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      医療法人綾正会かわべクリニック

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【看取りの報告書】Vさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

私にしか出来ないこと。残された息子が困らないように…

Vさまのこと
~すべてをかわべクリニックさんにお任せします。
最期までコーディネートしてください~

[看取りの報告書]
退院支援課 A様

いつもお世話になっております。Vさまについてご報告させていただきます。

昨年の9月に、小笠原文雄 先生の書著『なんとめでたいご臨終』を手に、「私もこのように亡くなりたい、その願いを叶えていただけますか?」とクリニックに来院されたVさま。
早くに夫を亡くし、彼女お一人で2人のお子さまを育て上げ、これからと言う時にガンになり、手術したものの、再発。
ガンが治って欲しいという期待と、治らないという覚悟の間で葛藤されていました。

Vさまの診察では、常に彼女の苦しみを聴き、Vさまにとって“わかってくれる人”になることが、彼女の緩和治療であったことを教えられました。
訴えは多々ありましたが、その中で解決できる苦しみ、優先順位の高い苦しみに分けて対応。
症状が落ち着いている時には、お母さまと旅行に行くなどの思い出作りをされました。
また、残される息子さまのためには、早々から遺産の整理を行い、亡くなった後に困らないようにと全てを段取り。
そして、母より先に逝く気持ち、子を残して逝く気持ちも、私たちに吐露なさっていました。

1月の末日、ご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。
Vさまは、自分自身を見つめ、自分がどうありたいかを考え、自分の願いを叶えるために自分のすべき事を考え続けた方であったと思います。
私たちは彼女の苦しみを共に味わい、彼女の「幸せ探し」のお手伝いが出来て良かったと思います。
今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
小澤竹俊先生の著書1)2)
「苦しみを抱えた人がどのようなことを選ぶことができると穏やかになれるのか」という視点を持つことが必要だと記されています。

Vさまもまさしく、自分の予後が長くないとわかった上で自分がどこでどのように過ごしたいのかを探し、涙ながらにクリニックにいらっしゃいました。
初回訪問から心が穏やかになるまでの2~3週間は、毎回の訪問でしっかりと話を聴き、何が苦しく、その苦しみはどのようにして解決できるのかを、Vさまご自身が言葉にしつつ、自分の気持ちと向き合う時間としました。

そしてVさまは、以下のような判断をなさいました。

・療養場所
絶対に家!入院は嫌、母も足が不自由で面会が大変

・心が落ち着く環境
亡き夫が建てたこの一軒家、長男もいるので夜間は安心

・尊厳
私が亡くなった後も息子たちが困らないように…。
9年前に夫が心筋梗塞で急死したため、途方に暮れる間もなく、息子を育てることで必死であった

・希望
最後まで自分のことは自分でしたい

・保清
看護師さんに任せる

・役割
母として娘として迷惑かけないように、私に出来ることはすべてする

・ゆだねる
ADLが低下してからは、実母に対して身の回りのお世話をお願いするようになっていった

・栄養
好きな物を枕元に置き、少しずつ口にする

・お金
夫が急死して、夫の財産や資産等の手続きに苦労した経緯があり、息子たちにそのような目には遭わせられない。
私はガンであり、予後は数カ月だけれどでも、まだ時間はある。

彼女にとって一番安心したかったのが、財産整理でしたので、「お金のことに詳しい人はいませんか?」という依頼がありました。
私たちは、医療、緩和ケアにおいてはプロ意識を持って仕事を行っています。
ただ、今回のように資産や財産、残される家族への遺言など、詳しくないのが正直なところです。
そこで、司法書士さんに介入していただき、対応をお願いし、彼女の望む形で整理することができました。
すると、彼女はさらに穏やかになり、「これで安心しました」と永遠の眠りにつかれました。

私たちは、勉強会などでも地域包括支援、多職種連携などと言いますが、どうしても在宅医療・ケアチームと考えてしまいがちです。
でも、一人の人生を見た時に、病だけではなく“生き方”の終わりまで支えるという視点で考えると、司法書士も、ちょっと特殊に思えるかもしれませんが、大切な存在です。
これからも、本当の意味での多職種で仲間を増やし、患者さん家族さんを支えていきたいと思います。

苦しみを支えるのが私たちのケアの一つですが、患者さま自身が自分を見つめ、自分を受け入れるまでの葛藤も大切な時間だと感じました。
まさしく、Vさまの『幸せ探し』の4カ月だったと思います。

参考文献:
1)「死を前にした人にあなたは何ができますか?」医学書院 小澤竹俊著
2) エンドオブライフ・ケア援助者養成基礎講座 エンドオブライフ・ケア協会

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