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【看取りの報告書】Xさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

Xさまのこと
~夫婦の愛の形
病気を診ずして病人を診よ。二人の仲を取り持つのも私たちの役割~

[看取りの報告書]
いつもお世話になっております。
貴科からご紹介いただいたXさまについてご報告させていただきます。

介入当初より、Xさまの希望は「18歳になる愛犬“海ちゃん”の面倒を看るために入院せず、出来るだけ家で過ごしたい」でした。
あまり介入を好まず、介護保険の申請も希望されないまま、必要最低限の訪問回数で病院との併診という形で診療を続けてきました。
徐々にADLが低下する中、私たちは介護用ベッドの導入を提案しましたが、ヘルニアがある海ちゃんの腰の負担となるからベッドは入れない、とXさま。
生活の中心は海ちゃんでした。

やがて腫瘍熱、腹満及び、疼痛増強などの諸症状が出現する状況の中、「海ちゃんを残しては逝けない。だから、病院にも行きたくない」という気持ちが強く、自宅での療養継続を希望。
また旦那さまに対しては、「私の死を受け止めて、一人で生きていく準備をして」と言い続けられました。

旦那さまはXさまの状態を受容はされているもののどのように接していいのか分からずにいるように見受けられましたので、私たちは旦那さまとXさまの間を取り持つような形での支援を続けました。
そしてXさまは「夫と海ちゃんが良いと言ってくれるなら、家で一緒にいたい」と気持ちを吐露されました。

その日を境に旦那さまは覚悟を決められ、意識が遠のくXさまの寝衣交換やオムツ交換、そして夜には一緒に寝て、手を握り続ける。
その姿は寂しそうではありましたが、夫婦の愛が垣間見られました。
そして退院後約5ヶ月。旦那さまと海ちゃんが見守る中、安らかに永眠されました。
ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
介入当初、Xさまは「私はまだ元気だから、訪問診療はいらないわよ」とおっしゃっていました。
しかし病状からは急速に容態が変化する可能性があったため、「旦那さまの安心のため」という名目で介入したいとお伝えしたところ、「○ちゃん(夫)は、本当に何も出来ない。私が体調壊したら、うろたえるばかりだから、○ちゃんのためにお願いします」とご了承いただきました。

旦那さまは寡黙で、愛情表現が不器用な方のように見受けられました。
ご夫婦の間にはお子さまはおらず、愛犬(18歳、海ちゃん)を我が子のように可愛がっておられました。
病気の進行と共に身体的精神的苦しみが増えていく中で、その苦しみをわかってもらえないと嘆くXさま。
一方、何かをしてあげたいけどどうしたらいいのかわからない旦那さま。
私たちは、その間を取り持つように関わりを続けていきました。
そして私たちの援護射撃のように、緩和剤になってくれたのが海ちゃんでした。

他者(ヘルパーさん)の介入を拒むXさまが寝たきりの状態になったとき、どこで療養するのか大きな決断を迫られました。
その時、Xさまは「〇ちゃん、海ちゃんが良いって言ってくれるなら家で一緒にいたい。」と、旦那さまにゆだねました。
そこから旦那さまはやる気スイッチが入ったかのように、オムツ替えや着替えをし、夜はXさまと海ちゃんと川の字で添い寝をされるなど、最期の時を有意義に過ごされていました。

最期の時は「先生、あかん、呼吸が止まったわ」と。
旦那さまの寂しさと、そして、しっかり妻を見送った夫としての強さを感じた瞬間でした。

訪問診療は、日常生活の中に診察があります。
病気を診ることだけでなく、患者さまとご家族様を看ていくことが、私たちの大切な役割なのです。

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