん遺族サロン
会場:カトリック布施教会 教室4
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