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      医療法人綾正会かわべクリニック

      内科・緩和ケア内科・呼吸器内科

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【看取りの報告書】ADさまのこと

クリニックでは、患者さまが最期の時間を過ごされたご様子を「看取りの報告書」としてまとめています。

今までかわべクリニックがお見送りをした患者さまの「看取りの報告書」を、担当看護師の思い出と共にご紹介していきたいと思います。

ADさまのこと
32歳の生涯…母として、そして子として生き切る姿
~本音はまだ生きたい、子供と離れたくない~

いつもお世話になっております。
遅くなりましたが、昨年ご紹介いただきましたADさまについてご報告させていただきます。

貴院を退院されてから、ADさまは小学生の息子さんと一緒に自宅で過ごせることを、非常に喜んでいました。
息子さんは反抗期ではありましたが、ADさまに甘える場面も多く、母親としての役割を遂行できる喜びを感じておられました。

身体面においては、胸背部痛や呼吸苦に対してオピオイドの調整を行いながら、ADさまが望む「母親としての生活ができること」を目標に、症状コントロールを行いました。

経過の中でご自分の死と向き合い、愛する家族との別れに対して手紙を書くことなどができた一方で、迫りくる最期の時を感じ恐怖や不安が募る時間もありました。
そのような時は、ADさま自身もお母さまに甘え「抱きしめて欲しい」と言葉にすることで、ご自身の心のコントロールをされていました。
一児の母である強さと、娘として母親に甘えたい一面を併せ持つ心情に寄り添いながら、われわれもADさまと共に時間を過ごさせていただきました。

ADさまは、息子さんに余命について話をすべきか、お母さまと共に悩んでいました。
私たちが「隠し事はせずにしっかりと話をしておくことが、ADさまの旅立ちの後、息子さんの心境にも大きく影響すると考える」とお伝えしたところ、その日の夜にADさまから息子さんにお話をされました。
息子さんは涙をこぼしながら話を聞いた後、反抗的な態度は少なくなり、穏やかな親子の時間を過ごすことができました。

亡くなる1週間前まで入浴を楽しみ、前日まで夕飯の片付けを担当されるなど、最期まで母親としての日常をADさまらしく過ごされました。
クリスマスやお正月、息子さんの誕生日を家族と共に過ごす目標もすべてクリアしたのち、ご家族さまに見守られる中、安らかに永眠されました。

この度は、ご紹介ありがとうございました。今後ともよろしくお願い致します。

[ケアを振り返って]
介入当初、ADさまが私たち医療者に気を遣うこと、そして自身の死を受け入れ、達観された様子に驚きました。
頻回の訪問を重ねて身体的症状緩和をしていく中で、私たちスタッフが同世代という事もあり、ADさまから「あなたなら我が子にどう伝える?」との質問。
スタッフそれぞれの考えを伝えた上で、「あなたはどう考える?」とADさまに問いかけました。
そして「息子は今の現状を理解できない歳でもないから…」と、向き合うことを選択。
私たちはあくまで黒衣に徹し、ささやかながら支援を行いました。
ADさまは、自分自身の言葉で息子さんとしっかり話し合えたことで胸につかえていたものが取れたのか、安堵の表情になりました。

しかし、それもつかの間。次に襲って来たのは「死の恐怖」。
そのときADさまが求めたものは、母の愛情でした。
母に「抱きしめて」と言えなかった過去を吐露され、素直に「抱きしめて」と口に出し、母に抱きしめてもらえることが何よりも温かい薬。
レジリエンスとは、自らの力を信じて待つこと。
毎日母からの愛を受け、息子に愛を与え、母としての役割、息子の誕生日をお祝いするという約束を果たし、ADさまは旅立ちました。

[お母さまからのお手紙]
お葉書ありがとうございました。
ADが亡くなり、もうすぐ4カ月になりますが、私の中では亡くなった日から変わらないままで止まっています。
Y(息子の名前)も中学生になり、陸上部で頑張っております。
今でもYは人前では涙は見せません。
毎日、忙しく世話しています。
Yの存在が私を勇気付けてくれています。

在宅医療のおかげで最期まで自宅で過ごせたことを感謝しています。
先生方や看護師さんの手厚い看護に、ADも感謝していると思います。
余命を病院で過ごすだけじゃないことも知ることが出来ました。
今日はADの33歳の誕生日です。複雑な気分です。

寂しさ悲しさは消えませんが、Yと「お母さんは今頃、病気が消えて天国で元気に走り、笑っているよね」と話しています。

在宅医療の患者さんの為に、先生方、看護師さん方、スタッフの方、ご無理のないように頑張ってください。
そして、心の片隅にADのことを覚えていて下さいと厚かましいことをお願いします。
本当に大変お世話になりました。

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