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【看取りの報告書】Pさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

「眉間にしわがよって苦しそうな夫を見て、私が逃げたくなった。辛いなら眠らせてあげるのがいいのではないかと思った。でも、それは私の逃げだった。」

Pさまのこと
~家族にとって見守ることしかできない辛さ、難しさ~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

昨年秋に貴院を退院されたPさまについて、ご報告させていただきます。

退院後、輸血の効果もあり貧血症状が改善され喜んでおられたのですが、自宅ではベッドを使用していなかったため、床からの立ち上がりが出来ず、落ち込んだ様子が見受けられました。
これからの療養生活において、生活の質を落とさない方法が重要であることを説明させていただき、介護用ベッドをすぐに導入。
それ以来、「シャワーをするのにシャワーチェアーがあればいいな」と自ら利用したい物をお伝えくださるようになりました。

しばらくの間は体調も安定していたため、行きは歩いて、帰りは車椅子での近所の散歩を日課とし、奥さまと有意義な時間を過ごされていました。

12月中旬より状態が悪化。
辛抱強いPさまは「辛い」「こうして欲しい」などと弱音を訴えることが少なく、奥さまは「何かしてあげたいけど、出来ない」辛さを抱えておられました。
ただ見守ってくださることがPさまの安らぎとなること、そして私たちが奥さまを支えることを、毎日のようにお伝えさせていただきました。

そして、クリスマスを過ぎたころ、息子さまに見守られ安らかに永眠されました。

奥さまより、「ガンと診断された時に、『最期はホスピスで』と決めましたが、やはり家に勝るものはないです」と言っていただけたことが私たちの喜びです。

今までPさまの治療を5年間にわたりを支えていただき、ありがとうございました。
今後ともよろしくお願い致します。

[ご家族さまからの手紙]
Pさまの奥さまからお手紙をいただきましたので、ご紹介させていただきます。

拝啓 新春を迎えお健やかな日々をお過ごしのことと存じます。

さて、故人が大変お世話になりましてありがとうございました。
葬儀を無事済ませ、悲しさや淋しさとホッとした気持ちが入り混じった落ち着かない日々でございます。
主人が中心の生活をしていましたので、いないことに慣れるには時間が必要なようです。

ガンと診断された時に「最期はホスピスで」と決めて病院を選びましたが、やはり家に勝るものはないのですね。
あの時にかわべクリニック様に診療をお引き受け頂けなかったら、安心して退院することはできませんでした。
主人に「近くにいい先生がいらっしゃったよ」と話し、「よかったね!」と言ったことを思い出します。

この5年半、夫婦で病気に向き合う時間が持て、ある意味充実した時間を過ごせたと思っています。
そして、そのような時間が持てたことを幸せだったと思う反面、今思い出すのは、しんどそうな最後の一週間のことです。
あの時、もっと何かしてあげられなかったか、もっと何か言う言葉があったのではないか、と埒もないことを考えてしまいます。
亡くなる一週間程前、往診後に先生方と外でお話しをして部屋に戻った時、黙って天井を見つめ、悟ったような顔をしていました。
何も言わず、手を取り合ったことを思い出します。

私が辛い時に、辛いのが当たり前なのだと認め、気持ちに寄り添って下さったこと、励まして下さったこと、本当にありがとうございました。
「辛くて怖い」と声にすることができ、救われました。
主人だけでなく、私も心を込めてサポートし、支えて下さったことに心よりお礼申し上げます。

「もっと長くかわべクリニックの皆様にお世話になりたかった。もっとゆっくりと時間が流れてほしかった。」と思うことには切りがありません。
二カ月弱の短い期間でしたが、本当にありがとうございました。

まずは略儀ながら書中にてお礼申し上げます。

[ケアを振り返って]
倦怠感は「身体的・精神的・認知的にエネルギーが減少したと感じる主観的な感覚」と定義されており、終末期がん患者の60-100%が体験する症状です。
終末期になると、症状の進行に伴い倦怠感の改善は困難となりますが、少しでも患者さまが「心地よい」と感じられるようなケアを考えていく必要があります。

緩和ケアにおいては、身体的・精神的な症状の緩和を図ることが必要であり、またそれを私たちは得意としていますが、その中でも倦怠感を軽減することはとても難しいのです。

また、患者さまに寄り添うご家族にとっても、辛そうな顔を見守ることがどれほど辛いか…。

その中で、どのように過ごすと少しでも緩和されるのか、どのような顔でいれば穏やかだと思えるのかを、一緒に見つけ出すことが大切なケアです。

しんどさ(倦怠感)に勝る、「今が穏やかだ」と感じる支えとなること
最期まで家で過ごしたい、最期に過ごす場所を選べる自由を提供すること
それが、薬だけではない「ケアの力」になる。

そのことを信じて、私たちも逃げずに、患者さまと最期まで関わる強さが必要だと感じました。

※プライバシーに配慮し、お名前はアルファベットとさせていただきました。

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