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【看取りの報告書】AUさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

AUさまのこと
~自然な看取りとは何か~説明し続ける大切さ、そして、みんなで考え、選ぶ

いつもお世話になっております。AUさまについてご報告させていただきます。
お婿さまがクリニックのホームページをご覧になり、当クリニックの訪問診療を希望すると連絡が入りました。

すでに在宅医の介入はあったものの、24時間対応でないこと、緊急時の対応が手薄であることなどの不安があり、当クリニックに変更したいとのことで、初回訪問させていただきました。

AUさまご本人とご家族さまに一番の懸念点をお伺いしたところ、点滴後の排痰の増量、下肢浮腫の増強、そして「動けないこと」でした。
同時点で、一日500ml以上の水分摂取が確保されていたことから、点滴のデメリットを説明のうえ中止に。
拘束となる持続皮下注も、同日貼付剤に変更としました。

3日後の診察時には、「痰もなくなり、浮腫みも消えました。点滴がないので動けます。」と満面の笑みで迎えてくださるほどになりました。
その後も数日間は食事摂取も可能となり、一日30分間のリハビリも継続されました。

しかし、病状の進行とともに臥床時間が長くなり、再び飲水も不可に。
それでも点滴をしない自然な形でのお看取りを希望されており、その意に応える形としました。

そこから何と1週間…AUさまの強さに、娘さまやご家族さまだけでなく、私たちも驚かされるほどでした。
とても穏やかな時間を過ごし、娘さま、ご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。

このAUさまの看取りを通じて、6歳のお孫さまが「将来看護師さんになりたい。かわべクリニックで働きたい」と言っていただけたのが、私たちの今後の糧となります。

この度は、ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
みなさんは、最期の時、点滴に繋がれていたいですか?
私は、出来るだけ自然に逝きたいと思っています。
では、自然な旅立ちとはどのようなものなのか、想像できるでしょうか?

患者さまや家族にとって、点滴をしないことは「生きることを諦める」ことだと思っているような印象を受けます。
でも、実際はどうなのでしょうか?

私は、『病院では点滴量を最小限に、そして、在宅では点滴を行わない』という考え方が広まっていけば、穏やかな最期となるのではないか、と考えます。

ゆうの森 永井康徳先生も著書の中で、「楽な最期」とは枯れるように逝くことであり、終末期の患者さんへの点滴は極力しないようにしている、と述べられています。

日々の訪問診療でも、ご家族さまから、
「食べていません。飲んでいません。大丈夫ですか?点滴してもらえませんか?」
と言われます。

クリニックでは、まずご家族さまの想いをしっかりと聴いた上で、
「亡くなる1週間ほど前になると、人の身体はもう水分や栄養を処理できなくなくなります。
点滴や胃ろうから無理矢理、身体に水分や栄養を入れない方が本人は楽ですよ」
と説明します。
この説明をすれば、ほとんどの場合は理解していただけます。

最期の1週間を意識することは、「いつか亡くなること」にしっかりと向き合うことでもあり、余命をきちんと意識することにつながります。
そして、点滴量を最小限にした終末期が一般的になれば、病院から退院して自宅に戻り、我が家で最後の時間を過ごす人々も増えていくはずです。

亡くなる最後のときまで点滴をし続けるのではなく、治せない事実や死にしっかりと向き合って、「亡くなる前の最期の1週間は点滴をしない方が楽」という意識が広く一般にも広がっていけば、看取りのあり方も変わるのではないでしょうか。

実際にAUさまから
「先生、点滴をやめたら生きることを諦めることと思っていた。
でも、昨日、先生から点滴するデメリットを聞いて、私考えたの。
点滴をすると足が浮腫んで歩きにくい、点滴をすると痰が増える…。
だから今日の点滴はいらない」
と言われ、以降、点滴を希望することはありませんでした。
脱水傾向の方が身体が楽なことを、患者さま自身がわかっているのです。

大切なことは、終末期において、点滴をしない方が楽であることを、何度も丁寧に説明し続けることです。
「点滴をしないことの説明」ほど、難しいものはありません。
でも、患者さまにとって、「点滴をしないこと」が穏やかな最期になるのであれば、私たちは最期まで、『見守るケアの必要性』を説明します。

最期の診察を終えた時、娘さまより、
「点滴をしない選択肢があること、点滴をしないことでお母さんの苦痛がなくなったこと、痛み止めも貼り薬で治まったことなど、私たちには驚きでした。
今まで良く頑張ってくれました。娘(孫)は、このことをよくわかってないかもしれないけど、将来看護師さんになりたいって言っています。
20年後、娘をよろしくお願いします。本当にありがとうございました」
と言っていただきました。

これが、自然な看取り、『AUさまの生ききった姿』ではないでしょうか。

【今週の東大阪プロジェクト】
東大阪プロジェクトの活動の一部をご紹介させていただきます

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看護業務を行う上で、“一番”と言っても過言ではない大切な事、それが患者さまの情報収集。
すぐに使えて 役立つポイントを整理しました。
是非、ご覧ください!

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