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      医療法人綾正会かわべクリニック

      内科・緩和ケア内科・呼吸器内科

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【看取りの報告書】ATさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

ATさまのこと
~病により思い通りにはいかない。
それでも『その人らしさ』を尊重したケアを探し続ける。~

いつもお世話になっております。訪問診療させていただいていましたATさまについてご報告させていただきます。

小脳失調の影響で会話もままならいこともありましたが、いつも笑顔で出迎えてくださり、私達の訪問を楽しみにしていらしたATさま。
奥様からは、クラシック音楽が好きで、第九の合唱にも毎年参加されていた話などをお伺いし、思い出話に花を咲かせていました。

一方で、失禁や徘徊されるATさまの姿を受け入れらない奥さまは、厳しく当たってしまう自分自身にも苦しみ、涙をされることも多々ありました。
訪問の度に、施設入所はどうなのかと相談を受け、一緒に考えていきました。
しかしATさまがにっこりと微笑まれ、穏やかに過ごされている様子から、残された時間を出来る限り家族で支え合いながら頑張る、と覚悟を決めておられました。

そして、週に1度ショートステイを利用するなどして、懸命に介護をされました。
嚥下が困難となるぎりぎりまではジオトリフを内服。
数日後には寝ている時間が長くなり、最期の時は、奥さま、ご長男さま、ご長女さまとベートーヴェンの第九を聞きながら、安らかに永眠されました。
最期に着る洋服も第九の衣装をご準備るなど、音楽を愛し、音楽に包まれながら旅立たれました。

ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
「どこで、誰と、どのように生まれたい」と考えることはできません。
しかし、最期の時を「どこで、誰と、どのように終わりたい」と考えたことを、誰しも一度はあるのではないでしょうか?

よく耳にするのは「ピンピンコロリ」とか、「我が家で、妻と一緒に、苦しまんと、朝起きたら逝っとったがええなー。」と、いわゆる「大往生」のを夢描いています。

人生の最終段階の方と多く出会ってきた私の感想として、なかなかそういう訳にはいきません。
多くの患者さまが、「病によって自分が自分でなくなる。食べたいのに食べられない。弱っていく自分が嫌」などの苦しみを訴えられます。
また、ご家族も「まだ生きていて欲しい、別れるのがつらい。他に治療はないのか」と、またこの奥様のように「真面目に誠実に生きてきた夫がこんな風になって、最期までみてあげたい、でも、どうにも辛くて…」と切実な苦しみを訴えられます。

私には、大切にしていることがあります。

それは、エンドオブライフケア協会 小澤竹俊先生の著書の中でわかりやすく言語化されているのですが
「苦しみとは、希望と現実の開きである」ということです。

この考え方は、相手の苦しみを考える時に非常に参考になります。
漠然とした相手の苦しみを眺めているよりも、「希望と現実の開きである」と考えると、いかに大きな苦しみなのかがわかります。
その上で私たちがすべきなのは、患者さまが最後まで「生ききる」を支えることです。
もちろん、患者さまを支えているご家族さまも一緒に支えるのです。

また、もう一つ大切にしていることは、主語を「患者さま・ご家族さま」にして考えることです。
支えたい気持ちを優先するあまり、どうしても、「患者さまにとってよいと考える自分」の気持ちを優先してしまう傾向にあります。

意思決定支援で大切な5つのポイントとして、『在宅医療 たんぽぽ先生の実践!多職種連携』(永井康徳)に書かれている以下の点を参考にしています。

①家族だけでなく、本人の意思を最優先にすること
②考え得るすべての選択肢を提示すること
③その時点で関係するすべての人と十分に議論すること
④決断に迷う当事者に寄り添い、決断は変わってもよいことを伝える
⑤結果ではなく過程を大切にすること

これらのことを常に念頭の置きながら物事を考えると、ベクトルは必ず合います。
多職種が一致団結して、患者さま・ご家族さまを支えることができます。
その結果、患者さまは、最後まで「生ききる」ことができるのではないでしょうか?

もちろん、正解はありません。
それでもみんなで苦しみを乗り越えることが、成長していくための素晴らしい機会だと思います。

そして、在宅での患者さまの生ききった姿を、この記事のように『看取りの報告書』として病院の主治医にお手紙をお送りしています。
すると主治医より、
「ATさんがクラシック音楽を好きだなんて知らなかったです。僕も好きだったので、そんな話ができたらよかったです。残念です。でも、ATさんの素敵な表情が浮かびます。」
とお話をいただきました。
そして、患者さまとの繋がりを感じてくださいました。

在宅療養の中で、迷い涙しつつもみんなでATさまを支え続けたこと。
出来る限り「その人らしさ」を尊重したケアにより、辛さだけではない、喜びになる穏やかな姿を多くの方に知っていただくためにも、『看取りの報告書』で伝えていきたいと思います。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

>>今週ご紹介する動画<<
患者さまが退院や転院をされた後、どのように療養されているのか、その後の様子について気になっているのではないでしょうか。
在宅での看取りが進む中で、病院が安心して在宅に送り出せる社会を作るための第一歩が「看取りの報告書」ではないかと思います。
是非、ご覧ください。

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